晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

藤本ひとみ 『ブルボンの封印』

2009-03-01 | 日本人作家 は
17世紀のフランスでさまざまな憶測を呼んだ、鉄仮面伝説の独自解釈版。
ある位の高い貴族の息子ではないか、中でも、正当な王位継承者ルイ14世
が実は鉄仮面の中身で、表にいたのは替え玉なのではないか、という噂すら
あったようです。

いわば、日本版の影武者といった存在ですが、そこには常に、罪のない子ども
が時の政治や政局、権力や陰謀に利用され犠牲となるのですが、この作品でも
ある高名な貴族の息子という子どもが、その出自を知らぬままに預けられて、
自分の親の存在を知りたいと思い行動しますが、さまざまな障害に遭い、そして
判明したと思いきや、今度はブルボン王朝を支える政治の実権を裏で握る者たち
に翻弄されてゆきます。

こんな歴史時代小説な内容の中にあって、うまいこと恋愛も織り込んであり、
またもうひとり出自のさだかでない女の子も政治に翻弄される運命下にあるの
ですが、この女の子の生きる力強さ、独立力は、ブロンテの『ジェーン・エア』
を思い出させます。

フランス王室の侍女であった女性のもとに預けられた「さる高名貴族の息子」
の出自とは、親はいったい誰なのか、そしてもうひとり、出自のさだかでない
女の子の肩にある焼印はなにを意味するものなのか。

この物語の重要人物で、ルイ14世とその側近2人が出てくるのですが、自分
に自身の持てないルイに、気心許してときには諌めときには励まし、この3人
が、先述した「さる高名貴族の息子」と女の子と関係してきるのですが、彼ら
それぞれのキャラクターの魅力は、世界史が好きでない人には苦痛でしかない
17世紀のフランス王室スキャンダルや、女の子を中心にめぐる恋愛ドラマに
ほどよく色添えされます。
そして、憎々しいキャラクターも個性的で、物語の幅に拡がりを持たせています。

情報量が多く、場面展開もめまぐるしく変わりますが、それでも不自然ではない
ように補足説明もあり、伏線もしっかりとあり、こういった情報量ギッシリな本
にありがちな、前のページに戻って読み直すといった面倒はありませんでした。
それだけストーリーも登場人物も魅力的に描けているということですね。

コメント
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