晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ディーン・R・クーンツ 『ウィスパーズ』

2011-11-09 | 海外作家 カ
文春文庫の青い背表紙のクーンツ作品は、大ヒットして映画化されたり、
クーンツファンでも、一番の名作に挙げる作品が多いのですが、あとがき
を読んだりすると、それ以前にハヤカワなどから日本国内で翻訳出版され
た作品のなかに、「ファントム」と、この『ウィスパーズ』が、傑作、こ
れでクーンツはそれまでのB級ホラーから一段階ステップアップのきっか
けになった、と説明されているのです。

で、「ファントム」は先日読んで、それ以前の「B級」時代の作品をあま
り読んでいないので比較のしようがないのですが、確かに面白かったこと
は面白かったです。
そして、作家クーンツが化けることになった『ウィスパーズ』。

のっけから、ハリウッドの豪邸にひとりで住む、売れっ子女性脚本家が
前に取材に訪れたことのあるワイナリーの経営者に殺されかけます。
脚本家のヒラリーは、家のカギをどこかに落としたことを思い出します。
それは、ワイン工場だったのです。そのカギを、社長のフライが拾って、
ワイン畑のあるカリフォルニアの田舎からハリウッドまでやって来て、
なんとヒラリーを殺そうとするのです。

しかし、ヒラリーにとっては、まったく身に覚えがなく、恨みを買った
記憶もありません。なんとかフライを追い出すことに成功するヒラリー。
さっそく警察に電話をかけます。
ところが、現場に駆けつけたトニーは優しく話を聞いてくれるのですが、
パートナーのフランクは疑いのまなざし。そして、警察から、ナパバレー
にあるワイナリーの経営者、フライ氏は、ヒラリーの襲われた時間には
家にいたと地元保安官は聞いた、というのです・・・

フランクは、狂言だと決めつけますが、トニーはヒラリーに心惹かれて
しまったせいか、まったく嘘とは信じられません。
フランクとトニーは、重罪を犯したのに刑期が軽く、つい最近出所した
ばかりのある凶悪犯の行方を追っていて、その捜査の途中、またヒラリー
が襲われたと・・・

フライは、警察がヒラリー邸から出てからしばらく街中を車で流して、
頃合いをみて、ふたたび襲いに向かったのです。しかし今度は、ヒラリー
の持つナイフでフライは腹を刺されます。
なんとか逃げ出し、道端の公衆電話までたどりつき、フライはどこかへ
電話します。その話し相手とは・・・

ヒラリーが取材をした時には、温厚で紳士的だったフライは、なぜか
金髪の女性を見ると、殺意を覚えるのです。何かトラウマを植え付けられた
女性が、死んでも生き返ってくると脅され、それを信じているフライは、
ヒラリーをその女性の生まれ変わりだと思い、殺そうとするのですが、
はたしてその女性とは・・・
そして、フライの記憶の奥にある「ささやき」とは・・・

ヒラリーの幼少時代の恐怖、刑事、トニーとフランクの過去、これらの
描き方が物語に幅を持たせて、たんなるホラーではない、アクションも
ロマンスもあり、人間ドラマの部分も持っていて、なるほど、のちの
一連のクーンツ作品の特徴といいますか、主筋の邪魔になることなく
話題をほどほどに詰め込んで、かといってスピード感を失わない運び方。


今まで、怖くて夜中ひとりでトイレに行けなくなった、という経験をした
のは、鈴木光司「リング」を読んだときでしたが、『ウィスパーズ』は、
読んでる途中で、何度吐き気を催してきたことか。

フライが金髪の女性を恐れるようになった理由、そしてフライの頭にこび
りつく「ささやき」の正体を知ったら、ちょっと数時間は食欲が失せます。

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