Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

福祉は「道徳」で決まる

2009-09-14 20:58:48 | Weblog
今朝のワイドショーで,民主党が公約した「子ども手当」があなたの家庭にとって得か損かを特集していた。給付の対象外となる家庭には不公平だとか,給付金はパチンコに使うといっている友人がいる,といった「視聴者の声」が紹介される。番組に出ていた民主党議員によると,子育てに使うことが給付の条件になるというが,それを監視することはできるだろうか。

この議員の方,子ども手当の狙いは少子化対策なのだから,「子どもを持つのは得」と感じてもらえればよく,何に使おうが関係ない,と答えるわけにはいかなかったのか。もちろん,すべてパチンコに使うような親が増えるとしたら,教育格差や少年非行の増大など,望ましくない副作用が生じる。だが,そのような親が全体に少数であるならば,問題はないはずだ。

そこで思い出したのが,9/7付の日経新聞朝刊に掲載された,阪大の大竹文雄教授による「価値観、経済の差を生む」という論文だ。そこで紹介されている研究の1つは,「政府から給付を受けることについて道徳観が低く、ウソをついて不正受給しても罪悪感を感じない人の比率が高い国ほど、失業給付の水準が低く、解雇規制が強い」ことを実証的に示したという。

失業保険の不正受給が増えると政府としては給付水準を下げざるを得ない。そうなると,失業リスクに備える政策として,解雇規制を強めることになる,というのが,そのロジックだ。子ども手当も,すべて遊びに使うような家庭が多ければ給付水準は削減され,少子化に歯止めはかからない。結局,移民を拡大することになり,低所得者はより窮乏化するかもしれない。

福祉政策が「期待通り」機能するかどうかは,その国の人々の道徳観や価値観にかかっている,ということだ。ついそれは「民度」だといいたくなる。民度というのは,差別的で嫌みなことばだが,「可能であっても不正受給はしない」ことが道徳だとしたら,そうした道徳を持つ人が少ない国を「民度が低い」と呼んでもよい気がする。で,日本はどうなんだろう?

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