長崎での集中講義を終え,佐世保,西海,平戸などを回る。四方を山に囲まれ,狭隘な陸地に押し込められた人々の眼前には,広大な海が広がっていた。その向こう側にある中国や朝鮮とは,侵略を含む様々な交流が行われ,15~6世紀にはポルトガルなどヨーロッパへの窓口になった。そして鎖国時には,オランダとのパイプを唯一維持する場。長い間,異文化を吸収し,かつ厳しい排除する最前線となってきた。
「隠れキリシタン」の歴史は,日本史のなかでも異彩を放っている。思想や信仰のために命を賭け,激しい弾圧に耐えるという事例は,戦時中の日本にもあったし,他にもあっただろう。しかし,それを一般庶民が数百年も続けるというのは信じ難いことだ。日本人は強い信念やイデオロギーを嫌い,一神教ではなく多神教,アニミズムだという,よく聞く通念とは一致しない。
安倍首相の突然の辞任のあと,後継総裁は圧倒的に麻生太郎氏が有利かと思いきや,一日で「空気」が変わって,自民党内で福田康夫氏への雪崩現象が起きた。読売新聞の世論調査では「自民党総裁に相応しい」のは福田氏だという回答が58%に及び,雪崩は一般有権者も巻き込みつつある。山本七平の有名な『「空気」の研究』が分析したような,「通念」どおりの日本人の姿がここにある。
長崎でのキリシタン弾圧をめぐっては,遠藤周作の小説『沈黙』が有名である(マーティン・スコセッシが映画化するという)。原作は信仰の問題に光を当てているが,長崎の漁村や海を見て感じたのは,生態学的とでもいうべき視点からも,あえて「空気」に身を委ねなかった人々の歴史を理解できないかということ。そして,現代の日本社会を生きる上で,「空気」を超越した空間―無限の彼方まで広がる「海」のような場が何か必要だと感じる。
「隠れキリシタン」の歴史は,日本史のなかでも異彩を放っている。思想や信仰のために命を賭け,激しい弾圧に耐えるという事例は,戦時中の日本にもあったし,他にもあっただろう。しかし,それを一般庶民が数百年も続けるというのは信じ難いことだ。日本人は強い信念やイデオロギーを嫌い,一神教ではなく多神教,アニミズムだという,よく聞く通念とは一致しない。
安倍首相の突然の辞任のあと,後継総裁は圧倒的に麻生太郎氏が有利かと思いきや,一日で「空気」が変わって,自民党内で福田康夫氏への雪崩現象が起きた。読売新聞の世論調査では「自民党総裁に相応しい」のは福田氏だという回答が58%に及び,雪崩は一般有権者も巻き込みつつある。山本七平の有名な『「空気」の研究』が分析したような,「通念」どおりの日本人の姿がここにある。
長崎でのキリシタン弾圧をめぐっては,遠藤周作の小説『沈黙』が有名である(マーティン・スコセッシが映画化するという)。原作は信仰の問題に光を当てているが,長崎の漁村や海を見て感じたのは,生態学的とでもいうべき視点からも,あえて「空気」に身を委ねなかった人々の歴史を理解できないかということ。そして,現代の日本社会を生きる上で,「空気」を超越した空間―無限の彼方まで広がる「海」のような場が何か必要だと感じる。