晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

パトリシア・コーンウェル 『真犯人』

2010-04-25 | 海外作家 カ
この作品は検屍官ケイ・スカーペッタが主人公のシリーズ4作目で、
訳者あとがきにもあったのですが、コーンウェルは一作ごとに腕が
上がっているようで、前3作を読んでだいぶ日が開いていたのです
が、それでも戸惑うことなく読み進められて、上質のストーリー展開、
状況や心理の描写は見事で、さらに特筆すべきは、登場人物の描写、
とりわけセリフの深みと面白さが増してきたところでしょうか。

バージニア州の刑務所で、地元の人気女性キャスター殺しで死刑判決
となった、ジョニー・ワデルという黒人に、死刑執行が下されます。
遺体はただちに検屍局に届けられてきたのですが、ワデルからは鼻血
が出ています。不自然に思った検屍局長ケイは搬送してきた隊員に
訊ねますが、はじめから出ていたとのこと。
さっそくワデルの検屍にとりかかろうとすると、主任のスーザンの様子
がおかしく、仕方がないので休んでもらうことに。

ちょうど死刑囚が電気椅子に座っていた夜に、ある少年が大型ゴミ処理箱
にもたれかかるようにして瀕死の状態で発見されます。
この被害者の様子がちょっと変なのでケイに見てほしいと、リッチモンド
市警の刑事ピートが連絡してきたのです。
病院に向かうケイ、その少年の容態を見ると、肩にまるで肉食獣に齧られた
ように肉が抉り取られて、発見時には、少年の服は脱がされていたとのこと。

さらに数日後、閑静な住宅街に住む霊能者の女性が車の中で死亡している
のが発見されます。そして、驚くべきことに、先の少年とこの女性の犯行
現場からは、死んだはずの死刑囚ジョニー・ワデルの指紋が検出されたの
です。

この不可解な出来事と同時進行的に、ケイのオフィスのコンピュータに
何者が無断でアクセスした形跡が。不安に思ったケイはフロリダに住む
姪のルーシーに来てもらって、コンピュータに詳しい姪に見てもらうことに。
母と関係の良くないルーシーは、昔から叔母のケイを慕い、ケイもルーシー
を我が娘のように愛してきたのですが、17歳になるルーシーの成長ぶりに
ちょっとケイは戸惑い気味。

前作の3作目くらいからだいぶ仲良くなったケイとピート。4作目でピートは、
長年連れ添った妻と離婚し、高血圧など体のあちこちにガタがきている彼
を心配し、たびたびケイは家に食事に招くのですが、ルーシーはかつての
傲慢で叔母を見下していたピートに嫌悪を抱いていて、ピートもルーシーを
「マイアミのガキ」とあしらいます。

そして、いつのまにか、という感じで、ケイの恋人でFBIのマークがロンドン
の爆弾テロに巻き込まれて死んでしまいます。
そのせいか、他人に心を閉ざしがちになるケイ、さらに追い討ちをかけるよう
に、ワデルの検屍に問題があったと文句をつけてくる弁護士は、ケイの大学の
恩師で、この教授には苦い思い出しかなく、そして事態は、ケイを陥れようと
する何者かの計略、陰謀があり・・・

こんな複雑怪奇なトリックに、最後にどうやって収拾をつけるのかと思って
いると、意外な人物が関わってきて、相変わらず、なんとなく後味の悪い
結末、しかしケイの周囲の友情や愛情が光明を見出してくれて、止まない雨
はないと感じさせてくれるのです。

それにしても、ケイのまわりの人物がつぎつぎに逮捕されたり死んでいったり、
果たしてこの先どうなってしまうのか!と、ちょっと心配。

コメント
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