Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ロングテールは使えない?

2007-01-16 23:43:56 | Weblog
MarkeZine に「ロングテールはビジネスでは『使えない』理論である...」という記事。それによると・・・「『ロングテールの法則』とは、一つ一つはあまり売れていない商品であっても、全点数を合計すれば、その売上げは一部の売れ筋商品にも勝り、ネットショップの重要な収益源になるという考え方である」だという。ああ・・・訳本も出ているのに,何で Anderson の原典に当らないんだろう・・・。

ちゃんとそれを読めば,テール(ニッチ)のほうがヘッド(売れ筋)より儲かるとか,あるいはテールだけで儲かるとか主張していないことがわかる。あるいは,80:20の法則が事実として「否定」されているわけでないこともわかるはず。もっとも訳本の「『売れない商品』を宝の山に変える新戦略」という副題だけ見ると,勘違いしかねない。原書の記述に誤解を招く部分があることも確かだ。

結果として,ニッチな製品を揃えれば儲かる vs. そんなバカな,という不毛な議論が起きている。原典の問題は,生産や在庫の追加的費用という供給面を主に見ていることだと思う。それだけから,テールをカバーすることの積極的な理由は出てこない。顧客サイドの費用構造をきちんと見ることで初めて,ロングテールの収益構造が明らかになるはずだ。しかし,その意義は実務家にすらなかなか理解されない。

上述の記事で面白いのは,筆者が「伝え聞くところによると」アマゾンの製品別売上分布にはヘッドが無く,テールばかりだと主張しているところだ。Brynjolfsson たちの実証研究では,それはベキ分布に従うことが示されている。それとは違う「事実」があるのだとしたら,ぜひ公表してもらいたいものだ。

とにかく事実に基づく議論がしたい。そのためにぜひ事業者に協力してもらって経験的な研究がしたい。しかし,いまのところ,それが順調にいかないところに自分の力不足を痛感する。

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