Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

リサーチ手法百花斉放

2008-03-27 08:58:39 | Weblog
東京での某プロジェクト報告会の直前,本屋に寄る。ビジネス街の本屋は,狭い店内に来店する顧客の嗜好に合わせた凝縮した品揃えをしていて面白い。宣伝会議3/15号を購入。特集2は「ヒット商品をつくるマーケティング・リサーチ」。

宣伝会議 2008年 3/15号 [雑誌]

宣伝会議

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まず,いくつか事例が紹介される。インバス・スキンケアという新コンセプトを提案したライオン「BATHTOLOGY」については,いくつかの意識・行動調査からニーズが発見され,開発段階に入ったあとはコンセプトテスト,ネーミング/パッケージテストが行われたという。

ロッテ「とっておきのチョコパイ」の開発では,定点調査から課題(購入経験率は高いが頻度が低い)を抽出,さらにターゲット顧客に焦点を当てたアドホック調査から収集された自由回答にテキストマイニングを適用,ライフステージに応じたニーズの違いを分析した。

カルビー「ポテリッチ」ではグループインタビューを通じてポテトチップ各アイテムのポジショニングを把握,最終的には定量調査でパッケージとテイストの適合性をテストしている。以上の3ケースでは,いずれも定量調査と定性調査が繰り返し実施されている。多くの企業が新製品開発にあたって複数の調査を行っているが,それらをどう組み合わせるかに各社のノウハウがあるのだろう。

定量/定性調査をいかに組み合わせ,どのような分析手法を適用すべきかについて,1つの包括的な枠組みを提案しているのが,芳賀さんの 3-Step Research である。この特集では,カネボウ化粧品での研究の一端が紹介されている。現場での活用が着々と進んでいる模様。企業機密の制約があるとは思うが,今後実際の適用事例が発表されるとうれしい。

仮説「発見」型リサーチが重要だというのは朝野先生。1970年終盤以降,NQT (New Qualitative Technique) が成長してきたという。最近,エスノグラフィーに代表される行動観察法に注目する企業が増えているが,今後の方向として,アイトラッキングや fMRI といった生理学的な観測手法もまた期待されるという。

様々なリサーチ手法が必要とされるのは,人間の意思決定が多層的だからだろう。自分の行動とその動機を意識できるレベル,行動は意識しているが動機を正しく意識していないレベル,行動も動機も意識できないが行動が外的に観察されるレベル,行動にストレートに反映されない脳内変化のレベル…。

実務では「使える」ところだけ使えればいいわけだが,消費者行動の研究者は,各レベルを統一的に理解したいと願うはず。そのうち,それを目指したサーベイが出てくるのではないか(あるいは,すでにある?)。

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