Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ネットワークよ永遠なれ

2008-03-19 01:56:09 | Weblog
JIMS部会。まずD2の吉田さんから,パーソナルネットワークのサイズに関する実証研究の報告。一世を風靡したスケールフリー・ネットワークのバラバシ・モデルへの反発を心に秘め,工夫を凝らした質問紙調査をベースに,何が知人数を規定するかを統計的に分析している。注目すべきは性別が他の変数に対して強い交互作用を持っていること(少なくとも2005年時点で)・・・いまさらながら,日本社会におけるジェンダーの重要性を確認。欲をいえば,この調査に盛られていない要因で,もっと重要なものがあるのではないかと考えさせられる。あるいは,線形関係ではない,別の影響経路があるかもしれない・・・。

次いで,実務と研究の境界線を疾走する渡辺さんが,空間的自己相関モデルに関する最近の研究を語る。といっても,まずは哲学的な議論や,自らの教育の実践から入るあたりが渡辺さんらしい。相互作用について,ジャック・ラカンやゲオルグ・ジンメルはどう考えたか,あるいは岩井克人は・・・豊富な読書量に支えられた議論になかなかついていけないが,言いたいことの本質は共感できる。そして,いくつか実務的なモデリングを紹介しつつ,理論的にチャレンジングな空間的自己相関モデルと共分散構造分析の接合という話題に入る。このあたりは難しさが極大化し,的確なコメントをしようがないが,実質科学的に何をしたいのかが重要だ。テクニカルには,潜在変数の生かし方があるのではないか・・・。だが,それは生みの苦しみなのだ。その苦労はきっと報われるだろう。

今回は発表者だけでなく,聴講者の少なからぬ人間が,ネットワーク分析の空気を吸って生きてきた。だから,二次会は同窓会のような雰囲気があったが,これからの課題は,皆がそれをどう発展させ,場合によってはその限界をいかに突破するかであろう。この研究会が,そうした知的スプリングボードになればいいのだが・・・そうなるために,ぼくはどうすればいいのか・・・ともかく前へ進むしかない。

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