晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

アーサー・ヘイリー 『ストロング・メディスン』

2010-05-27 | 海外作家 ハ
『ストロング・メディスン』は、アメリカの製薬業界の話で、
新薬の開発、医療現場、製薬会社の企業理念といった、ちょっと
「小難しい」話になるところを、巧みな構成と時折り入るユーモア
でとても読みやすく、娯楽小説おしても、また経済小説としても
楽しめました。

アメリカの製薬会社、フェルディング・ロスの女性プロパー(外交員)
、シーリアは、セント・ビーンズ病院で瀕死の重病患者に、開発中で
認可が下りる前の新薬「ロトロマイシン」を提供すると医師のアンドルー・
ジョーダンに提案、アンドルーはその新薬を患者に投与、そして患者は
明くる日、快復するのです。
このニュースに病院は大騒ぎ、アンドルーは一躍ヒーローに。もともと
製薬会社のプロパーを鬱陶しがってたアンドルーもシーリアに感謝します。
しかしシーリアはそんなアンドルーの気持ちもよく分かるといい、さらに
プロポーズ。ふたりは結婚します。

1950年代のアメリカは、製薬会社のみならず女性の社会進出の黎明期で、
シーリアも女性初のプロパーとして入社し、偏見にとらわれない男性の上司
と仲良くし、さまざまな壁にぶつかるも持ち前の才知と努力と直観でどんどん
頭角を表してゆきます。

シーリアを理解する数少ない男性上司であるサムは順調に出世の階段を上がり、
サムはシーリアにいずれ「それなりの地位」を約束、大衆薬に販売部門や、
中南米販売部門にまわされるも、シーリアはそれぞれの部で輝かしい実績を
上げます。

一方、家庭でのシーリアは夫アンドルーとのあいだに二人の子どもをもうけ、
時に波風も立ちますが、幸せな生活を送ります。
順調に出世してゆくシーリアですが、妊娠中の女性の「つわり」を軽減する
モンテインというフランスの会社が開発した新薬をフェルディング・ロスが
販売契約をとることに、取締役会でシーリアが唯一反対を唱えます。

それは、数が少ないながらも、この新薬が新生児に悪影響を及ぼすという報告
が入っていて、しかしフェルディング・ロス製薬の社長であるサムも、開発部長
のロードも、販売開始に踏み切ります。

やむを得ず、辞表を提出するシーリア。夫のアンドルーとともに世界一周旅行を
計画し、最後の目的地ハワイに着くと、会社から電話が・・・

物語は1950年代から80年代までの主にアメリカが舞台となり、公民権運動、
ウーマンリブ、ケネディ大統領暗殺、ベトナム戦争という激動の時代に、ひとりの
女性が一介の販売員から大手製薬会社の社長に登りつめるといった話がメインと
なっているのですが、たんなるサクセスストーリーではない幅の広さがあります。

翻訳が永井淳さんだったからなのか、読んでいて、ジェフリー・アーチャーお得意
の「サーガ」という長編小説(ひとりあるいは複数の主人公の生涯を描くもの)が
想起されました。やはり読みやすいというか、微妙な言葉のチョイスが上手なんで
しょうね。それと、日本語に敢えて訳さない、英語のユーモア(韻を踏むような)を
残すあたり、これが翻訳モノを読む楽しみでもあります。

コメント
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