Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

たかが同窓会,ではない

2007-12-15 23:38:22 | Weblog
博多に向かう機内で,島田裕巳『慶應三田会 組織とその全貌』(三修社)を読む。冒頭で筆者は,安倍(前)首相の弱点は,出身大学である成蹊大学の同窓生が国会内にほとんどいなかったことだという。一方,慶応卒の国会議員は,東大,早稲田に続いて3位。しかし,東大卒の首相は宮沢氏以降出ていないものの,慶応は橋本,小泉両首相を輩出している(野党党首の小沢,綿貫両氏も慶応卒だ)。確かにそうだが,だからといってなあ…というのが最初の印象。

数ある大学の同窓会のなかで,三田会は傑出した団結力を誇っている。ライバルの早稲田大学の稲門会とは全然違う。ビジネス界において,三田会の支援機能は大きいという。このへんの話はエピソードベースなので,どこまで正しいかわからない。だが,慶応の卒業生の満足度は卒業後に上がるという指摘は興味深い。具体的なメリットの有無に関わりなく,コミュニティの持つ効用があるのだろう。

面白いのが早稲田の稲門会だ。こちらは一般的な団結力はないが,海外や一部業界で,三田会との交流(飲み会やゴルフコンペ)がさかんに行われているという。早稲田OBは自分たちだけで交流するというより,慶応を媒介に交流する。早慶は競合的であると同時に,相補的であるということなのか。かつての自民党と社会党とか,巨人と阪神とかもそういう関係かもしれない(電通と博報堂はどうなのだろう…)。

最近,国立大学を含む多くの大学が同窓会組織の強化に努めている。しかし,元々福沢諭吉の思想に発する慶應三田会の組織力は,そう簡単に模倣できるものではない。そもそも創始者のどれだけ強いビジョンがあったかが問題だ。三田会に匹敵する団結力を持つのは如水会だが,その一因は,一橋大学がその出発点において一種の私学であり,創始者がいたからだという指摘は初耳で新鮮だった。

ということで,最終的にはこの本を面白く読んだが,しょせん自分には関係のない話。夜,メールをチェックすると,高校の同窓会からの案内状が届いていた。いかなる権力や権威とも無縁な,ちっぽけな同窓会…。だが,地下に「秘密結社のような」東京三田倶楽部があるという帝国ホテルで開催される。その瞬間は,同じ空間にいるということだ。

今日,博多駅前で買った本:

『タビリエ福岡』JTBパブリッシング
『天神ウォーカー』
スコット・バークン『イノベーションの神話』オライリー・ジャパン
橋本健二『新しい階級社会 新しい階級闘争』光文社

「旅」には2種類の活字が必要だ。

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