Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

入門と実際の関係

2007-02-09 15:16:02 | Weblog
入門共分散構造分析の実際』を読みながら,この本のタイトルの意味は何だろうと考えた。「共分散構造分析の実際」の入門,という意味なのか? 確かにこの本を通じて,SEMの手練れである著者たちから,ユーザが実際に分析する際に知っておくべき重要なポイントをいくつも教わることができる。では「実際でない」入門書とは何だろう。難解で実務家がとっつきにくい入門書? あるいは平易に書かれているが実際使う段になると使えない入門書…?

一方,この本は「共分散構造分析への入門」の実際,であるいう意味にも取れる。最初の数章で,SEMの基本的な数理が丁寧かつユーモラスに解説されている。この部分は,回帰分析や(探索的)因子分析に関する知識がある読者にとって,SEMの数理の本質がより明確によくわかるように書かれている。もしかすると,著者は「実際」このような道筋で理解しながら「入門」していったのかな,などと想像してしまった。

学会でも,卒論・修論発表の場でも,SEMの普及は目を見張るものがある。しかし,そこでアドホックな「構成概念」やこんがらがった変数間のパスを目にして,食傷気味になることが少なくない。SEMの理論自体から,そうした傾向にブレーキをかけることはできないのだろうか? 数理に通じた人ほど,すっきりした美しいモデルを作る傾向があることから,そのように思う(例外もあるが)。ただ,数理的知識→すっきりしたモデルという因果関係ではなく,両者に影響する第三の因子(簡潔さ志向)があるということかもしれない。

ぼく自身がSEMを使うと「したら」,潜在変数はできるだけ少なく,フィットが上がるからといってショートカットのようなパスは絶対引かず,よほど美しくない限りパス図は出さず,式のみを報告する。それは好き嫌いの問題だが,それによってモデルをモジュール化でき,頑健にできるという理論的・実際的メリットもあると思う。まあ,好きにしたら,ということだろうけど。

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