HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

I'VE HAD ENOUGH

2014-07-30 20:39:02 | ROCK

今年も大物ミュージシャンの派手な組み物が数多く発売され、またこの先も
多くのリリースが控えている。以前も書いたが、価格に見合う内容であることが購入の
大前提となるので、例えば一つの箱の中にDVDとブルーレイ・ディスクが同梱されて
いたりすると、それはもう興醒めの極みであり、途端に購買意欲を失う。
豪華な本だのバッヂだのステッカーだのが添付されていても、である。

今回のザ・フーの「四重人格ライブ&モア」の特殊パッケージなんかは、その最たるもので
単純に別売りされるCDとDVDをバラで買ったほうが大幅に安い場合、いろいろと天秤にかけて
考えたものの、大箱の購入を「良し」とするわけにはいかなかった。よって、今回は
CDとDVDの輸入盤を単体でそれぞれ購入した。全く同じ理由でクイーンの「ライブ・
アット・ザ・レインボー74」も大箱の購入は見送り、単体でCDとDVDを予約した。
だってほら、限られた予算内で他にも聴かなきゃいけないブツが山ほどあるもので。(笑)

掲載写真は昨年7月8日ウエンブレー・アリーナで行われたザ・フーの四重人格全曲演奏
ツアーの最終公演を捉えたDVD。このツアーにはお馴染みのザック・スターキーや
ラビットの姿はなく、3人のサポート・キーボード・プレイヤーに2人のホーンが参加し、
ドラムスはロジャー・ダルトリーのソロ公演のツアー・メンバーが叩いている。

今更、「QUADROPHENIA」がどういう趣旨のアルバムだとか、私がどういう想い入れを
持っているかなんてことは、過去に散々書いたのでここでは書かない。
スクリーンに様々な時代のキースとジョン在籍時の映像が流れ、ピートとロジャーが
2013年に「四重人格」を演奏する、ただそれだけの映像である。

時が流れ、幾人かが去り、生存者は過去の名盤を再現する。単なるノスタルジーと受け取る人が
いても不思議でないし、「トミーを演奏しきったので、今度は四重人格を演奏し、最後の総まとめ
への準備をしている」と捉えるのも間違いではないだろう。

しかしながら、いくら年月が流れ、物質が溢れ文化が進んだとしても個人の成長過程に
於ける心の葛藤というもの、変わりなく誰しもに訪れるわけで、そういう意味合いでは
「四重人格」はオール・タイム・スタンダードとして聴き継がれるアルバムであるから、
単なるノスタルジーと捉えるのは早計である。

私にとってはノスタルジーだが、初めて「四重人格」に接する10代にとっては「リアル」
以外の何物でもないだろうから。

12年のサンディー・レリーフ・コンサートで演奏された時のように『5:15』では74年の
チャールトンでのキース・ムーンの映像と生演奏が同期される。今回もロジャーはずっと
客席に背を向け後方のスクリーンに映るキースとのジョイントを楽しんでいたようで
往年のファンには感慨深いシーンとなった。

また、ジョン・エントウィッスルのベース・ソロの映像と生ドラムスが対峙する場面もあり
こういった光景は今まで見られなかった試みとして新鮮に映った。

今後、ザ・フーは結成50周年を祝う大ヒット・パレード・ツアーを行い、ライブ・バンドとしては
一線を退くようだ。「そんなにヒット曲があったけ?」という冗談はともかく、ロジャーの声の
調子を鑑みても、もう潮時というのが正しい選択なのかもしれない。

確かに全盛期の記録とは言えないのだが、ザ・フーという苦闘のバンドの歴史を顧みる
資料は多いに越したことはない。何十年後かに、この映像を見た後追い世代に「ザ・フーは
歳をとっても凄かった。」と言ってもらえれば、長年のザ・フーのファンとして、これほど
うれしいことはない。

そんなことを思いながら映像を見た2時間であった。

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YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN - 28

2014-07-28 00:02:16 | JAZZ

昨日の続き。(笑)

掲載写真の大西順子のアルバム「WOW」が出た時のことも何となく覚えている。
ジャズ雑誌なんか読まなかったので、これもミュージック・マガジン辺りから得た情報だった
かもしれないが、とにかく絶賛だらけだったように記憶する。ジャケットに写るその人が
美しいこともあって、「そのうち聴いてみたい」と思ったはずだ。

まあ、そんなことを思いながらも93年当時の自称一本気なロックンローラー(笑)は、脇目もふらずに
ロック道を邁進していたので、この盤を手に取ることもなかったのだが先日ようやく
手にした。で、その格好よさに驚いたというわけである。って、昨日と同じやないか。(笑)

最早20年前から言い尽くされたであろうが、低音が効いた重いピアノの音に軽く眩暈を
感じる。鍵盤を叩くタッチが力強いこともあってか、これを目隠しして聴かされたらまさか女性が
演奏しているなんて思いもしないだろう。

ジャズの世界ではとっくに名声を得ている彼女ではあろうが、こういう規格外なところは
ロック者である私には好都合というか、出会えて良かったということになるのだから人の好みというのは
不思議である。

ジャズの巨人にして最長不倒のデューク・エリントンと、セロニアス・モンクに敬意を表し、咀嚼した
ものを演奏に反映させている盤を、両者をそれほど得意としない私が気に入ってしまうというのも
因果なものだ。

大西自身は12年にプロ演奏家からの引退を表明している。引退表明文からは自身に厳しいが故の
決断であることが読み取れたのだが、私の勝手な解釈だとそこには彼女の初期衝動が全て
つぎ込まれたこのデビュー盤「WOW」の存在があるのかもしれない。それほど強力な盤であると
聴くたびに思うことしきり。

また、聴き手としての私が未熟ということもあるが、彼女自身が言うような「自分の音楽が焼き直
しだったのでは」なんてことは感じはしない。なんせ、私が主戦場とするロック・フィールドは焼き直し
だらけの音楽だし。オマージュもコラージュも紙一重、妙に持ち上げられる人がいれば叩かれる
人もいる。

自分に厳しい分、その自我も大きかったはずでリーダー作よりサイドで参加した盤の演奏が
素晴らしいという人もいるわけで、ここから先は私がもっと掘り下げていかねばならない。

ピアノ・トリオに安らぎを感じるとか、寝るときはピアノ・トリオでも聴きながら、なんていうことは
私には無い。ピアノの音は耳に強烈に響き、それはディストーションを効かせたギターの比では
ない。そんな楽器を更にファットに演奏する大西順子の音楽は私に極度の緊張を強いる。
そして、私はその緊張を楽しむのだ。

緊張することを恐れてはいけない。緊張状態に慣れるようにするべきだろう。

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YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN - 27

2014-07-27 08:58:55 | JAZZ

今でも全くジャズは疎いのだが、おそらくはミュージック・マガジンか何かで見た早坂紗知&
STIR UPのアルバム「ストレート・トゥ・ザ・コア」のジャケット写真は強烈に印象に残っていた。
ジャケットに写る女性の写真を見て単純に「女性でサックスを演奏する人がいるのか。」と
思っただけなのだが。

今では女性のサックス・プレイヤーなんて珍しくもなんともないが、87年或いは掲載写真の
アルバム「ストレート・トゥ・ザ・コア」が出た89年頃は、ほとんど存在しなかったのではないだろうか。
ヴァイ・レッドのような人もいたが、日本人ということだと私には想像もつかなかった。

まあ、そんなことを思いながらも当時の自称一本気なロックンローラー(笑)は、脇目もふらずに
ロック道を邁進していたので、この盤を手に取ることもなかったのだが先日の再発を機にようやく
手にした。で、その格好よさに驚いたというわけである。

オーネット・コールマンにローランド・カークという私の好きな先達の曲を取り上げているのが
掴みとして入りやすかったし、その解釈の素晴らしさというか猛々しい感じが気分にぴったりで
何より「小洒落た」感じが全く無いのが良いのだ。

「二本吹き」ができるが故の、ソプラノからアルトへ瞬時に音を繋げる技というのはアルバムの
録音にあたってはダビングでも良さそうなものだが、それを一発でやってしまうところに
ジャズの在り方を垣間見るようで、そんなところも男気ならぬ女気を感じる。

トロンボーン奏者が作ったスカ・ナンバーや早坂のオリジナルも、オーネットの『ロンリー・ウーマン』の
ロック的アプローチに負けず劣らず強力であった。

阿呆な私はSTIR UPにSTRAIGHT TO THE COREなんて言われると、よからぬ想像をして
しまうのだが、それは逆にそれだけ琴線に触れる官能的な盤であることの証左であると
身勝手な解釈をして、この盤を愛で続けることに決めた。そして彼女のような人をライブの
メンバーに取り込むことのできた原田芳雄のことを改めて考えるのであった。

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1974

2014-07-26 08:51:40 | ROCK

CSNYの74年におけるリユニオン・ツアーを収録した組物が出た。3枚のCDとたった8曲
とはいえ当時の映像を収録した貴重なDVDで構成される重厚な組物だ。

何故70年のツアーでなく74年だったのか。答えは単純に今年が40周年というキリが
良い時期の演奏であるから、なんて言うのは私が捻くれているからか。いや、40周年という
大義名分は大事だろう。その証拠に3枚のCDに収録された楽曲は40曲である。

CSNYの74年のツアーは31公演、そのうち非公式な録音が確認できるのは21公演で
演奏された曲は80曲を超える。私もそのうちの数公演をブートレグで所持しているが、
正直なところあまり熱心に聴かなかった。アコースティック・セットでは当時の貧弱な会場録音では
聴くのが辛い部分があったし、それがバンドのパワー不足のような印象を私にもたらしたし、
コンサート自体が長かったことも冗長に感じられた。

70年7月に分裂したCSNYはそれぞれの活動に移行するのだが、再び集まる74年までの
間に4人が出したそれぞれのアルバムが全て素晴らしかったわけではない。74年の
CSNYリユニオン・ツアーではソロの曲が多く含まれ、単純にニール・ヤングのファンである私のような
聴き手はそことどう折り合いをつけるかというのも課題であった。

さて、今回の組物であるが、全てを見聴きして結果としては「良かった。」という感想に行きついた。
当たり前だがブートレグでは取り込むことのできない情報量の多さが、繊細なコーラス・ワーク(全てが
万全というわけではない)の魅力を伝えるし、何より音数の少ないアコースティック・セットは
いい音で聴くことができてやっとその真価を私自身が見出すことができた。

コンサートの曲順にほぼ忠実でありながらレア曲も多く収録しているので、実際のコンサートとは
違う趣になったが、アンソロジーであることとライブ盤であることを考えれば構成もしっかりして
いて聴いて違和感が無いというのもよい。まあ、単純にニール・ヤングのレア曲が5曲も公式に
初登場ということに喜びを見出してもいるが。(笑)

映像は8月21日のランドオーバーとツアー最終日の9月14日ウェンブレーで撮影されたものが
使われてる。もの凄く綺麗な画質ではないが、価値がある映像だろう。ウェンブレーでの映像は
当初BBCでの放送が予定されていたため、コンサートの全編を収録した映像が存在し、
ブートレグで広く出回った。少しボヤけたような画質であるが長尺のコンサートを捉えたという意味で
重要な映像ではあると思う。しかし、後にメンバーが語っている通りベストの演奏ではない。

メンバーが出たり入ったり、ソロをとったり楽器を持ち替えたりで、全体を見るとやはり冗長である
のだが、ある素材はなるべく多く見たいという意見ももっともなので、DVDに関してはもう少し
収録時間が欲しかった。

今回の組物はブックレットも充実しているので手に入れる価値はある。唯一本当に残念なのは
『CARRY ON』が未収録であることか。

さて、最後に。私はニール・ヤングのファンとしてこの組物を入手したが、CSNを軽視している
わけではない。それは当ブログの「LAND OF 1000 DISCS」の「AREA 67」を見ていただければ
御理解いただけよう。一つのバンドのメンバー全員のソロ・アルバムを選んだのは
ビートルズとCSNYだけなのだから。

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ロックの幻想

2014-07-24 20:54:14 | ROCK

シド・バレットが最後に演奏したのは、トゥインクと組んだバンド「スターズ」名義のもので
あることはよく知られている。しかもその音源が世に出ないことから、過度の期待を募らせ
興味の度合いを上げ続けているロック者は少なからずいるだろう。

スターズの演奏として記録に残っているのは72年1月29日から2月26日までに行われた
たった6回である。私も「このうちの1回分の音源でも世に出ないかなあ。」と思う一人だ。

そんな人達の欲望を少しだけ叶え、そして冷静に現実を考える機会を与えてくれたのが
掲載写真のCD。ラスト・ミニット・プット・トゥゲザー・ブギー・バンドなる長ったらしいバンドの
72年1月27日の演奏を捉えたCDなのだが、ここでシド・バレットが参加した演奏を
聴くことができる。

エディー・バーンズなるブルーズ・マンのことは全く知らないのだが、そのエディーの単発ライブの
バック・バンドとして編成されたバンドにシドがゲスト参加し、それが発展してLAST MINITE
PUT TOGETHER BOOGIE BANDとなる。そして更にスターズへと変貌を遂げる。

今回のCDには9曲が収録され、中盤の3曲にシドとフレッド・フリスがギターで参加する。
メンバー紹介があるわけでもないしシドが歌うわけでもないので、ギターの音の感じで様子を
探るしかない。シド達が参加した3曲はジャム形式のもので、他の6曲がチャック・ベリーの
カバーを含む意外とわかりやすいロックなので、まずはその違いに何らかの感触を得る。

目立ったリフとか耳に残るフレーズがあるわけではないのだが、時折聞こえてくるノイズの
ような音は、例えば『INTERSTELLER OVERDRIVE』のような感じをほんの一瞬だけ感じさせる。
でも私的には、それだけ、という感も否めない。

そうするとシドのラスト・スタンドへ抱いた興味が脆くも崩れていくのだが、スターズは
シドの楽曲を中心に演奏したらしいから、まだ私の興味は完全に消え失せたわけではない。
ただ、本作を聴く限りでは過度の期待は無くなったのも事実である。

音源自体は貴重なもので、今回のリリースは喜ぶべきことであることは間違いない。
しかしながら、本作を聴きながら私が思ったことは、スターズの音源は勿論のことながら
その存在自体が「ロックの幻想」であるのだなぁということである。

72年1月。この時期のピンク・フロイドは後の「DARK SIDE OF THE MOON」の
プロト・タイプの曲を磨き上げるツアーを開始している。72年に於いて両者のアーティストとしての
創造力の差は悲しいほど開きがあったことを突きつけるこの音源は、紛れもなく「ロックの真実」である。

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続・私たちスペシャルズの大ファンです

2014-07-23 22:26:40 | ROCK

12年5月にスペシャルズの曲やスペシャルズがカバーした曲を収録7インチを
何枚か取りあげた。端的に言えばそれらはブートレグなのだが、ブートレグならではの
選曲とセンスが面白く、更にはこの御時勢に7インチというのが琴線を擽った。

6月の終わり頃に同じような作りのジャケットで、ウィルコ・ジョンスンの7インチが
出たことを知るのだが、7月の頭に暫く家を空けることになるのでオーダーを躊躇していて
旅行から戻ってみると売り切れ。う~む。

何でオーダーしなかったのかって?それは、1週間留守にする間に7インチが届いて、
気の利かない間抜けな配達員に無理やりポストに押し込まれたらイヤだと思ったから。
中には気配りのできる方もいるのだが、大抵において間抜けなヤツらはポストからはみ出て
誰でも抜き取れる状態になってもお構いなしに突っ込んでいくから、郵便物が溜まった状態だと
尚更そんな状態が懸念されるからである。

     で、先日やっと手に入れました。

本題はここから。ウィルコの盤がリリースされた時に、過去にリリースされたエイミー・ワイン
ハウスの7インチが再発されたのだが、その中に未所持の1枚があったので同時に購入。
それが左下の盤。

       

08年6月27日ハイドパークでのネルスン・マンデーラ90歳祝賀コンサートでのエイミーの
演奏でA面にスペシャルAKAカバー『NELSON MANDELA』を、B面に自身のヒット曲
『REHAB』と『VALERIE』を収録。何処にも回転数の表記が無いが33回転盤。(笑)

掲載写真右はスペシャルAKAの7インチ『NELSON MANDELA』で、こちらは84年に出た
オフィシャル・7インチでタイトル曲のプロデュースはエルヴィス・コステロ。
2枚並べると意味もなく嬉しくなってしまう。

       ちなみに、こちらはオフィシャル盤の
リア・ジャケット。写真ではわかりにくいが、コステロの顔が型抜きされて小さく写っている。(笑)

        そのコステロ絡みのブートレグ7インチも出た。

コステロは昨年、ザ・ルーツと組んでアルバム「WISE UP GHOST」をリリースした。
今回の7インチは、そのルーツとのライブを収録していて、取り上げたのはスペシャルズの
『GHOST TOWN』。レーベル名が「2WISE」というのも洒落ていて良い。
因みにB面はジョン・レジェンドとルーツの演奏を収録。

というわけで、みんなスペシャルズが好きなのだ。

 

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恋の歌

2014-07-21 09:51:11 | 日本のロック・ポップス

昨日は日がな一日何をしていたかというと、ずっとプロレスのDVDを見ていた。
何でそんなことになったのかわからないが、たまたま見たミル・マスカラスとアブドーラ・ザ・
ブッチャーの試合に感じ入ったために、次々と見続けたのだ。大好きだったブルーザー・
ブロディーのことを考えていたのも遠因かもしれない。

テレビ放送を録画したり、YouTubeにあがっているものを編集したりのDVDには私が
よく見た時代までのものしか収録していないので、最近のいやここ10数年の事情にはトンと
疎いが、まあいい。プロレスにそれなりのストーリーがあるのは今では周知の事実であるが、
それでも肉体のぶつかり合いと、見る者に「怖さ」や「痛さ」を感じさせるところの「リアル」に
今更のように感心する。

今なら苦し紛れの反則でベルトを防衛するチャンピオンや、両者リングアウトなんてのは
見る側に許されないのだろうが、改めて昔の映像を見れば、今ほど派手では無いものの
肉体の軋みというものは確実に存在した。マスカラスとブッチャー、或いはかつてタッグを
組んでいたスヌーカとブロディーの殴り合いというのは、もうそれを目の当たりにするだけで
非日常なのだから、私にとってこれは紛れもなくロックンロールなのだ。

藤波や武藤(ムタ)の試合運びの上手さや、橋本の男気溢れる試合に今更のように
目を奪われ、今ならわかる猪木の山師ぶりに感心しつつ、気が付けばその猪木に翻弄され続けた
前田にもシンパシーを抱いた10代の自分の思い出を、心の中で反芻していた。

掲載写真はデビュー45周年の遠藤賢司の新作「恋の歌」。
もう、ジャケットの美しさにやられてしまった。

全ての歌は恋の歌だという思いで作られた盤が美しくないわけがない。
中学生の頃であろうと、相方がいる今であろうと誰かに何らかの好意を持つという気持ちに
変わりはないし、おそらくはそのほとんどはこちらの思惑通り都合よくいかないところが
また美しいのかもしれない。純粋な気持ちも不純な気持ちもそれを抱いた自分の正直な
気持ちに他ならないのだから。

エンケンはかつて「プロレスを八百長と言うヤツは、人生において八百長をしていないと
言い切れるのか。」という思いで『輪島の瞳』という歌を作った。当たり前だがプロレスを
八百長だと思ったことは一度もない。プロレスも人生も大河ドラマなのだ。終わりを迎える
までに訪れる何百何千もの荒波を如何にかわしていくか、という意味合いで同義かもしれない。

今回のアルバムはアコースティック・ギターとピアノの弾き語りであるが、バンド編成で
エレキをかき鳴らす音と比べて何ら聴き劣りすることのない、優しさと力強さが溢れている。
カーステ向きではない(笑)が、何度でも聴き返したいアルバムだ。

タイトル曲『恋の歌』で歌われる正直さには本当にヤられた。そして『小さな日傘と大きな日傘』に
込められた想いを自分のものとしたい、と思った。

そして、今年もエアコンは買わないことに決めた。



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THE BEST YEARS OF OUR LIVES

2014-07-19 21:07:45 | ROCK

スティーヴ・ハーレー&コックニー・レベルが74年にリリースした「THE BEST YEARS
OF OUR LIVES」のディフェニティヴ・エディションがリリースされた。
オリジナルの9曲に4曲のボーナス・トラックを加えたディスク1、75年のハマースミス・オデオン
でのライブ全14曲を収録したディスク2&3、映像版として7曲収録したDVDの計4枚組である。

アルバム・タイトルは46年のアメリカ映画と同じであるが、このアルバムを録音する直前の
スティーヴはオリジナルのコックニー・レベルがメンバー間の不和で解体したばかりで、
順風満帆なわけではなかったものの、希望的意味合いをこめてこのアルバム・タイトルに
したのだろうか。アルバム発表前に出たシングル曲『MAKE ME SMILE(COME UP AND
SEE ME)』は全英1位になったのだから、気分も高まっていただろうし。(笑)

今回の4枚組の聴きどころは、初めて完全版で収録されたライブということになろう。
それまでシングルのB面で『THE MAD , MAD , MOONLIGHT』と『SEBASTIAN』の2曲は
世に出ていたが、ライブの流れで聴くと当たり前だが、何というか充実感がある。
それほど演奏が上手いバンドではないと思うが、全体に漂う妖しい微熱のようなものは
十分に感じ取ることができる。

映像はビデオ落としのような感じで、ドンピカのリマスター映像というわけではない。
私もかつてYouTubeにあがっていたものをDVD化(笑)したことがあるが、無事にオフィシャル
として世に出たことを喜びたい。絵的に大したことがないのが拍子抜けしたのだが、
今となっては貴重な記録である。

オリジナル・アルバムに添付されたボーナス・トラックも重要で、初登場の『MAKE ME SMILE』の
ラフ・ミックスやアルバム・タイトル曲のアコースティック・バージョンに耳を奪われるし、
シングルB面なのが勿体ないくらいの『ANOTHER JOURNEY』の収録も嬉しい。

というわけで、それほど需要がないであろう盤の豪華な再発に感謝する今宵の私であった。

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追悼 ジョニー・ウィンター

2014-07-17 19:13:06 | ROCK

7月16日、ジョニー・ウィンターが亡くなった。享年70歳。死因は不明。

今年は生誕70周年記念の全キャリア総括ボックスをリリースし、再来日公演を行い
更に9月にはブルーズ・カバー・アルバムのリリースが予定されているという、精力的な
活動を行っている最中の訃報だけに、残念な思いに拍車がかかる。

豪快なギターは勿論、迫力満点のボーカルも好きだった。
自身の名前を冠した69年のアルバムを初めて聴いた時、「あっ、ストーンズがハイド・パークで
演った曲だ。」なんて嬉しくなったのを妙に覚えている。

マディー・ウォーターズが歩いた道から、文字通り遥か遠くへ転がったローリング・ストーンズが
一番好きだが、その道を更に踏み固めてブルーズの裾野を拡げたジョニー・ウィンターが
好きだ。

BYE BYE JOHNNY

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NANCY

2014-07-15 00:03:06 | 日本のロック・ポップス

掲載写真は浅井健一の新作「NANCY」。今作は今までのアルバム以上に
バンドではなくソロであると感じる。バンド特有の一体感あるいは疾走感といった
感覚が希薄ということではなく、それ以上にバンド名義では出来ない部分の
面白さがあるのだ。

コンピューターでのプログラミングもそうなのだが、多用されるコーラスというのは
長年のファンとしても何か新しい発見をしたような気になって、少し嬉しい。
浅井自身が声を重ねたものも、女性の声を重ねたものも上品に曲にはまっていて
聴くたびに、ハッとさせられる。

実は最初に一度聴いただけではピンとこなかった。それは私が鈍いからなのだろうが
三回、四回と聴くうちにのめりこんでしまった。(笑)

比較的静かな曲が多い印象があるのだが、逆にそれがここに収録された11曲の
或いは10のストーリーのリアリティーの増幅に一役買っている。マイナーコードを
多用してもあくまで曲調はロックであり、差別用語としての「フォーク」とは一線を画す
ことができるのは今更ながら凄いセンスだと思わざるを得ないし、今までと少し違った
歌詞の変化も素敵だ。

格好いい浅井健一というのは、まったくもって最高で無敵だ。



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THE WAY

2014-07-14 21:30:48 | ROCK

朝日新聞にラモーンズのオリジナル・メンバーの中で唯一の生存者であった、トミー・ラモーンの
死亡記事が載った。ラモーンズというバンドの偉大さを物語る「出来事」だと思うと同時に
とっくに解散したバンドなのに改めて「これで完全に消滅したんだな。」と少し感傷的な気分に
なってしまった。

掲載写真は76年の結成から81年の解散を経て、今なお現役のバズコックスの新作
「THE WAY」。これが通算9作目のアルバムなのだが、そんなに少なかったっけと
今更のように思うことしきり。

メンバー・チェンジの多いバンドで08年からは今のメンバーなのだが、アルバム自体は
8年ぶりの新作ということである。ずっとライブはやっていただろうし、初期作のDX盤なんかが
出たのでそれほど渇望感とか飢餓感(笑)はなかったが、いざ聴いてみると、やっぱり
燃えたぎるような力が漲ってくる。

10曲で36分という尺がまた、彼ららしくて良い。ボーナス・トラックが4曲収録された盤も
あるようだが、まあいいだろう。今作はプレッジ・ミュージックで制作資金を集めたもので
一般発売はもう少し後になるようだ。

特に何か変わったことをやっているとかでもないし、最初の3枚のアルバムや傑作シングルの
幾つかを超えるようなものではないことは百も承知だが、彼らが2014年に新譜を出した
という、ただその一点において「素敵だ」と思えるのは、ロックの最早短いとはいえない歴史の中を
サヴァイヴした事実に対する賞賛である。

また5年後にでも会おう。

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PLAYING FOR CHANGE

2014-07-13 05:48:58 | ROCK

PLAYING FOR CHANGEというプロジェクトを、どう説明したらいいのかうまく言葉が
見つからないのだが、「音楽を通して世界に想像、連携、平和をもたらすことを目的とした
マルチ・メディア・ムーブメント」ということらしい。

1曲毎に世界各地のミュージシャンが多数参加し歌い演奏するもので、数年前に証券会社
グループの銀行のCMで『(SITTIN' ON)THE DOCK OF THE BAY』が使われたのを
覚えている方もいるだろう。

実は私はあのCMが気に入らなかった。たった30秒かそこらで全体像など掴めるわけは
ないのだが、直感的に「俺のとは違う」と感じたわけで、なんとなく気取ったように思えたのだ。
アルバムを聴きもしないで曲目を見て『STAND BY ME』とか『ONE LOVE』とかの選曲にも
辟易としたし。

さて、その考えを改める時がきたようだ。
今回で3枚目となるプロジェクトなのだが、私がアルバムを買った最大の動機はキース・
リチャーズさんが参加していること。有名曲が取り上げられることが多いこのプロジェクトにおいて
自前の曲『WORDS OF WONDER』を取り上げているというのが泣かせた。(笑)

しかも大して売れなかった2枚目のソロ「MAIN OFFENDER」収録のこの曲を、なんと
『GET UP , STAND UP』と繋げて演奏しているのだから、最高というか恐れを知らないとは
このことである。(笑)

購買動機は極めて「純粋な不純」(笑)であったが、添付されているDVDを通して見て驚いた。
音楽とはこんなに楽しく演奏できるものなのか、というほとんど阿呆のような感想しかでてこない
純度100%の映像がそこにあったのだ。

確かにキースさんや、ロス・ロボス、タジ・マハールにケブ・モーといった著名なミュージシャンの
参加はプロジェクトの名を拡げるために有効であるが、31の国から参加した185人の
ミュージシャンの誰もが楽しそうに様々な楽器を演奏する様は見ていて飽きないし、自然と
笑みがこぼれる。私はしないが、踊りだした人がいてもおかしくはない。

椅子に腰かけ無表情或いは眉間に皺をよせてテクニックを追及したり、現状打破を訴えて
勇ましくアジテーションする音楽、はたまた異性(人によっては同性)の関心を惹くための
演奏、そういったものを嫌いでないことを断り書きとして書いたとしても、楽しく明るく演奏する
音楽の魅力にはやられてしまった。

本作はCDとDVDがセットになっているのだが、まずはDVDを見ていただきたい。
様々な国の街並みや風景、様々な楽器を見ているだけで多幸感で満たされるし、演奏は
的確で何よりミュージシャン達の表情がいい。

偏屈なロック者にも開かれた扉があった、というただそれだけで嬉しくなった私である。

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刹那のうた

2014-07-12 08:54:24 | 日本のロック・ポップス

EGO-WRAPPIN'というバンドとは、ほとんど無縁な音楽生活を続ける私(笑)なのだが
稀に好きなテレビ番組の主題歌を担当しているために、一瞬の邂逅を果たすこと二度。

一度は02年に「私立探偵 濱マイク」の主題歌で出会い、そして今年になって「リバースエッジ
大川端探偵社」の主題歌、エンディングテーマを担当したことで再度出会う。
思い起こせば、どっちも探偵物ですね。(笑)

4月から6月にかけてのクールは本当にドラマを良く見た。
「極悪がんぼ」「花咲舞が・・・」「BORDER」「アリスの棘」「ルーズベルト・ゲーム」「MOZU」
挙句の果てに「死神くん」や「ファースト・クラス」(笑)までも見ていた。こんなにテレビばかり
見ていて音楽を聴く時間が削られるのが勿体ないと思うこともあるのだが、いかんなあ。

そんななかで一番熱心に見ていた「リバースエッジ大川端探偵社」が終了した。
7月に入り他のドラマが終了して新ドラマが始まる中、W杯で飛んだ週があったとしても
マイ・ペースを貫き通すテレビ東京に拍手である。

ドラマと主題歌、或いは劇中歌やエンディング・テーマの関係というのは今更ながら
重要なもので、EGO-WRAPPIN'が演奏する『Neon Sign Stomp』と『サニーサイドメロディー』は
もうズッパマリで、ドラマ共々好きになってしまった。

浅草という土地柄と夜の世界、そして探偵という職業の怪しさのミックス感が絶妙な主題歌も
さることながら、虚しかったり切なかったりホロっときたドラマの余韻を残すエンディング・テーマが
素晴らしい。ドラマでは交わることのない小泉麻耶とオダギリジョーという二人のキャラクターの
どちらにも感情移入できる曲でもある。

『サニーサイドメロディー』、早くも私的「2014ソングNO.1」かも・・・。
7月からのクールは・・・・。あまりテレビを見ないことにしよう。(笑)

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SPRING 1990 (THE OTHER ONE)

2014-07-11 21:20:17 | ROCK

う~む。今年のデッドの大箱は「SPRING 1990 (THE OTHER ONE)」と題された
23枚組か・・・・。

12年に「SPRING 1990」と題して18枚組を出したばかりなのに、また90年なの?と
不満を抱いたデッド・ヘッズは少なからずいるだろう。今回の組物は、前回の組物から漏れた
日付の演奏を集めているわけで、それなら初めから日付順に組んでリリースしてよ、なんて
思ったり。

それでもオーダーするのが年中行事なので仕方がない、ここは素直に本能と義務感に従う
しかないのだ。(笑)今回は8公演23枚組で価格は$239.98ドル。
そして、前回と同じく9000セット限定。

早速オーダーすると、送料は$41.99。前回が18枚組で送料は$49.95だったので
「おや、ちょっと安いか。」なんて思った私は大間抜けで、合計すれば$281.97であることを
すっかり意識の外に追いやっている。(笑)ついでに送料が$40超えだという厳しくも悲しい
現実からも逃避してしまっている。(笑)

それにしても。以前も書いたがデッドの攻勢は情け容赦ない。

もし、映像版でコレをやられたら・・・・。ああ、恐ろしい。(笑)

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ONE FOR THE ROAD

2014-07-09 20:35:12 | ROCK

2004年4月8日ロイヤル・アルバート・ホールで行われたロニー・レイン・メモリアル・
コンサートがDVD化された。豪華な面子が集ったコンサートだったので、映像化がまたれた
ものであったが遂に、である。長尺のコンサートということもあるが、今の目で見ると
画質はそれほど鮮明でないが、この映像が世に出たことをまずは喜びたい。

見どころが多すぎて、何から書いていいのかわからない(笑)のだが、前半は面白い
ゲストが多い。例えばジョン・ボーナムの妹、ミック・ジャガーの弟、スティーヴ・マリオットの娘。
面白おかしく書いたが、デボラ・ボーナムとクリス・ジャガーはプロのミュージシャンとして
アルバムをリリースしているくらいだから、何を今更なのだがモリー・マリオットは可愛い素人
といった佇まいで数曲歌う様が何ともいいのだ。

通な貴方ならバズコックスのスティーヴ・ディグル、ナイン・ビロウ・ゼロのデニス・グリーブスと
いった人の姿に目がいくはず。中盤以降は更に豪華になって、あのスリム・チャンスが
ハウス・バンド的役割を果たし更なる大物が続々登場。

ミック・ジョーンズとグレン・マトロックが登場して演奏する『DEBRIS』『YOU'RE SO RUDE』は
本来なら個人的には最初のハイライトとなるはずだった。だった、と書いたのはミックのギターが
どうも的外れなミス・トーンを多く出していて、それがテレキャスター特有の固い音で耳につくので
ちょっと残念。

この時期のスリム・チャンスにはヘンリー・マッカロクがギタリストとして参加しており、彼が
ボーカルをとる『ONE FOR THE ROAD』が実に渋く、これも隠れた名場面だと思う。
貫禄のピート・タウンゼンドの後に登場したポール・ウェラーは名曲『THE POACHER』を披露。
感動はさらに続き、登場したロン・ウッドと共に『OOH LA LA』を歌うのだから、堪らない。
ズバリ、私的にはこれがハイライト。

ハウス・バンドはこの後、ケニー・ジョーンズ率いるジョーンズ・ギャングへと変わる。
ここから何故かロッド・スチュワートが歌ったフェイセス・ナンバーが多く演奏される。
そうすると、厭でもロッドとイアン・マクレガンの不在が残念に思えてくるが、いろいろと
事情はあったのだろう。

長いコンサートの最後は『ALL OR NOTHING』で大団円。クリス・ファーロウの野太い声の
後ろには通好みのギタリスト、クレム・クレムスンの姿が。で、演奏の途中でまたミック・
ジョーンズが参加してきてギターを弾くのだが、やっぱりミス・トーンが多いように思えた。

演奏が全て終わってロニーの兄(ロニーそっくり)がステージに登場して観客に手を振る。
出演者も観客も、その場にいた誰もの心に暖かく明るい灯が燈ったステージだったであろうことが
よくわかるコンサートで多くの人が見るべきだろう。そして、改めてロニー・レインの残した
曲の素晴らしさを振り返るいい機会になれば、と思うのであった。

コメント (2)
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