Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

異文化適応のマーケティング

2011-07-10 11:40:11 | Weblog
日本企業にとっていま最大の課題の1つがグローバル化であることはいうまでもない。もちろん,海外市場で成功している日本企業はたくさんある。ただし,その多くが製造業でサービス産業では稀である。顧客のローカル化されたニーズへ適応する必要がどれだけあるかが鍵となる。

今回翻訳された『異文化適応のマーケティング』は,フランス人とアジア系オーストラリア人によって,現地適応を重視する立場から書かれたグローバル・マーケティングの教科書である。周知のように,グローバル・マーケティングには標準化を重視する立場もあり,論争になっている。

標準化か現地適応かという問題に単純な解はない。結局どうバランスをとるかである。完全な標準化あるいは現地適応が可能であるなら,グローバル・マーケティングという分野は必要なくなる。このバランスが難しいからこそ,その分野の研究が有意義で,かつ面白くなるわけである。

最近ぼくは,同じ大学(経営学部)の大石芳裕先生の研究会にときどき顔を出し,主に実務家の方々からグローバル・マーケティングの実践を伺っている。非常に面白い。異文化にいかに適応し,あるいはその差異をいかに乗り越えるかは,理論や思想を鍛える場として重要な役割を持つ。

本書を監訳された小川孔輔先生は日本のマーケティング・サイエンスを牽引されてきた一人だし,もう一人の監訳者・本間大一氏はデータ解析の専門家だ。一見意外な翻訳陣に見えるが,グローバル・マーケティングの研究が狭いコミュニティを超えて広がりつつあることを意味している。

グローバル・マーケティングを研究するには,語学力は当然として,海外取材に積極的に出かける行動力や異文化適応能力,幅広い人脈を形成するソーシャルな力などが必要となる。特に,若くて元気な研究者にはぜひ挑戦してもらいたい分野だ。今後いっそう必要となる分野だからである。

そのとき,この大著は学びのスタートに相応しい教科書となるだろう。ご恵投いただいた小川先生に深謝(特に最近は『マーケティング入門』『しまむらとヤオコー』など次々出版されており,いつも一方的に頂戴するばかりで恐縮する。いつかお返しをと思いながら,月日が過ぎていく・・・)。

異文化適応のマーケティング
ジャン・クロード ウズニエ ,
ジュリー・アン リー
ピアソン桐原

マネジメント・テキスト マーケティング入門
小川孔輔
日本経済新聞出版社

しまむらとヤオコー
小川孔輔
小学館

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