Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

「選好」の認知科学

2010-07-27 18:05:28 | Weblog
最近の認知科学では「選好」(preference)をどのように扱っているのか・・・『よくわかる認知科学』では,認知科学上の概念を多くを見開き(あるいは,せいぜい4ページ)で解説している便利な本だが,「好感・選好」が何と4晩目に来る。つまり,この本で選好とは「心の基本機能」としてかなり重視されているのではないか・・・。たった2ページであるが,以下のような小見出しに触れると心が躍ってくる。

1. 何を好きになるのか?
2. いつ好きになるのか?
3. 好きになる/好きであり続けることは役にたつのか?
4. なぜ好きなのか?
5. 「好き」ならば「欲しい」?
6. 選好と自由意志

Johannson らの choice blindness に関する実験や,下條先生の論文や著書が参考文献に記されている。この項目の執筆者は渡邊克己氏(東京大学)。

よくわかる認知科学(やわらかアカデミズム・“わかる”シリーズ)
乾敏郎,吉川左紀子,川口淳:編
ミネルヴァ書房

最近出版されたばかりの『認知心理学』というやや厚めの教科書では,第3章「感性認知」において選好に関する記述がある。そこでは Zayonc の単純接触効果に続いて,Shimojo らによる視線のカスケード現象が紹介されている。つまり,これらは認知科学/認知心理学にとって,教科書に載るような当たり前の知識になっているということだ。この項目を担当したのは川畑秀明氏(慶応大学)である。

認知心理学 (New Liberal Arts Selection)
箱田 裕司,都築 誉史,川畑 秀明,萩原 滋
有斐閣

昔の認知科学の本では,選好という話題はあまり扱っていないという印象があった。それよりは問題解決,推論や学習が重視され,意思決定を扱うにしろ,その思考のアルゴリズムがもっぱらの関心を集めていたように思う。しかし,いつの間にか感情や好き嫌いの問題を本格的に取り上げている。消費者行動の研究もまたそうした変化を反映して発展している・・・のかどうかは,灯台もと暗しで実はよく知らなかったりする。

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