Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

AESCS@早稲田大

2007-08-30 21:08:53 | Weblog
昨日,今日と早稲田大学国際会議場で開かれたAESCS(Agent-based Approaches in Economic and Social Complex Systems)のワークショップを聴講した。当然ながら,複雑ネットワークを扱った研究が増えている。共感を持てたのは,認知科学を視野に入れて,エージェントの知能を多少高める方向を目指した研究がいくつかあったこと。これから発展しそうな方向ではないか。

そうなると,マーケティングや消費者行動を扱った研究にも期待がかかるところだが,今回聞いた発表の多くはあまり感心しなかった。既存の(良質の)研究をもう少し踏まえたほうが実りがあるのではないか・・・自分の分野なので(自分のことは棚に上げて)つい厳しく見てしまう。しかし,他のドメインでも専門家からは同じような見方をされるのだとしたら・・・エージェントベースの研究者だけで交流するのでなく,「主流」と直接戦うことが重要かもしれない。

いずれにしろ,発表しないで聴いているだけ,というのはやはり情けない。主要な会議をターゲットに研究計画を立てるべきなのだろう。しかし,いまのところマーケティング(サイエンス)や消費者行動の「オーソドックス」な研究も日程から外すことはできない。二兎,三兎を追う状況が続く・・・。

内閣支持率に見る調査のバイアス

2007-08-30 08:42:09 | Weblog
発足したばかりの安倍改造内閣の支持率は,読売新聞の調査では44%,朝日新聞では33%・・・他社の数字は大体その間のようである。サンプリングやワーディングの違いで説明するには,大きすぎる差のように思える。もしかすると,調査主体の新聞社の名前を聞いて,対象者が「期待される回答」を想像して期待に沿った答えをするとか,自分の意見に近い新聞社の調査へ応じやすい,という傾向があるのだろうか・・・。

マーケティング・リサーチでは,調査の依頼主企業がわからないよう配慮するが,それでも勘のいい消費者は,誰が依頼主か見抜く可能性がある。顧客満足調査では,調査の依頼主は回答者にとって明白である。となると,回答者が依頼主の喜ぶ回答をするバイアスが懸念される。こうしたことがコンスタントに起きるのなら,経時的な比較には意味があると考えられる。つまり,水準ではなく変化に注目するということだ。しかし,本当にそう仮定していいのか。問題や時期によってバイアスの出方が違うとしたら厄介だ。