晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ケン・フォレット 『針の眼』

2012-06-14 | 海外作家 ハ
ケン・フォレット作品はこれで2作目。いちばん読みたいのは「大聖堂」
なのですが、なかなか出会えません。まあ大きい書店に行けばあるん
でしょうけど。

まあそれでも『針の眼』はベストセラー、アメリカのMWA賞最優秀長編
賞を受賞、さらに映画化と、ケン・フォレットの名前を一躍世に知らしめた
出世作(その前に3作ほど書いているそうですが)で、「大聖堂」よりも先に
読んでおくのも悪くはない、と言い聞かせます。

時は第2次大戦末期の1944年、猛進を続けていたドイツはその勢いに陰りが
見えてじわじわと弱まり、同盟国のイタリアは降伏、ここにきてイギリス、
アメリカ連合軍がフランスに上陸でもされたらもうおしまい。
そこでヒトラーは”ある男”からの情報を待ちます。それによって上陸を止め
ることができるのですが、男から伝えられたのは総統の期待を裏切るものだった・・・
という話。

ドイツの優秀なスパイ、”針(ディー・ナーデル)”は数年前からロンドンに潜伏、
他のスパイはことごとく捕まりますが”針”はイギリスに溶け込んでいます。
ヘンリー・フェイバーと身分を偽ってフラットに住んでいますが、そこの女主人は
針”ことフェイバーに興味を持ちます。女主人は彼の部屋のドアをノックし、
中に入ろうとすると、何やら喋っている様子。
部屋に招き入れるフェイバー。この女主人は夫を亡くし、自分に色目を向けている
ことを知り、しかも先ほどの「会話」を聞かれた・・・
フェイバーは女主人を殺し、暴行犯の仕業に見せかけて逃亡。

大学教授のゴドリマンは、イギリス陸軍大佐の親戚に頼まれて、イギリスに潜伏
しているというドイツのスパイを探し出すことに。ロンドン警視庁のブロッグス
とともにさまざまな情報を調べていくと、ある男が浮かんできます。
”針”という暗号名を持つスパイは、イギリスのどこにいるのか見当がつきません。

イギリス空軍中尉のデイヴィッドは出征の前にルーシーと結婚、ふたりでドライブ
をしていた時に大事故を起こし、両足を切断してしまいます。
身体と、そしてなによりもデイヴィッドの心の回復のために静養をさせようと、彼
の親の所有するスコットランドの小島へと向かう夫婦。
絶海の孤島のようですが、羊飼いが住んでいます。デイヴィッドとルーシー夫婦は
もう一軒ある家に住み始め、羊飼いの手伝いをすることに。
ふたりはジョーという男の子をもうけます。が、この島に来てから夫婦の関係は
冷え切ったものに。

フェイバーは、アメリカイギリス連合軍がフランスのカレーから上陸すると見せかけて
じつはノルマンディーから上陸するという確かな情報を得て、その写真を撮り、潜水艦
に乗り込んでドイツへ戻ろうと算段。
しかし、その道中、いろいろと足がかりを残してしまい、ブロッグスは”針”のあとを
追いますが、すんでのところで逃げられます。
フェイバーは潜水艦とのランデブー場所であるスコットランドのアバディーン近海まで
船で向いますが、大嵐に遭って船は小さな島に打ち上げられます。
そう、この島とは、デイヴィッドとルーシーの暮らす島なのです・・・

”針”はドイツに情報を運ぶことができるのか、デイヴィッドとルーシーは難破して
流れ着いたフェイバーと名乗る男がじつはドイツのスパイであると気づくのか・・・

もう、とにかく面白いです。そして、感嘆してしまったのが、スコットランドの小島
の描写。

「《荒涼》とはこういう場所のために作られた言葉である。(中略)島の周囲は大半が
冷たい海から切り立つ断崖で、浜と呼べるものはほとんどない。静かに打ち寄せるべき
場所のない波は、その無礼に腹を立て、闇雲な怒りを岩にぶつける。そして島は、一万
年にも及ぶその激発を、大過なく、素知らぬ顔でやり過ごす。」

(絶海の孤島)をここまで美しく表現できるのか、と。

コメント
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