Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

コカ・コーラの新調査手法

2007-04-03 23:13:59 | Weblog
3/23付の日経MJに「コカ・コーラ 消費者調査に新手法」という記事。コカ・コーラグループは,世界40ヵ国で Consumer Beverage landscape (CBL)と呼ばれる手法を展開しているという。年に複数回,数千人規模のネット調査を行ない,対象者が1週間,1日24時間当たりに飲んだ飲料すべてについて,それぞれの購入・飲用場所,購入動機,飲用時の気分などを聞く。これを社会心理学の枠組みを使って,19個のニードステーツ(飲用動機)に対応させるという。

状況やシーンに応じた気分・動機を調べる類の調査は,すでに多くの取り組みがあるとは思うが,これだけの規模で実施しているのはさすが,というべきだろう。調査方法,ワーディング,集計・分析手法等にどういう工夫があるのか興味深いが,肝心の部分は当然企業機密となる。学術研究としては,Allenby たちが motivating conditions と選択モデルを結びつける研究を行なっている。

この種の調査で気になるのは,今朝,駅で缶コーヒーを飲んだときどんな気分だったかを,どこまで正確に思い出せるかである。もしかすると,こういう状況ではこんな気分だろう,というステレオタイプを聞いているだけではないのか。だが,それはそれでマーケティング上役に立つ情報かもしれない。つまり,それがその人の規範となっているとしたら,それをコミュニケーションで訴求すればよい,とか。

消費や生活の行動を多面的に捉えようとする試みはこれからも続くだろう。事後的に回顧され言語化・数値化された情報だけでなく,その瞬間の生理的な反応,はたまたコンテクストから解釈するしかない振る舞いまで,一つの行為に対して可能な情報をすべて集めたとき何がわかるか。今日の打ち合わせとも,つながる話である。