東京との往復の間に上杉隆『官邸崩壊』を読む。安倍氏とその側近たちを中心に,有力な政治家やマスコミ関係者も加わって,人間くさいドラマが進行する。つまり,自己顕示欲,嫉妬,恐怖心といった様々な感情が渦巻いて,順風満帆に発足したチームが崩壊していく様が描かれている。本書の結論を今風にいえば,首相も側近も周囲の「空気が読めなかった」(=KY)のが最大の問題であった,ということになる。だから,これは組織の「KY理論」を唱える書物なのである。ただし,そこから得られる教訓が,組織で何かを行なうには,様々な利害関係者との調整を十全に行ない,摩擦を最小化すべきだということだけだとしたら,あまりに悲しい。