Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

仮想世界から来た研究書

2008-10-07 23:53:21 | Weblog
「人はなぜ形のないものを買うのか」というタイトルはなかなか魅惑的である。サービスからコンテンツまで,無形の財がいろいろ思い浮かぶが,この本が扱うのは副題からわかるように,物理的実体のないデジタル財,さらには仮想世界でのビジネスである。こうした分野を精力的に研究してきた著者の現段階での成果が,ここにまとめられている。

人はなぜ形のないものを買うのか
野島 美保
エヌティティ出版

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毎日,ほとんどパソコン画面の前にいるぼくだが,この本で取り上げられているような世界に足を踏み入れたことが全くない。だから,なぜそれを買うのか,全く想像がつかない世界が研究されている。ぼくの前に存在する大きな壁(デジタル・ディバイド)は,著者の前には当然ながら存在しない。だからなのか,その世界を知らない者が想像する仮想世界のおどろおどろしい異質性とは,この研究書は無縁である。

むしろ,リアルの世界とのある種の連続性が仮定され,経営学やマーケティングの理論が自然に,発展的に拡張されているように思える。それは,リアルと仮想の世界の間を軽やかに移動する著者ならではのことともいえる。その「自然さ」に共感するか,あるいは(よく社会学の文献に見られるような)もっと「構えた」議論を欲するかは,趣味の違いといえるかもしれない。

友人が本を出すのは刺激になる。まして,それが自分よりずっと若い人の場合,非常に刺激になる。本屋で見かけながら,もしかしたら… とケチ臭く購入を控えていたら,期待通り献本していただいた。深謝。

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2 コメント

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感謝 (NOJIMA)
2008-10-08 22:59:36
拙著をとりあげて頂いてありがとうございます。
軽やかで爽やかな仮想世界住民を目指します・・
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reply (mizuno)
2008-10-09 08:11:30
現実世界でも頑張ってください! また都市文化の研究をしましょう。
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