Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

「意外と平等社会」日本?

2007-08-09 23:39:15 | Weblog
安倍内閣を彩った柳沢伯夫,久間章生,赤木徳彦の各大臣,今回の参院選挙を象徴するといわれた片山虎之助・前議員,みんな東京大学法学部→中央官庁の官僚→国会議員というキャリアパスを歩んでいる。本来ならエリート中のエリートと呼びたいところだが,それに相応しい見識や品格があるように見えないのは何故だろうか。

日本には,ノブリス・オブリージュなどという,エリートが持つべき矜持や倫理がない(あるいは失われた)だけでなく,イギリスやフランスのように外見自体が違うということもない。上述の皆様は,見た目も語ることも,そのへんのフツーのオヤジと変わらない(選挙への適応の結果なのかもしれないが・・・)。それって「意外と平等社会」ニッポンの証左だと,慶賀すべきことなのかもしれない。いやはや・・・。

ポストプロシーディングス

2007-08-09 13:19:36 | Weblog
昨年のWCSS2007のポストプロシーディングス "Advancing Social Simulation" (Springer)が届いた。このなかには,野口さん,井上君との共同研究も含まれている。査読付の文献に採択されたことは,この数年行ってきた教育と研究の成果として素直にうれしい。また,この本の出版に当たり,東工大の21世紀COEプログラム「エージェントベース社会システム科学の創出」の支援を受けたとのこと,そちらにも感謝せねば・・・。

忙しいですか?

2007-08-08 23:46:45 | Weblog

「最近忙しいですか」という,よくある問いかけ。まあ,とか,ぼちぼちとか答えることが多い。「全然暇です,あとお迎えを待つだけです」とか「忙しすぎてそろそろ過労死します」と答えるのは,悪い冗談にしかならない。くだらない質問だといえないのは,ぼくもついつい,そういう質問をすることが多いからだ。

山崎元さんのブログに面白い考察がある。

「お忙しいですか?」という質問は、相手を気遣いながら、相手に自慢話をさせるきっかけを与える、なかなか便利で親切な質問ですが(私も使うことがあります)、これに、100%乗って、如何に自分が忙しいかという話をするのは、間抜けというものでしょう。

(中略)・・・結局、「忙しい」、「忙しい」と言っている人は、他人に同情して欲しいか、自分(の仕事)は価値があると自分で思い込みたいか、何らかの自慢をしたいか、の何れかで、話の聞き手にとっては迷惑な存在です。

てことは「忙しいですか?」と不用意に聞いて,相手に「いやーホント忙しくて」などと答えさせてしまったら,非常に失礼なことになる。山崎さんの結びのことばもいい。

何れにせよ、少々忙しくても、疲れていても、「面白いことがあれば、参加する気はありますよ!」という前向きな余裕を見せながら話をする方が、お互いに楽しいし、話が有意義になりやすいのではないかと思います。

どんなに研究計画が破綻しようと,一貫性がないと非難されようと,「面白いこと」があれば首を突っ込む,というスタンスは崩さないほうがいいかもしれない。


認知科学の窮屈さ

2007-08-08 01:36:54 | Weblog
今日の脳科学塾で,久しぶりに海保先生にお会いする。4~5年前,学食でお会いしたことを覚えていただいていた。講演では,認知科学小史が,内観法→行動主義→認知主義(計算主義,記号主義)→状況論(アフォーダンス)→進化心理学,という大まかな流れで語られた。これら以外に,PDP,コネクショニストのような脳神経科学につながる流れもある。

海保先生によると,これらは方法論が違うだけでなく,焦点を当てる領域が違うので,ある意味で棲み分けているという。心理学,認知科学の立場はそうかもしれないが,消費者行動をトータルに理解したいという立場に立つと,そうしたタコツボ化はありがたくない。各個人の内部知識と外在化された情報のインタラクションで消費者の意思決定があると考えるのが健全だと思うが,そうなると認知科学の特定の立場には収まらないのかもしれない。

本来節操のないマーケティングの立場からいえば,経済学や心理学といったエスタブリッシュメントに操を立てる必要などない。ただし,既存の学問を無視するのでなく,それらを縦断して,いいとこ取りをすればいいのだと思う(ただし,厳密な論理構成のもとで)。

ちなみに,ぼく自身がD論で選好形成に取り組んだとき,少なくとも前半では,意思決定ルールという「認知主義的」パラダイムにこだわった。そこに状況,感情,適応という要素をうまく組み込めなかったのが大きな限界といえる。もちろん,それはこれからのお楽しみということにしよう。

美しい「ものづくり」へ

2007-08-07 13:34:41 | Weblog
奥山清行『フェラーリと鉄瓶』読了。著者はポルシェやフェラーリのカーデザインを手がけてきた,国際的に著名なデザイナー。この本の中心部分であり,最も興味深いのは,イタリアのカロッテェリア「ピニンファリーナ」での経験である。強力な自己主張を持ちながら最後はリーダーの指揮に従う,限られた時間ですさまじく効率的に働く,実力のある者に権限が集中する一方でリストラや成果主義とは無縁,といったカロッテェリアの組織風土の話はどれも新鮮だ。「日本型」「米国型」といったステレオタイプに収まらない経営スタイルがある。

フェラーリは特別,例外的という見方もあるだろう。グッチやフェラガモも特別だと。では,フィアットやオリベッティはどうなのか・・・。いうまでもなく「イタリア」自体が特別,ということもできるが,日本にもまた,世界で賞賛されるものづくり,デザイン,ブランディングを目指すに足る独自性があるではないか。たとえばトヨタや任天堂にそれを見出すこともできるかもしれない。奥山氏自身は,故郷の山形で優れた職人の技を組織して,日本型カロッテェリアの実験に取り組んでいる。夢に富んだ,エキサイティングな話だ。

自分についていえば,美しいもの,クリエイティブなものを作り出す組織のあり方,経営の仕組みを考えいきたいと思っている。だが,それ以前に,そもそも何が美しく,クリエイティブなのか,それは,どのように消費者に好まれるのか,といった問題に取り組みたいと思う。もっとも,美しいものは美しいから美しい,というしかない側面がある。それにしても,美しいという判断にどれぐらい個人差があるのか,単なる感覚なのか,訓練で向上する能力のようなものなのか。それが,結局は経営論にも反映してくると思う。

次いで『iPodは何を変えたのか?』を読み始める。クリエイティブ消費論を語るとき,iPod を無視して語れない。あるいは,一部の日本人まで巻き込みつつある iPhone への熱狂。それは,バンドワゴン効果だけで説明できない,という直観がある。つまり,消費者間相互作用の研究だけでは,ぼくの研究はやはり完結しないのだ。

ビジネス「書」の法則

2007-08-05 00:23:25 | Weblog
東谷暁『ビジネス法則の落とし穴』・・・パレート,ランチェスター,パーキンソン等々,ビジネス界で愛好されてきた数々の「法則」が生まれた背景など,この本に書かれた豆知識はそれなりに楽しめる。だが,その延長線上に「セグメンテーション」や「下流社会」が出てくると,おいおいといいたくなる。それって誰かが「法則」だと呼んでいるのだろうか?

著者は,ビジネスの「法則」は怪しいものが多く,よくても,適用範囲が限られることに注意すべきだと主張する。最も攻撃されるのが「ロングテールの法則」で,言い出しっぺのアンダーソンの主張が途中で変わったこと,ベキ分布自体は昔から知られていること,などが指摘されている。だが,そのこと自体「よく知られたこと」で,それだけ言い立てても実りはない。

ぼく自身はヘッドとテールのポートフォリオのあり方をCRM的視点で「解明」したいと思っている。そのことを直観的に理解している実務家はいるし,すでに実践があるからこそ実証的な分析が可能になる。しかし,そのことと,科学的知識として「すでに知られている」ということは同じではない。

一部のビジネス書が誤解・誇張している部分を攻撃するだけでは生産的でない。また,著者が「心配」するほど,人々がビジネス「法則」を盲信しているとは思えない。「敵」を巨大に見せ,攻撃するという戦術は,著者の攻撃対象がとっている戦術と本質的に同じで,ビジネス書の「法則」といってもよい。そして,この本がその「落とし穴」にはまっているのは,何とも皮肉である。

ここ数日あわただしく

2007-08-04 08:35:12 | Weblog
木曜午前中,××関係の製本作業。意外と時間がかかり,予定していた他の用事を積み残しつつ,午後は東京で,オピニオン・ダイナミクスの打ち合わせ。新製品・新技術の普及という視点も大事だという指摘を受け,なるほどと思う。消費者間の情報の伝播,影響関係,意見(態度,選好)のダイナミクス・・・すべては同じ地平で論じられるはず。Wu and Huberman を読み始める。

夜,MBFの脳科学塾へ。ブランドへの感動が脳科学的にどう裏づけられるかに,多くの実務家が関心を持っている。ぼく自身の選好形成というテーマも,脳科学による基礎づけを必要とする。「好きになる」ことの本質は,茂木健一郎さんはアディクションだという。一方ぼくは,「一目ぼれ」というものに興味がある。片平先生はそれよりは,過去の感動がゆっくり蓄積していくプロセスに関心をお持ちのようだ。

金曜午前中はMMRCで「クルマ」の打ち合わせ。夏休み中に一つの山を超えたいと思う。午後は実務家向けセミナー。選択モデルの講義を終えたあと,マンネリをどうか超えるかを考える。内容の思い切った絞込みが一つ。あとは,二段階の意思決定,非補償型モデルへの取り組みだと,芳賀さんの指摘で改めて思う。夕方,駿河台で旧友と会う。御茶ノ水駅の周辺は昔とあまり変わっていない。

ここ数日ばたばたして,未返信のメールがたまっている。今日はそれらを処理しつつ,JWEINに向けたモデリングなどに着手せねば。

ゼミ合宿@会津東山温泉

2007-08-01 23:45:50 | Weblog
今年のゼミ合宿は会津東山温泉。土曜ワイド劇場に出てきそうな立派なホテルに宿泊,初日は真面目にゼミを行う。中澤君は複雑ネットワーク上の情報伝播を中心性に注目しながら分析したいという。藤枝君は『人工社会構築指南』の囚人のジレンマに関するパートを報告。水野君は,MASコンペをにらんで,地域社会で子どもの安全を守るためのモデル化についてアイデアを披露。そのあと温泉につかり,酒を飲む。

二日目は観光。まず会津武家屋敷へ。駅で大沼さんと合流し,鶴ヶ城を見学。どちらも戊辰戦争や白虎隊が最大の目玉になっている。展示を見て感じるのは,「日本」社会における責任のとり方だ。妻や娘が自刃する一方で本人は長生きした元家老の西郷頼母。家老が切腹する一方で,自分は生きながらえ華族となった藩主の松平容保・・・。今日の「政治」ニュースにつながるものを感じる。

最後は猪苗代湖へ・・・時間切れになって,帰途につく。8月になった。今週は明日からもいろいろな用事が目白押しで,落ち着かない。