晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

川上弘美 『蛇を踏む』

2010-04-06 | 日本人作家 か
すこし前に、新聞のコラムで「川上弘美の小説に出てくる人物は
よく食べる」という一文を目にして、さらにタイトルのインパクトに
興味を引かれて、さっそく読んでみました。

まず、のっけから、主人公の女性が公園で蛇を踏みます。踏んで
から蛇を踏んでしまったと気がつき、そして「踏まれたらおしまい
ですね」と蛇は言い、溶けて煙となり、人間に形づくられて、そして
「踏まれたので仕方ありません」と、50代くらいの女性の姿になった
蛇はそう言うと、女性の住む部屋の方へと歩いていきます。

それから、女性の働く数珠屋での話となります。主人のコスガさんは
外回り、奥さんのニシ子さんは数珠の製作、女性はもっぱら店番。
とまあ、背景はこのくらいで、あとは女性が家に帰るとさきほど踏んだ
蛇が夕飯の支度をして待ち、あなたの母だと言うのです。
ここから母と名乗る蛇と女性との奇妙な生活、数珠屋の奥さんもどう
やら蛇となにかある様子が描かれていきます。
女性は、母と名乗る蛇にこっちの世界においでと誘惑され、しまいに
体内に蛇が侵入までしてきます。

そして話はズバッと、まるで落丁かのような唐突な終わり方。

他にも、短編が2作収められているのですが、こちらも不思議な世界。
煙につつまれているような化かされているような、あるいはふざけて
いるのかまじめなのか、読み終わってモヤモヤが胸につかえていた
ところに、作者のあとがきで、これは「うそばなし」で、「うそ」の
国に入り込んでしまったことを書いているのだそうです。

とにかく固定概念を捨てて、川上弘美ワールドに浸ることを解説など
で薦めてはいるのですが、そもそも個人的にこういった系統の「ザ・
純文学」みたいのはどうしても体が脳がうけつけないというか、読ん
でいて息苦しくなってしまいます。
これを読み解く才能が無いといってしまえばそれまでですが、わかった
ふりもしたくないので、どうにも構成の無い随筆や散文形式は苦手。

ただ、それでも読んだことを否定したくはないので、作者の「これは
うそなんですよ」という言葉に一筋の救いを見出します。
コメント
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