晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

雫井修介 『クローズド・ノート』

2010-02-01 | 日本人作家 さ
ちょっと前に、雫井修介の「犯人に告ぐ」を読んで、そしてこの
『クローズド・ノート』を読んだ後、作者の名前が同じことに軽い
驚きをおぼえ、まあこんなにも違う作風を描けるというのは、
いい意味で読者を裏切るという書き手と読み手との関係を繋ぎ
とめる才能なのでしょう。

教育系の大学に通う香恵は、マンドリンクラブの友人を家に招
こうとしていると、マンションの前に香恵の部屋あたりをじっと
見ている男がいます。
友人がアメリカに留学する話などをしていると、香恵は、マンシ
ョンの前の住人が忘れていったノートを見つけます。
中を見るのも失礼と思い、そのままにしておきます。

そうして友人はアメリカに旅立ち、香恵は文具店のアルバイトに
いそしみます。万年筆コーナーの配属になり、次第に万年筆に
魅了されてゆくのです。
ある日、一人の客が万年筆を買いに来たのですが、その男は、
以前、香恵のマンションの前で部屋を見ていた男。
何を買おうか迷っている男の相手をしていると、今度はアメリカ
に留学した友人の恋人が来店し、香恵に親しげに振舞います。

友人に、件の男に出会ったこと、そして恋人が来店したことを
国際電話で報告するも、どこかそっけない返事。
そのうち、友人の恋人から食事に誘われたりしだします。
そして、香恵に交際を申し込んでくるのです。

一方、部屋を見ていた男は香恵の大学のOBで、イラストレーター
をしていると知ります。
香枝のほうは、マンドリンクラブの定期演奏会が間近に迫り、練習
に打ち込みます。が、今年は家族が観に来られないと聞き、どこか
寂寥感に包まれ、ふと、部屋にある前の住人が忘れていった日記を
手にとって、中を読んでみると、「4年2組、太陽の子通信」という
学級レポートが。持ち主は小学校の教師らしく、香恵はノートを
読み進めて・・・

ハートウォーミングな話で、ラストあたりはホロリときます。
他人の日記を勝手に読む、という行為に香恵ははじめためらいを
おぼえるですが、同じ部屋に住んでいたという仲間意識というか、
ノートの存在が、その持ち主がそこにいるかのような気になり、
とうとう開いてしまうのですが、このノートがこの後の話にどの
ように影響されてゆくのか、気になるところでしたが、進め方に
無理が出てこない丁寧な展開で、「最終的にみんないい人」になる
のはちょっと大団円すぎやしないか、と思ったりもしたのですが、
まあこんな読後に温かい気持ちになれる小説もいいかも。

万年筆の細かい説明やさまざまな種類に関して、そんなに奥深いの
かと関心を持ってしまいます。
本の帯にあった読者の感想にもありましたが、万年筆を使ってみ
たくなりますね。
コメント
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