晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

浅田次郎 『プリズンホテル 秋』

2012-10-18 | 日本人作家 あ
さて、先週の旅に帯同させた『プリズンホテル』ですが、文庫でサブタイトルに
春夏秋冬がついて全4巻。夏からはじまって、これが2番目。

ざっと紹介しますと、極道小説で人気の売れっ子作家、木戸孝之介は、幼い頃に
母が男と一緒に出て行ってしまい、その男とは叔父でヤクザの仲蔵の舎弟。
そのせいか、女性に対する愛情表現が異常で、父が再婚した義母の富江には名前で
呼び捨て、暴言暴力。しかも交際している女性の清子にも暴言暴力。

さて、叔父の仲蔵親分は、このたびリゾートホテルを開業したというのです。
そのホテルは、世間の目が厳しくなってきている”任侠団体”専用。
そうとは知らずに、日本有数のホテルチェーンから来た支配人とシェフ。
誰が呼んだか、「プリズンホテル」。

前作「夏」で、プリズンホテルに泊まりにきた孝之介と清子。そこで、番頭の奥さん
でホテルの女将が、子供のころに別れたきりの、実の母だったことを知ります。

で、「秋」ですが、ふたたび訪れることになる孝之介。今度は清子のひとり娘の美加
もいっしょに行くことに。

まあ、それはいいのですが、支配人は頭を抱えます。というのも”任侠団体”の大曽根
一家が宿泊する日に、あろうことか警察署の慰安旅行がカブってしまっています。

警察、教師、医者の団体旅行は、普段がお堅い職業だけにハメのはずし方が尋常じゃない
と、ホテル側は警戒(ヤクザより始末に負えない)。

それだけではなく、マネージャーと地方まわりをしている元アイドル。自称「大学教授」
という怪しい男、さらに、「極道エレジー」で有名なベテラン歌手、などなど。

ベテラン歌手の真野みすずは仲蔵とは昔なにかあったらしい素振り。

冒頭に、仲蔵の親分、桜会の八代目総長の葬式のシーンがあり、取材でたずねた孝之介が
仲蔵にいろいろ質問するのですが、そこに真野みすずが絡んでくるのですが・・・

今回もドタバタでしっちゃかめっちゃかになるのですが、最後の方に、幸之助が家に電話
をかけて富江と会話します。孝之介の横にはホテルの女将である実の母。
そこで、孝之介が母に、富江と話せというのです。孝之介のセリフに、涙が止まりません
でした。

『プリズンホテル』が書かれた直前か直後、名作「蒼穹の昴」が出版されて、直木賞候補
になったときの審査員の「話があちこちに飛んでわかりづらかった」という評価がありま
した。
たしかに、浅田次郎の作品にはそういう特徴がありますが、だからといって、それほど
「わかりづらさ」は感じたことがありません(直木賞の審査員の方を否定するわけでも
ありません)。
評価は絶対ではないので、極論をいえば「人による」のですが、この「話が飛ぶ」のが
面白いといいますか、寄席のようにさまざまな演目があったり、遊園地のようにいろいろ
な乗り物があったり、具体的にどれか”ひとつ”をあげろ、ではなく、総合して「ああ、
楽しかった」というのが、浅田次郎の作品の醍醐味。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 浅田次郎 『プリズンホテル... | トップ | 浅田次郎 『プリズンホテル... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日本人作家 あ」カテゴリの最新記事