晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

葉室麟 『陽炎の門』

2020-09-17 | 日本人作家 は
関東南部はようやく朝晩は涼しくなってきましたね。これからいよいよ読書の秋。というわけで我が家には未読の本が山積み。といいますのも、緊急事態宣言以降、買い物といえば食料か生活必需品くらいなもので、本とか服とか買いに行ってません。ではどうするかというとネットショッピング。ああいうところでは「~冊以上(〇円以上)は送料無料!」というのをやっておりまして、そうしますと、ついつい送料無料にするために多めに買ってしまうんですね。ま、あとで全部読むんですから別にいいんですけど。

以上、ネットショップに潜むワナという問題について一石を投じてみました。

さて、葉室麟さん。

この作品は直木賞受賞作「蜩ノ記」の受賞後第一作目か二作目。

「蜩ノ記」で、直木賞の選考委員から「登場人物がみんな清廉」という批評があったそうですが、まあその発言に影響を受けたかどうかはわかりませんが、この作品は登場人物が清廉ではありません。といいますのも、おおざっぱなあらすじは、御家騒動。

たいてい御家騒動を扱ったどんな時代小説でも、登場人物はみんな薄汚いものです。

九州にある架空の「黒島藩」の城門をくぐるひとりの藩士、桐谷主水。四十歳にならない若さで藩の執政になった、いわばエリート。ですが、彼についた不名誉なあだ名は「氷柱(つらら)の主水」。

十年前、黒島藩は熊谷派と森脇派という派閥争いでまっぷたつに分かれていました。その争いは森脇派の負けになったのですが、そのきっかけとなったのが、主水の幼なじみを切腹に追い込んだ「殿の落書き事件」。

当時、主水は熊谷派で、幼なじみの芳村綱四郎は森脇派でした。ある日、「佞臣ヲ寵スル暗君ナリ」という落書きが見つかって、その犯人捜しということになり、主水は「この字は綱四郎の字です」と証言。せいぜい降格処分かと思っていたら、なんと綱四郎は切腹の処分。
ところが、綱四郎は介錯人(切腹をするときにはやく苦痛から解放させるために後ろから首を斬る人)に、主水を指名したのです。
綱四郎には息子と娘のふたりの子がいて、切腹の前に「いいか、決して主水に恨みを持ってはだめだ」と言い残します。

その後、息子の喬之助は江戸へ、娘の由布は、なんと主水の妻に。

大きくなった喬乃助は、江戸の剣術道場の師匠を連れて「父の仇討ちをする」と黒島藩に許可を求めます。というのも、彼のもとに「お前の父親は冤罪だ」という書が届いたのです。主水の上役たちは、あの派閥争いが蒸し返されるのはごめんというわけで、与十郎という若侍を、主水の行く先々に同行、つまり見張りをつけることにします。
そもそもあの落書きは本当に綱四郎が書いたものだったのか?確信がゆらぐ主水。

そこで、少年時代の主水と綱四郎とふたりの先生を訪ね、あれは本当に綱四郎の字だったか聞くと「藩主に対する悪口は綱四郎の字だ。しかし、その下にある(百足)という字は別人のものだ」と言われ、この落書きには(百足)という署名があったことを、しかも(本文)とは明らかに筆跡が違うのを、ちゃんと確認していなかったことに今さら気付く主水。

先生は、この件は、派閥争いのさらに前にあった「後世河原騒動」に関わりがある、と教えてくれたのですが・・・

「後世河原騒動」とは、黒島藩中にあったふたつの剣術道場どうしの争い。じつはこのとき、道場の門人どうしの対戦はある程度終わっていたころになって、覆面をした数人が来て、倒れている怪我人にさらに暴行するという非道な振る舞いをしていて、主水と綱四郎は止めに入り、覆面をしていたうちのひとりが腕を斬られて、のちに出家します。この男の父親というのが、藩の重役。この重役は息子の腕を斬ったのは綱四郎か主水のどちらかに違いないと思っていて・・・

はたして主水が綱四郎を切腹に追い込んだ「落書き事件」と「後世河原騒動」との接点とは。喬乃助は仇討ちのために三か月後には黒島藩に来るのですが、どうなるのか。また派閥争いが蒸し返されるのか。そして与十郎の正体とは、彼の真の目的とは。

先述したとおり、メインストーリーが御家騒動をあつかったもので、そりゃ清廉というわけにはいきません。
序盤は気が滅入るような内容で、読み進むのにちょっと時間がかかってしまったのですが、後半に進むにつれてだんだんと真相が分かってきてから読むスピードが速くなってきて、最終的に「いやあ面白かった。読んで良かった」となりました。

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