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あるマーケティング研究者の思考と行動

Head First データ解析

2012-01-13 09:34:37 | Weblog
統計学あるいはデータ解析の基礎について,ビジネスパーソン向けに書かれた入門書・・・というと他にも類書がいっぱいあるが,この本はかなりユニーク。お得意先からの依頼に統計アナリストとしてどう答えるか,という視点で架空のストーリーが構成され,統計学の手法が紹介されていく。

Head Firstデータ解析
―頭とからだで覚えるデータ解析の基本
マイケル・ミルトン
オライリージャパン

本書でカバーされている話題は以下の通り:

実験計画
最適化
データの可視化
仮説検定
ベイズ統計と主観確率
ヒューリスティクス
ヒストグラム
回帰分析
RDBとクリーニング

これを見ても非常に個性的であることがわかる。つまり,データ解析の本でありながら実験の話で始まり,いきなり最適化(線形計画法)の話題になって,次に可視化に触れる。ベイズの定理を用いた意思決定については,2章を割いて詳しい叙述がなされている。

一方,統計学の入門書であればメインに扱われる仮説検定や回帰分析については,最小限(見方によっては不十分な)知識しか与えられない。とはいえ,Excel の統計ツールではなく,フリーの統計ソフト R の利用を薦めるあたり,著者のこだわりが感じられる。

架空の事例のストーリー構成はユーモアに富んでいて,なかなかよくできている。分析の結果にクライアントは大喜び!という結末ばかりで,経験者はそんなにうまくいかないだろ・・・と思いがちだが,初心者を動機づけるにはこれぐらい書く必要があるかもしれない。

この本を商学部3年生のゼミで輪読した。ふつうの統計学の教科書を読むよりは,学生たちには読みやすかったはずだ。自習書としても薦めたいところだが分厚すぎるのと,理論的にやや疑問の記述もあって,一定の知識を持つ教師が教材として用いるのが最適だろう。

実務家や実務家志望の学生向けに,本書と同じくらい面白く書かれ,しかしもう少しコンパクトで,手法をより深く紹介するような統計学・データ解析の教科書があってもいいのではないか・・・いつか自分でそういう本を書いてみたいなと,ちらっと思ったりする。

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