Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

経済学は統合されつつあるという

2009-02-11 23:32:08 | Weblog
今日の「仕事」は辛かった,あとは焼酎・・・ ではなく,安ワインをあおるだけ,という一日だった。ただ,昼食時にふだんあまり接する機会のない,ファイナンスの先生とほんのわずかだが話す機会があった。何でも私の修士課程時代の恩師と接点があるようで,スモールワールドを実感する。私はその頃,産業組織論を勉強していました,といささか弁解気味に申し上げた(なぜ弁解するのか,考えてみれば不思議だが・・・)。そういえば,小田切ゼミのOB会が来月早々にある。

経済学かぁ・・・ つかず離れずの関係できたが,マクロ経済学となると,さすがに距離感がある。しかし,この経済「危機」にマクロ経済学がどのような診断書を書くのか,少しは興味がある。週刊東洋経済の2/14号では「特別講義 世界経済危機」という特集を組み,有名な経済学者,エコノミストを登場させている(なぜだか慶応の先生が多い気が・・・)。それはそれとして,個人的に興味を持ったのが「分析ツールの共有化が進む世界の経済政策当局」というコラムだ。

週刊 東洋経済 2009年 2/14号 [雑誌]

東洋経済新報社

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執筆者の小枝淳子,西山慎一の両氏は,いずれも米国の大学で経済学の学位を取り,それぞれ IMF とカナダ銀行に勤務する若手エコノミストだ。したがって,米国経済学,そして政策当局での経済学の動向に通じておられる。その彼らがいうには,最近のマクロ経済学は「動学的確率的一般均衡」モデルへの統合が進み,いわゆる新古典派とケインズ派の対立は,そのなかでの相対的な位置の違いになってきているという。

このモデルでは,主体は動学的な最適化行動をとると仮定するが,市場の不完全性(たとえば失業の存在)などは許容することもできる。なるほど,従来より懐が深いわけだ。ぼく自身は,最適化行動の仮定がどこまで妥当か気になるが,基本はシミュレーションで解を求めるアプローチなので,行動経済学や行動ファイナンスの成果を導入する拡張は,技術的には可能であるかもしれない(すでにあっても不思議じゃない)。

動学的一般均衡モデルについては,同じ IMF の加藤涼氏がすでに入門書を書かれている。そのコンパニオン・サイトを見ると,計算には MATLAB が使われている。そうかそうかと,一瞬強くシンパシーを感じる。もちろん,同じシミュレーションといっても,ぼくとはやっていることがかなり違う。ただ,シミュレーションという,ある意味で機械まかせの手法を使うことで起きるあつれきは,共通する部分があるのではなかろうか。

では,マクロ経済学は対立から統合に向かうのか? その阻害要因は,シミュレーションという作法が,数式を解くのとは別のスキルを要求することだ。さらにいえば,そもそも数学モデルをほとんど使わない経済学者や実務家が多数いて,そこでの論争をモデルが解決するのは難しい。そうした困難を乗り越えるだけのパワーを動学的一般均衡モデルが発揮するならすごいことだ。そうなると,隣接分野への影響も出てくるだろう。

では,ぼくが関心のある,マーケティング・消費者行動という領域ではどうだろうか。米国の一部の研究者たちは,すでに上述の流れに乗っているように思える。マーケティングといっても,経済の一部にすぎないと考えれば当然のことだ。しかし,製品・サービスのマーケティング競争やイノベーションの世界は,一般均衡というパラダイムからかなり離れた地点にあると思う。そこでは,動学的不均衡モデルこそふさわしい。

しかしながら,動学的一般均衡モデルが,個々の経済主体の限定合理性を考慮し,市場の均衡メカニズムに不完全性を認める方向で進化していけば,結局何もかもそこに統合されるという見方もあるだろう。最終的にどうなるのかわからないが,そうなるまでには,かなりの時間がかかるのではなかろうか。だとすれば,そんな長期には,ぼくはもう死んでいるだろう。

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3 コメント

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思ったよりも(微笑) (ふーた・ろーさ1号)
2009-02-12 23:06:06
ふーた・ろーさ1号はイノベーションの住人(?!)ですので、mizunoさんが仰るように、「動学的不均衡モデル」の方が好み(?!)です(微笑)。
ただし、それまでをも統合するような時期は。。。
思ったよりも早くやってきて、われわれがみられるかもしれません(微笑)。

個人的には、数式もシミュレーションも苦手(?!)なので、それについて行けるかが心配(??)ですが(微苦笑)。
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そのとき (mizuno)
2009-02-12 23:17:50
私は死んでいますが,ふーた・ろーさ1号さんは,ちょうど50過ぎぐらいかもしれませんね(笑)
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それほどの年齢差では。。。 (ふーた・ろーさ1号)
2009-02-13 22:37:33
それほどの年齢差ではないと思いますが(笑)。
mizunoさんも一緒に、楽しい(のかな?)「統合」に立ち会えると嬉しいですね(微笑)。
とはいえ、50代になってから数学を学び直すことになったら。。。きつそうです(微苦笑)。
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