Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

「プラットフォーム」が支配する世界

2018-02-13 09:47:40 | Weblog
私はなるべく経営学の文献を読まないようにしている。なぜなら、そこにはマーケティングと関連が浅からぬ話題がいくつかあり、それを追い始めるととてつもなく広い大海に船を漕ぎ出すことになってしまうからだ。だが、ときには読まざるを得ないこともある。「プラットフォーム」の理論について概説する本書がまさにその一例であった。

実は昨年来、デジタルメディア環境における新たなマーケティングの研究をレビューする共同研究を始めている。その結果、プラットフォームという概念の理解を避けられないことになり、この分野の研究の第一人者による著書を読むことになった。そして、それがマーケティングに与えるインパクトについて、いろいろ思いを巡らしている。

プラットフォームの教科書
超速成長ネットワーク効果の基本と応用
根来龍之
日経BP社


本書の副題が示すように、プラットフォーム競争の鍵は「ネットワーク効果」が握る。そのプラットフォームにいかに多くのプレイヤーが集まるかが勝敗を分ける。しかし、顧客も戦略的に、自己のために複数のプラットフォームを使い分ける(マルチホーミング)。交換と競争のあり方が、以前に比べてより複雑化してきたといえるだろう。

価値連鎖のようなこれまでの道具立てだけでは不十分だという意味で、こうした変化は経営学者に大きな研究テーマになっているのだろう。そのことはマーケティング研究者にとっても同じである。いくつものレイヤーが重なったプラットフォームを消費者はどのように選択するのか? それは従来使われてきた消費者モデルで捉えられるのか?

AmazonやGoogleを中心としたエコシステムに組み込まれる企業にとって、そこでいかに自分のブランド戦略を展開するかも大きな課題である。これらの問題についてはおそらく各所で研究が進んでいて、数年後には成果が次々と発表されると予想する。そこではマーケティングと経営学、経済学の研究の垣根はかなり低くなっているだろう。

なお、本書の帯には「理論とカラクリを3時間で学ぶ」と書かれている。確かに本書は平易な文章に書かれており、厚い本ではないので、スイスイ読めることは確かだ。しかし、よほど前提知識があって速読術を身につけていない限り、3時間で読了するのは難しい。これは、生産性が著しく高い著者を基準にして書かれたコピーだと思われる。


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