Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

Marketing Science Conference@上海

2016-06-19 02:43:58 | Weblog
6月16〜18日、上海国際会議センターで Marketing Science Conference が開かれた。主催校は復旦大学だ。この会議がアジアで開催されるのは初めてである。上海は羽田から3時間足らずの距離で時差は1時間、沖縄に行くのとほとんど変わらない。とはいえ、主要なウェブサービスにつながらないなど、いろいろな壁を経験することになった。



今回は、NYU Stern School の石原さんとの共同研究を、石原さんが流暢かつ畳み込むような英語で報告した。この研究では、期間限定ビールの導入が、当該企業(あるいは市場全体)にどのような影響を与えるかを、スキャンパネルデータを用いて分析した。期間限定ビールが共食いにならず、需要を全体に拡大しているかどうかがポイントである。



中国で開かれたということもあり、中国だけでなく、世界の中国人マーケティング研究者が訪れていた。このところ北米で開かれた会議でも、中国系の研究者・学生が非常に目立つ。今回は当然それ以上に多い。彼らは若いので、これからもこの傾向は続くだろう。日本人は少数だが、それでもふだんの会議よりは多くの人が出席していたようだ。

毎回そうするのだが、プログラムをキーワード検索して、聴講する発表を探す。agent-based modeling/simulation、complex(ity) science、complex network といったキーワードは全くヒットしない。それどころか、noncompensatoryとかdecoy effectとかもゼロ。つまり、標準的な理論や手法に楯突くような研究が皆無になったのである。

マーケティング研究者の全体的な関心がそのように変わったのか、今回構成比が多かった中国人研究者がとりわけそうなのか、非標準的な理論・方法に興味を持つ欧米の研究者は中国まで行く動機を持ちにくいのか、それとも今回たまたなそうなったのか、よくわからない。いずれにしろ、こうした変化は自分にとっていささか寂しいことである。

一方、オンライン、デジタル、モバイル、オムニチャネルといった話題はさかんに取り上げられていた。そのために企業からデータを入手したり、協力を得てフィールド実験を行ったりしている点は素晴らしい。日本にもそうしたデータはあり、独自に分析されてもいるはずだが、マーケティング・サイエンスとの接点は強くない印象がある。

最後のディナーで、新たなフェローが選ばれたりしていたが、フェローにおけるアジア系はインド人だけで、研究者の数が増えている中国人にもまだいない(時間の問題かもしれないが)。日本人についてはどうなのか・・・日本はそもそも層が薄いから仕方がないと思うが、いささか寂しい。特に海外で活躍する日本人研究者に期待したい!

さて、私は2日目あたりに喉が痛くなり、風邪を疑ったが、どうも症状が違う気がする。似たような症状を訴える人も何人かいて、大気汚染の影響かもしれないと考えた。タクシーに騙されただけでなく、なかには脅された人までいて、緊張感のある街であった。会場でも街中でも、いまさらながらチャイナ・パワーの凄さを実感した。



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