HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

5 - 1 = 0

2015-08-31 00:12:41 | 日本のロック・ポップス

あいつ夏、もといあつい夏が一段落したので、録りためたままで未見だった
ドラマ「風のなかのあいつ」を3日かけて全て見た。主題歌を沢田研二が歌い
主演が萩原健一というのも凄いのだが、ショーケンの子分役で大口広司が出ているのが
PYGファンには嬉しいところ。おお、PYGの1/3。(笑)

そしてスカパーのTBSチャンネルで「悪魔のようなあいつ」の再放送が始まったので
またまた見始めてしまった。以前、DVDに焼いたものを頂戴したことがあるのだが
今回はブルーレイに焼いて保存しよう。これは沢田研二主演で同僚に、ここにも
大口広司。岸部修三も出演しているので、おお、PYGの1/2(笑)が揃う。
両方のドラマに共通して出演しているのは安田道代。好きです。(笑)

ショーケンと大口広司絡みと言えばPYG以前のテンプターズを忘れてはいけない
というわけで、掲載写真はテンプターズの2枚目のアルバム「5-1=0 テンプターズの世界」。
全曲オリジナル(洋楽カバー無し)というのが特筆すべきところか。
3枚目のシングル『エメラルドの伝説』から5枚目のシングル『純愛』の両面を全て
収録しているので、リアル・タイムで購入した人にはお得感が無いと感じた人も
いたかもしれないが、それが商売というものである。

6枚目のシングルにして大傑作の『雨よふらないで』はバージョン違いでの収録。
テンプターズといえば、世間ではショーケンのことばかりが云々されるが、ロック者と
してはギタリストでボーカリスト、優れたコンポーザーである松崎由治の存在あっての
テンプターズであることを意識せざるを得ないアルバムである。

ミディアム・テンポのサイケ・ナンバー『テル・ミー・モア』やゾクゾクするような
リフが堪らない『秘密の合言葉』、台詞入りのクラシカルな『宮殿に通ずる長い橋』
ビートルズ・ファンも思わずニヤりとするであろう『きどったあの娘』と、様々な
スタイルの曲を書き分けるセンスには恐れ入る。ドラマーの大口に1曲歌わせる
というのも、ビートルズを意識しての所作であろう。

テンプターズの大箱が出たけれど、全てアルバムは持っているしコンプリート・
シングル集もあるので、アレは買わないことにした。
もう少し安ければ考えたのだけど。

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3 + 3 = ∞

2015-08-30 00:27:54 | SOUL

         

掲載写真左はアイズリー・ブラザーズの23枚組CDボックス「THE RCA VICTORS
& T - NECK ALBUM MUSTERS」。59年から83年までの活動のうち、モータウンに在籍した時代を含む
62年から67年にリリースした4枚のアルバムは収録されていない。

ビートルズのカバーで知られる(という表現も変な感じだが)『TWIST & SHOUT』を収録した
同タイトルのアルバムや、モータウンでの『THIS OLD HEART OF MINE』を収録した
同タイトルのアルバムが含まれていないということなのだが、それらは今も
単体で廉価で入手できるので、この箱を手にするような人には特に不満も無いだろう。

世間の大方の評価に漏れず、彼らが自身のレーベルであるT - NECKの配給権を
ブッダからCBSに変更した73年から78年辺りの時期のアルバムが好きである。
そうはいっても、83年に出た「BETWEEN THE SHEETS」の艶っぽさも好きで
あれを実用(笑)した人もいるのだろうな、などと今更のようにニヤける。

83年盤の後にメンバーは分裂しボーカル組と演奏組に分かれてアルバムを
出し続けるのだが、今回のボックスで美味しい処のほぼ9割は手に入るという
考えに異論は少ないだろう。ボーナス・トラックの数が84曲(!)というのも
素晴らしく、数年前のニルスンのボックスを想起せずにはいられない。

今回の箱の最大の目玉は掲載写真右の「WILD IN WOODSTOCK」と題された
ベアズヴィル・スタジオで80年に録音されたスタジオ・ライブ盤であろう。

ヒット曲にヒット・アルバムを出すことを会社に要求され続け疲弊が始まった時期に
ライブ・アルバムを出して時間稼ぎをしようという考えが前提にあったものの、
様々な音楽的要素のコントロールがし易いスタジオで過去曲の生演奏を収録して
後から歓声を被せるという案の下に録音されたのが「WILD IN WOODSTOCK」。

会社から却下されリリースは見送られた音源だが、歓声を被せることもなく
スタジオ・ライブの形式で録音されたこのCDから飛び出る音は新鮮で緻密。
アイズリーズの演奏の上手さ、歌唱の上手さに改めて感動する。勿論曲の良さにも。
全12曲中、半数以上の曲が過去に何らかのボーナス・トラックで既出であるが
未発表テイクを加えてまとまった形で出たことの意義は大きい。

余り気乗りがしなくて、今まで聴いてこなかった(今回初めて聴いた)ジミ・
ヘンドリックスとのセッションを収録した「IN THE BIGINNING」も個人的に
今だから楽しめるという感じで、今回聴くことができてよかった。

「THE ISLEY BROTHERS LIVE AT YANKEE STADIUM」と題されているものの
肝心のアイズリーズは17曲中4曲しか歌っていないというライブ盤も、こんな
機会でもないとなかなか出会えない。
79年から81年あたりの盤を聴くのも初めてだったので、私には本当に便利な
一組となった。

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YOU CAN MAKE ME DANCE , SING OR ANYTHING

2015-08-29 08:21:32 | ROCK

掲載写真はフェイセズの5枚組ボックス「1970 - 1975 YOU CAN MAKE ME DANCE
SING OR ANYTHING . . . 」。CDサイズのコンパクトな箱に入って実に可愛らしい
装丁である。

4枚のオリジナル・アルバムに、シングルのみの曲とそのB面収録曲を集めた
「STRAY SINGLES & B - SIDES」と題された1枚で構成される。シングル集に
収録された9曲は何れも初CD化ではなく、全て04年の4枚組「FIVE GUYS
WALK INTO THE BAR . . . 」に収録されている。

しかし、4枚のオリジナル・アルバムには計17曲のボーナス・トラックが含まれ
そのうち15曲が初登場音源。残りの2曲は12年に出た2枚組ベスト盤「STAY
WITH ME : ANTHOLOGY」で初登場した70年のフィルモア・イーストでのライブ。
そうすると、「STAY WITH ME : ANTHOLOGY」に収録されて今回の箱から
漏れた同日のライブ曲『GASOLINE ALLEY』の存在がクローズ・アップされるわけで
勿体ぶらずにこれも収録して欲しかった。

それでもスタジオ・アウトテイクやリハーサル音源が少量であるものの発掘された
こと、BBC音源が小出しにされたことで数年後にもう一度編まれるであろう(笑)
組物への期待が高まる。BBCライブはブートレグでは年代を超えて数回分の
演奏を聴くことができるので飢餓感は無いが、スタジオ・アウトテイクの類への
興味は尽きない。

各アルバムは紙製であるが、数年前に出た日本製紙ジャケCDの出来には到底
及ばない。この箱の登場で高品質のレプリカを所持しているという満足感だけの
ために日本製紙ジャケCDを持ち続けることになるが、それもまたいいだろう。

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YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN - 54 & 55

2015-08-25 00:26:19 | 日本のロック・ポップス

前回の「YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN」シリーズでは#79と
#80で同時に一人&一組の女性たちをとりあげた。これはその時にボブ・ディランの
『RAINY DAY WOMEN #12 & #35』が流れていたから(笑)に他ならないのだが
今回もそういった趣で・・・。

掲載写真は杉本美樹と池玲子の映画に於ける全歌唱を収録したとの触れ込みのCDで
その名も「杉本美樹VS池玲子 女番長流れ者 / ふうてんぐらし」。全23曲中、
杉本の歌唱は4曲、池の歌唱は3曲のみであとは劇伴で構成されている。だからといって
このCDに不満なわけではない。

両者が同時主演デビューした71年の「温泉みみず芸者」からのトラックがあるし、
この手の作品に欠かせない荒木一郎が音楽を担当した「徳川セックス禁止令 色情大名」
からのトラックもある。二人最後の共演となった73年の「前科おんな 殺し節」の
主題歌は池の歌唱だから収録されて当然で、二人が関わった映画の「音」として美味しい
ところはほぼ収録されているのではないだろうか。

ところで、私がこんなCDを所持しているのは前提に彼女たちが出ている映画にそれなりの
インパクトを感じ、彼女たちにそれなりを超える魅力を感じたからに他ならない。
個人的な趣味を書かせていただければ、杉本美樹のほうが好きである。
ほら、私はドMだから。(真偽は定かではない。笑)

杉本の映画で一番印象に残っているのは74年の「0課の女 赤い手錠」である。
登場人物は、どいつもこいつも腐れ外道。その中にあって何があろうと女の強さと
したたかさを見せつける杉本に圧倒されたものだ。脇役での出演であった「祭りの
準備」での原田芳雄との絡みも印象的で、その設定のいやらしさに見入ってしまった。

池玲子の方は歌手宣言をしたこともあるだけに71年に「恍惚の世界」という
フル・アルバムを残している。これはなかなか強力なジャケットと中身で持っている
だけで家族が眉を顰めるのは間違いない。

それはともかく、ポルノという言葉をキャッチ・コピーにあてがわれた当時まだ10代の
二人が放出した熱量こそ、今の日本の映画界や歌謡界に欠けているものかも知れない。
アンダーグラウンドなレベルでは、それを上回る作業は行われているのだろうけど、
娯楽のド真ん中で行うにはレベル・オーバーだろうし、そんなものはもう求められて
いないのかもしれないけど。

太陽ギラギラ・・・である。

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YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN - 53

2015-08-24 00:36:14 | ROCK

「イロナ・スターラって誰?」と聞かれても「さあ?」としか答えることしか
できないが「チッチョリーナって?」と聞かれれば、これは答えることができる。(笑)

掲載写真は後にイタリアで政治家となり国政に進出したイロナ・スターラこと
チッチョリーナが出演したイタリア映画「チッチョリーナ・マイ・ラブ」のサントラCD。
83年の映画で邦題のサブ・タイトルに「エーゲ海に捧ぐバラード」とあるのは
79年の日伊映画「エーゲ海に捧ぐ」に彼女が出演していることを踏まえての所作で
あるのは言うまでもない。

イタリア映画のサントラなので、如何にもそれっぽいスコアが並んでいるのだが
このCDにはチッチョリーナが歌うレイフ・ギャレット・カバー『I WAS MADE FOR
DANCING (ダンスに夢中)』が冒頭に、同曲のロング・バージョンが最後に収録されている。
この曲をチッチョリーナが吹き込んだのは79年なので、直接サントラには関係
ないのだろうが、これでお手軽に彼女の歌を聴くことができるというわけだ。
(聴きたければ、の話だが。)
まあ、なんてことないカバーだが絶妙のジャケットで7インチが切られていて、その時に
使用された写真はCDのリアジャケットに使われている。

「ポルの映画の女優が政治家になれるというのはイタリアらしいな」なんて、イタリア
らしいところに何の根拠もないのに妙なところに感心したのが80年代の終わりころ
であったが、思えば日本でもプロレスラー(当時、心酔していました。笑)が政治家に
なったのがこの頃である。これも「日本らしいな。」なんて他の国から思われていた
りして。(笑)

実のところ、彼女が出ている映画は「エーゲ海に捧ぐ」を含めて何一つ見ていない。
しかしながら、時折見たテレビのニュースやグラビアに写るチッチョリーナは
性を売り物にするというより、女であること或いは性そのものを楽しんでいるようで
とてもこういう人には敵わないと思ったものだ。

まあ、そういう人なので彼女が吹き込んだレコードには、もっと凄い(笑)のが
あるようだが、なかなか簡単には見つからない。いつかまとめてCD化してくれると
助かる(笑)のだが。

そういえば、『I WAS MADE FOR DANCING』は79年にピンク・レディーが
カバーしている。両者ともオリジナルが流行った年に間髪入れずにカバーしたことに
なるのだが、そんなことよりもピンク繋がり(笑)でまとまめてこの稿を終わらせる
ことに気付いたことが無性に嬉しいのであった。(笑)

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ALL BY MYSELF

2015-08-23 00:48:45 | ROCK

       

今の御時勢では余り顧みられることの無い初期のブルーズやロックンロール、ポップスの
アルバムをCD化してくれる「オールデイズ・レコード」。有り難いのだが、アルバムの
オリジナル・ジャケットが改変されるのが個人的には玉に瑕。

掲載写真右は「オールデイズ・レコード」が本年5月にリリースしたジョニー・バーネット
&ザ・ロックンロール・トリオの唯一のアルバムのCD。オリジナル盤収録の12曲に
5曲のアルバム未収録曲がボーナス・トラックで収録されている。

で、該当盤のリリースがアナウンスされてすぐに、大手のユニバーサル・ミュージック
から掲載写真左の盤の発売アナウンスがあった。こちらは7月の発売。ボーナス・
トラックは無く値段はこちらのほうが高い。しかし、ジャケットは改変が無くオリジナル
通りである。

結果として私はユニバーサル盤を購入した。しかし、何故こんなことが起こるのだろう。
同時に違う会社から同じタイトルの盤が出ること、片方はジャケットが改変されている
こと・・・。同じジャケットで出せない(出さない)理由があるのか・・・・。

いろいろと考えさせられるが、どちらを選んでも中身の価値が変わるわけもないので
オリジナル通りのジャケットで出るなら、それを優先させたいという気持ちのほうが
収録曲の多さや値段設定より勝った。「配信とかデータとかでなくフィジカル優先」
という気持ちは常にあるのだが、フィジカル優先ならフェイク(というのも
忍びないが)よりオリジナル優先である。

タイニー・ブラッドショーの曲である『THE TRAIN KEPT A-ROLLIN'』が今に
至るまでスタンダードになったのはここで聴けるジョニー・バネット・トリオの
カバーが礎なっていることを確認するいい機会であるし、ロバート・ゴードンの
カバーで聴き馴染のある『ROCK BILLY BOOGIE』のオリジナルが収録されているのも
この盤であるので、多くの人が耳にする機会があれば良いと思う。

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REGGATTA MONDATTA

2015-08-22 08:29:22 | REGGAE

       

13年8月の当ブログでレゲエ・ミュージシャンによるグレイトフル・デッド・
トリビュートを取りあげたが、今回は同趣向のポリス・トリビュート盤。

デッド・トリビュート盤は96年と97年にリリースされたのだが、おそらくはその
企画が当たったことを受けて製作されたであろう、掲載写真の2枚は97年に最初の
1枚が、翌年に続編がリリースされた。

ポリスのセカンド・アルバムは「白(白人)のレゲエ」をタイトルとしたものだった
ことを例えに出すまでもなく、初期のポリスはレゲエを取り入れたリズムの曲を
多く世に出した。それを本家本元のレゲエ・ミュージシャンがカバーするというのは
何とも面白い。

デッドの時と同じく参加した面子は豪華。マキシ・プリーストやシャインヘッド、
ビッグ・マウンテンといった80年代後半以降に人気を博したミュージシャンが
参加しているのが「時代」を感じさせる。アスワドやスティール・パルス、サード・
ワールドにインナー・サークル、トゥーツ&ザ・メイタルズといったロック者にも
通りの良い名前もある。

一際渋いのがビム・シャーマンが歌う『BRING ON THE NIGHT』で、エイドリアン・
シャーウッドのミックスの冴えが控えめなダブの要素と相まって秀逸。

ポリスの一番売れたアルバムは多分83年にリリースされた最後のオリジナル・アルバム
「SYNCHRONICITY」だろう。件の盤を名盤と持ち上げる向きが多いが、個人的には
全くそうは思わない。個人的にアルバムを聴く時もほとんどがB面だけを聴いて終わる。
スロー・テンポの曲が苦手な私であるが、アルバム「SYNCHRONICITY」はB面を
聴くための盤だと思っている。勿論わざと極端な書き方をしている(笑)のだが。

今回の2枚のトリビュート盤に収録されたポリスの曲は21曲(スティングのソロが
1曲あるので2枚合計で22曲収録)なのだが、アンバランスなことに「SYNCHRONICITY」の
A面収録曲はカバーされていない。『WALKING IN YOUR FOOTSTEP』あたりは
取り上げられても良さそうだが、結果はこうである。
ま、その話はいいか。(笑)

2枚ともレゲエであることが一目でわかる秀逸なジャケットであるのが良い。
中古で安く見つけたら(私です)その時は是非。今更のようにポリスっていい曲が
多いなと思う晩夏の候・・・・。

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YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN - 52

2015-08-19 00:04:42 | 日本のロック・ポップス

真夏の夜のロック第三夜。

今年のROCK IN JAPANは8月1日(土)に参戦したのだが、もしこれが8月8日
だったら、どうしただろう。当初はグラス・ステージにユニコーンが登場する予定で
あったので、順当にいけばそっちを見ただろうが、同時間にあまり大きなキャパを
要しないウィング・テントに素晴らしいバンドが出たのだ。まあ、その日見に行かな
かった」のだから何の話をしているのやら、なのだが。(笑)
もし、見に行ったとしたらユニコーンが出ないのが確定していたので行動は
自ずと決まったであろうが。

ウィング・テントに登場したバンドとは、北海道の女性5人組「Drop's」である。
掲載写真は彼女たちのメジャー3枚目のアルバム「WINDOW」。3枚目だから
このCDは特殊ジャケットでクルクルと円盤が廻る仕様になっている。
3枚目だから。「Ⅲ」だから。(笑)

メジャー展開するバンドで、この音はちょっと類を見ない。失礼を承知で書けば
演奏しているのは若い女の娘たちであるのにも驚く。重く引き摺るようなブルーズ、
横にも縦にも揺れるロック。フェンダーとギブソンの音を上手く使い分けた二台の
ギター、フレーズの豊かなベース、絶妙のタイム感をキープして重いスネアの一発を
叩きだすドラムス、そこに彩を添えるキーボード。一体どのような学習や体験を
すればこの若さでこの次元に到達できるのだろう。

たまたま、それを可能にしたメンバーが同じ高校の同級生であったというのは
ある種奇跡のようにも思えるが、伝説的なバンドにはそういった話は古今東西を
問わず、必要であり必然なのだ。

ボーカルが異様に大きくミックスされているような気がしないでもないが
そのごつごつとした感じが、また新鮮に思える。

今の日本の音楽界を取り巻く状況を思えば、彼女たちがテレビで歌って一夜で
大きな支持を得られるかと言うと、それは難しいだろう。何しろ何十年もの間、
聴き手は売り手(演じ手ではない)の思惑通りに動かされ考えることも無くそれに
慣れきっているのだから。

しかしながら、Drop'sの音を回顧主義の年寄の賞賛だけで終わらせるのはあまりに
勿体ない。できれば彼女たちと同世代或いはそれ以下の年代に熱烈に支持して欲しい。
それが今後の良質な日本のロックの未来に繋がるような気がするし、Drop'sの
音にはそれを期待させる何かがある。

オリジナル曲の数々が素晴らしいのは当然として、カバー曲でその確かな歌唱力と
演奏能力を確認することもできる。

  アルバムに先駆けてリリースされた
シングル「未来」のカップリングで収録されたキャロル・キング・カバー『YOU'VE
GOT A FRIEND』は実に素敵なカバーであった。

日本のロックの歴史に於いて、私が気になった女性だけのロック・バンドは
タイプは全く異なるがオリジナル・メンバー時の少年ナイフ以来である。

この事実だけで十分だろう・・・。

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LIKE A STONE ROLL ON YOUR MISSION

2015-08-18 00:03:21 | ROCK

昨日に引き続き第二弾。真夏の夜のロックである。

掲載写真はヴィンテージ・トラブルの二作目にしてメジャー第一弾となる「1 HOPEHUL
RD . 」日本盤には「華麗なるトラブル」なる邦題がついている。

実は私がヴィンテージ・トラブルの名前を知ったのは、13年にローリング・ストーンズが
ハイド・パークで行ったコンサートのDVDを購入した時に添付されていたライナーを
読んだことがきっかけである。人によっては「遅っ!」と言われそうだが(笑)、前座で
登場した彼らを「初期ストーンズに通じるR&Bスタイル」と紹介してあり気になったと
いうわけである。

彼らが11年に出したファースト「THE BOMB SHELTER SESSION」は街角を
歩く写真が格好良くCDを出すべく見開きジャケットを開くとそこにはドアーズの
1STのリア・ジャケを今風にしたような写真。もう聴く前からキマったようなものだ。
実際、そこにはロックとソウルが美しく邂逅した音が詰まっていた。

そして彼らはブルーノートと契約する。あのブルーノートである。ノラ・ジョーンズや
スザンヌ・ヴェガが所属しているものの、未だに私にはジャズのレーベルとしての
印象が強く残っている。そこへ遂にロック・バンドが在籍するというのは何とも
時代は変わったものだと思わずにいられないのだが、そこは同時にブルーノートの
社長であるドン・ウォズの存在を強く意識させるものでもあった。

今作はそのドンがプロデューサーも務めた。演奏は全て一発録り。ライブに定評が
あるヴィンテージ・トラブルの良さを上手く活かした録音である。何度も練りまわす
うちに鮮度が落ちるのを防ぐべく短期間で録音し、それをドン・ウォズ特有の
空間の広がりと暖かみのある音に整音したのだから、録音物としての完成度は高い。

勿論、内容は推して知るべし。ロックのマナーにソウルのマナー。それが時代に
よってどう変わろうと王道というべきものはある。過去の焼き直しと切り捨てるのは
簡単だが継続して伝承しなければいけないパターンというものがあるわけで
彼らはそれを、かつてのジャズの名門レーベルで実践しようとしている。

これが私にとって面白くないわけがない。
かつて「VINTAGE VIOLENCE」を聴いた人が名前に惹かれて聴いてみた、なんて
ことがあったら、そして気に入ったら面白いな、とも思う。
ここにも古くて新しいロックが・・・。

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LIFE IS THREE STREETS AND A VILLAGE GREEN

2015-08-17 00:04:29 | ROCK

今年7月の当ブログに書いた、『私が気になっている「今のバンド」の新譜』を
3連発でお届けするその第一弾。まずはストライプスの登場である。

13年にリリースされたファースト・アルバム「SNAPSHOT」はDVDが添付されて
いる日本盤CDを買ったのだが、CDに収録された曲は元より映像を見て即座に
彼らはドクター・フィールグッド直系のロック・バンドだと了解した。

ポール・ウェラーやロジャー・ダルトリーが絶賛する理由もわかるというもので
自作曲は先達の残した遺産を発展させて今に繋げる音であり、その歌詞も16歳の
若者が書いたとは思えない社会派な側面を持つ。

カバーの選曲も渋く数々のブルーズ・ナンバーに加えてニック・ロウの曲まで
取りあげている。一体、彼らはどこでそんな情報を仕入れてきたのだろう。

今年もらった年賀状の中に面白い一文が添えられているものがあった。
学生時代のバンド仲間で今は教師をしている男からの一枚であったが、そこには
こんなことが書いてあった。

「Strypesって知ってる?生徒に教えてもらったんだけどこんなハリーっぽいのが
今のUKにいるとは」

生徒と旬のロック・バンドの話が出来るというのは素敵なことだ。私が高校生の
時にそんな話が出来る先生はいなかった。彼に教えてもらっている生徒が羨ましい。
それにしても彼が私との思い出をそんなふうに美化して記憶してくれていると
いうのも何だか嬉しい。確かに当時の私は(自称)一本気なロックンローラー(笑)
だったのだ。(更に笑)

掲載写真はストライプスのニュー・アルバム「LITTLE VICTORYS」。前作より
メロディー・ラインに磨きがかかり、リズムのニュアンスはバリエーション豊かに
様々な曲調を演出する。アイルランド出身故の深刻な社会問題に触れた歌詞を
含め、前作で既に感じていたはずなのにまたしても「これでまだ10代か」と
感心してしまう。

前作と違い、強烈なオリジナル曲でアルバム本編は完了するのだが、日本盤には
MC5カバー『KICK OUT THE JAMS』が収録されている。オリジナルや数多ある
カバーに収録されている冒頭にがなられる有名な一節が省略されているのが
私には清々しくさえ思えた。

ストライプスはこの先も若者を魅了し続け、爺を感心させるアルバムを作るだろう。
その時には彼らにとって何の意味もない「10代」という文言は取り払われて
いるだろうけど。

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POOR BOY

2015-08-16 00:25:28 | ROCK

ウィリー&ザ・プア・ボーイズという名前はクリーデンス・クリアウォーター・
リヴァイヴァルのアルバム・タイトルで、名曲『DOWN ON THE CORNER』に
その名が歌いこまれていることは高校1年の時点で知っていた。81年に高1の
若者がCCRを聴くなんてことは、当時格好いいことでも何でもなかったが、そんな
ことは関係なくCCRは好きなバンドであった。

それから4年後の85年、ウィリー&ザ・プア・ボーイズをバンド名に持つグループが
登場した。ロニー・レインが冒された難病である多発性能脊髄硬化症の研究機関である
ARMSへのチャリティー・プロジェクトのためのバンドなのだが、その主催者がビル・
ワイマンさんで、チャーリー・ワッツさんも参加しているとなれば、駆け出しの
ストーンズ・ファンとしては押さえなければならない1枚であった。

当時の日本盤LPのライナーにはジェフ・ベックやクラプトン、ピート・タウンゼンド
が参加した続編の予定があると書かれていたが、実現はしなかった。
それはさておき、プア・ボーイズのアルバムには魅力的なゲストの名前があった。
それがポール・ロジャースとジミー・ペイジであった。

ポールが歌いジミーがギターを弾くアルバム3曲目に収録されたオーティス・
レディング・カバー『THESE ARMS OF MINE』を聴いたときは何だか物凄く嬉しい
気分になったものだ。そしてMTVで偶然にもそのPVを見てしまい、その夜は
頭の中で何度も見たばかりの映像を反復再生したものだ。(笑)

掲載写真はウィリー&ザ・プア・ボーイズが発表した同名タイトルのアルバムと
92年に録音されたライブ盤に当時はVHSで発売され後に単体DVD化もされた
「WILLIE & THE POOR BOYS THE MOVIE」を一まとめにして廉価で再発した
3枚組「THE COMPLETE WILLIE & THE POOR BOYS」。

DVD化された際に「THE MOVIE」には既にボーナス映像としてメイキングが
収録されていたが、今回の目玉はズバリ『THESE ARMS OF MINE』のPVが
初めて公式に商品化されたことであろう。私はこれ目当てで本作を購入した。

まだ若いのに腹回りに貫禄のあるポール・ロジャース、テレキャスターを弾く
ジミー・ペイジ、ビルとチャーリーにロン・ウッドも参加しての豪華な面子での
PVをやっと手元に保管できるというその一点に浪漫を感じるのは、単に私が
10代の時の思い出に浸っているだけなのだが、それでも個人的にこれは嬉しい
出来事なのだ。画質はドンピカではないがYouTubeに上がっているものなどとは
比べものにならないのは確かである。

オリジナルのLPが発売された時にはろくなクレジットが無かったが、今回は
各曲に参加したメンバーの詳細なクレジットがあるのも嬉しい。

それにしても先日発売されたビル・ワイマン・ボックスと合わせて、このタイミングで
プア・ボーイズのボックスがリリースされるとは・・・。

世界はビルを待っている。(笑)

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戦慄の蠍団

2015-08-15 00:05:50 | 日本のロック・ポップス

掲載写真はROLLYが発表したアルバム「ROLLY'S ROCK CIRCUS」。ROLLYが
影響を受けた70年代の日本のロックの楽曲をカバーしたアルバムである。
かつて四人囃子や、はっぴいえんどのカバーを発表したことがあるのだが、果たして
今作は如何に。

この類のアルバムは肩肘張らず、目くじら立てず楽しんだもの勝ちである。
勿論、ROLLYのキャラクターや嗜好に趣向を了解し、尚且つここに収録された
元歌を何曲好きかで、楽しみ方の幅も違ってくる。

「あの曲じゃないだろ。演るならアレだろ。」とか「この曲はもっと重くしたほうが・・」
なんて思うこともあるだろうが(ハイ、個人的嗜好でそう思う瞬間がありました)
ここは、軽くてキュートで本格派のROLLYを満喫する方が得策のようだ。

外道の『ビュン・ビュン』で文字通りブッ飛ばし、普段からFTB(石間ヒデキ)好き
を公言するだけあって、『メイク・アップ』でハードに迫る。『タイムマシンに
お願い』では途中に『SUMMERTIME BLUES』を彷彿させる遊びも盛り込んである。

フライド・エッグの『サムデイ』を選ぶのは、何となくお洒落に思える。再び挑んだ
はっぴいえんどカバーは『花いちもんめ』。鈴木茂の曲を選ぶところも今の私には
極めてお洒落に思える。ギタリスト同士ということを抜きにしても、個人的に実に
爽快な気分にさせてくれる選曲と演奏である。『花いちもんめ』から四人囃子の
『空と雲』へと繋がる流れは実に気持ちのいいものだ。

ジュリーの『気になるお前』は、シングル『胸いっぱいの悲しみ』のB面曲であるが
今回のクレジットに書かれてあるように、ROLLYはハルヲフォンの「電撃的東京」に
影響されたということなのだろう。思えば、あの盤も凄いアルバムであった。
実はムーンダンサーというバンドを知らなかったので、勉強になりました。

全編に亘りROLLYの歌唱はくどさ(笑)とねちっこさ(笑)のオンパレード。
チョーキングの伸ばし具合も幾分長めのシーンが続出で、これぞROLLY。(笑)

次はTHE 卍で新譜を出すことを期待します。

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YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN - 51

2015-08-14 21:49:57 | 日本のロック・ポップス

私の実家は愛媛なのだが、今年は何故だか急に懐かしいうどんが食べたくなって
帰りに高松に寄った。瀬戸大橋ができるまでは本州と四国を結ぶ交通手段として
私は宇高連絡船を利用することが何回もあったのだが、乗る度に連絡船で販売する
うどんを食べた。それほど腹が減ってなくても船に乗るとどうしても食べたくなり
その衝動を抑えることが出来たためしはない。(笑)そんなうどんを食べるために
高松へ行ったのであった。

宇高連絡船は廃線になったが、「連絡船うどん」の味を再現した店が高松駅にある。
駅構内からも入れるし、駅の外からも入れるので便利。肉うどんを食べたのだが、
あの甘い汁が、十代後半の海風に吹かれて気分に浸っていた(笑)間抜けな私を
プレイバックしてくれる。

掲載写真はP-VINEが社運をかけて贈る初のアイドル・グループとの触れ込みで
登場したその名も「うどん兄弟」のアルバム「ラスト・アルバムVOL.1」。
この6曲入りミニ・アルバムが製作された2014年当時、メンバーは中学3年生。
カーネーションの30周年トリビュート盤に参加し『EDO RIVER』をカバーしたことで
その名を知った人もいるだろう。

そのカーネーションの直枝政広や鈴木慶一が作曲に手を貸すのだから、大人の遊び
ここに極まれり。というか「うどん兄弟」の持つセンスがそれを可能にしたのは
間違いないだろう。

事実、彼女たちが作詞した曲が3曲あるのだが、その歌詞が面白く楽しい。
ラップ・ユニットを名乗るだけに、勢いのある曲に相応しい歌詞をのせる訳だが
例えば「近所のカラオケ 最高や! いつものお店にさあ!行こうや!」という
韻の踏み方がもう格好いいのだ。近頃のバンドときたらライムもできないからねぇ。

また『立入禁止』においては歌詞中に「江戸川」を歌いこむ義理堅いところも見せる。
『食欲Baby』『愛情弁当』と、子供っぽい明るさが満載なのだが、これはアイドルの
仮面なのか。この年ならそろそろ別な欲望が頭をもたげてくるのだが、そんな側面を
見たいような見たくないような、最早ほとんど保護者である。(笑)

「なぜ女の子4人組なのに兄弟なのか」
「どうして鈴木慶一が曲を書いてくれたのか」
「なぜ、P-VINEからリリースするのか」

全ての謎に彼女たちは答えてくれない。わかっているのは「うどんが好きだ」と
いうことだけである。ラスト・アルバムと銘打たれているのに「VOL.1」とも
書かれている。マニック・ストリート・プリーチャーズじゃないけれども
次作があっても怒らないからね。(笑)

さて。「うどん兄弟」というのは実はアイドル・グループ「ANNA☆S」(アンナッツ)
からの派生ユニットというか「ANNA☆S」のメンバー全員参加のユニットである。
その「ANNA☆S」が先日リリースした7インチがこれ。

  いかん。このジャケだと買ってしまうだろ。

中にはキング・クリムズンの「RED」のジャケを模したピンナップも入っている。
いかんなぁ。(笑)

ラーメンは毎日食えないが、うどんなら毎日食えることをここに宣言する。
しかし、本当にここはROCK N ROLL VILLAGEなのか?(笑)

コメント (2)
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YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN - 50

2015-08-11 00:14:48 | ROCK

        

掲載写真はエイプリル・マーチが95年にリリースしたミニ・アルバム「CHICK
HABIT」。米国の女性がロリータ物に取り組んだ画期的な1枚、なーんて言うのは
俺だけか。(笑)

タイトル曲『CHICK HABIT』はフランス・ギャルの名曲『LAISSE TOMBER LES
FILLES』の英語カバーで後に映画で使われて有名になる。同曲をオリジナル通り
フランス語でカバーしたバージョンが1曲目に収録され、英語バージョンがラストに
配されている。

収録された全8曲の全てがカバーで、ゲンスブールの曲以外ではフランソワーズ・
アルディーの『LE TEMPS DE L'AMOUR(恋の季節)』がロック者に気を惹くかも。
何せジョナサン・リッチマンがギターで参加してますから。(笑)

安手のガレージ・ポップのようで歌謡曲のようでもあるこの音はハマるとなかなか
抜け出せない。勿論、それはエイプリル・マーチ自身のルックスが可愛らしく
私が「女の子があんなことをしている。」と思っただけで嬉しくなっている頭の
可笑しな野郎だから、ということもあるけど。(笑)

で、私の課せられたミッションは彼女が88年にリリースしたプッシーウィローズ
名義でのアルバム「SPRING FEVER!」を探すことである。理由はクレイマーが
エンジニアであること、そしてキンクス・カバー『COME ON NOW』が収録されて
いることの2点。

それにしても、掲載写真右のゲンスブールになりきった写真が好きだ。

       

ギターの持ち方からして彼女は右利きだと思うが、拳銃は左手に持っている。
きっとガンを向けるのではなく、花束を先に差し出してくれるだろう。

それに引き換え、ゲンスブールは・・・・。(笑)

コメント (2)
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YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN - 49

2015-08-10 00:03:35 | ROCK

掲載写真は元スリッツのヴィヴ・アルバーティンが12年に出したアルバム「THE
VERMILLION BORDER」。もういい歳(アルバム発売時だと57歳か)であるが
ジャケット写真に写る、今まさに退屈な生活から抜け出そうとしているヴィヴは
まるで少女のようである。

スリッツはクラッシュと縁が深く、それはクラッシュの前座としてツアーを回った
とかのレベルでなく個人的な付き合いがあり、ヴィヴ自身はミック・ジョーンズと
親しく、一説では『TRAIN IN VAIN』はヴィヴとの別れを歌ったものだとも言われる。

スリッツを辞めたあとずっと普通の生活をしていて、突如音楽活動を始めるのは
勇気がいることだし、需要が無いと受け入れられないという厳しい現実とも
立ち向かわなければならない。それでもメジャー・カンパニーと契約しなくても
インディーズ・レーベルと契約しなくても、ネットで音楽を伝えられるという自由が
復帰を後押ししたというのだから、昔は如何に不自由だったかということである。

彼女の復帰を後押ししたのは旧友ミック・ジョーンズ、グレン・マトロックに
トーキング・ヘッズのティナ・ウェイマス、それに故ジャック・ブルース!の名前も
ある。ドラムスにはスティーヴ・ハウの息子ディラン・ハウも参加。各人それぞれ
1曲の参加だが、彼らの参加はそれだけヴィヴを後押ししたいという思いがあるからで
彼女も心強かったことだろう。

全てのギターとボーカルはヴィヴ自身のもので、スリッツ時代ほど混沌としていない
のはボーカリストの違い故かもしれないが、一筋縄ではいかないギターの音が
気持ちいい。仮にここで聴かれるトラックにジョン・ライドンのボーカルがのって
「PILの新作」として登場したら、大歓迎されるのではとすら思う。つまり、鋭角的で
聴く人によっては耳障りであろうが、そこが気持ちいいという複雑な構造を
持っている。

実に魅力的だ。

コメント (2)
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