HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

三上寛 / 十九歳二ヶ月十六日夜。

2005-02-27 17:53:39 | 日本のロック・ポップス
遂にこれも再発されてしまった。
70年に渋谷「ステーション70」で
記録された、ライブ盤。
3月から4月ころの録音だというが
聴く者の部屋の空気を、暖房の無い
コンクリート剥き出しの部屋に
居るかのように変えてしまう。

この盤の存在を知ったのは92年に出版された
「日本フォーク紀」という本に書かれていた
三上寛のディスコグラフィーによってである。
91年にわずか100枚だけプレスされたという。
まだパソコンでの情報のやり取りなんて、ほとんどの人に
無縁の時代、よほどのファンでないとこのような盤が
リリースされるということは知ることが出来なかったはずである。
よほどの三上フリークでない限り、聴く必要がなかった、いや
聴かせられないということか。

ダビングを何度も経たカセット・テープで聴くことができた
その内容は、人生のダーク・サイドをこれでもかと見せつける
ものであった。遠い昭和の話なのか、セックスしか楽しみのない
田舎の話なのか・・・。いや、現代にもこの闇は続いている。
「わいせつ」は時に笑えることがある。余りに間抜けで、滑稽な
側面があるから。しかし、ここで歌われる事象の多くはもはや
「暴力」である。まゆをひそめるか、何かを読み取るかは
聞き手次第。

昔、親と車で2時間ほど走ったとき、車内にはタイマーズの
「不死身のタイマーズ」のカセットしかなく、それを聴きながらの
ドライブとなったことがある。聴いたことがある方ならご存知
だと思うが、とても放送で流せないような歌詞が満載である。
最初は「何だこれは?」という反応の親は次第に「清志郎は
しょうがないねえ」と笑い飛ばしていた。もちろんそうなると
思っていたからカセットを聴いたのだが、この三上寛のアルバムは
そうはいかない。仮にこの盤しか車内になかったら(もちろん
車内に持ち込むようなものではない)、迷わずラジオに代える。

今回の再発は限定777枚。わずか777人のためにしか門戸をいまだ
開けない言葉と音がある。ボールペンで手書きされたリミテッド・
ナンバー、ちなみに私のは304番。
おっと、手持ちが無くて未購入であるキャプテン・ビーフハートの
限定4000枚の2枚組ライブもボールペンでの手書きナンバー入り
だった。急がねば。
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田中研二 /チャーリー・フロイドのように

2005-02-21 23:01:38 | 日本のロック・ポップス
75年に発表された当時、
唯一のアルバム。近年過去の
ライブを収録した発掘盤も
リリースされた。現行CDは追加で
6曲のライブ・テイクが収録されている。

高田渡のように漂々と世の中の出来事を歌うのだが
渡との大きな違いは、曲が長いことだ。(笑)
世の中を優しく笑い飛ばしながらもシニカルな
視線がそこかしこに伺える。
友部正人のような語り口調の「インスタント・コーヒー・
ラグ」が人気曲だが、これまた友部正人ほど重苦しくない。
私はコーヒーが大好きで、高田渡の「コーヒー・ブルース」とともに
この曲が大好きだ。渡は素敵な女の子がいる、おいしい
コーヒー屋へ通う楽しみを歌った。田中の歌は寿命が尽きても
遅刻をしてもコーヒーが飲みたいと歌う。そしてコーヒーを
いれるのが上手な彼女が帰ってきたら、インスタント・コーヒーは
捨ててしまおうなんて歌うが、かえってくるわけでもなく
やっぱりインスタント・コーヒーを飲み続ける。
自分でおいしいコーヒーを入れる六曜社のマスターでもある
フォーク・シンガーのオクノ修にしてみたら、インスタントなんて
考えられないだろうな・・・・。とか、思いながら
私はこの曲を聴くのが好きだ。

大作「わいせつを語るブルース#2」も傑作だ。なめこ汁を
おめこ汁と誤って注文したために逮捕され、判決文や論告の中で
おめこというたびに検事や裁判官が逮捕されそして、誰も
いなくなった・・という歌だ。今はそこいら中に様々な
ものがあふれている。文章や言葉が「わいせつ」であった
時代というのは遠い昔か?。このテの裁判は今も昔も
滑稽だが、この歌の意味のもつ普遍性は今も有効である。
ディランの「第三次世界大戦を語るブルース」と比べたって
なんら恥ずかしい物じゃない。

アルバムの基本はキャンプ場やアパートでのライブ録音だが
なにげにメンバーが凄い。友部正人はコーラスで参加、
林亭や、貧。苦巣のメンバーも参加している。
貧。苦巣のメンバーが参加した「長居をしすぎたようだ」は
田中によるとレイ・ブライアントのレコードを聞いて
ヒントを得てつくったことがライナーに書かれてある。
このレイ・ブライアント、スマートな演奏の中に黒い
ブルーズを聞かせる大好きなジャズ・ピアニストであるので、
そんなところも私にはポイント高いところである。

チャーリー・フロイドはアメリカの伝説の義賊の名前である。
「国民の敵」とFBIに呼ばれ、逮捕のためにデッチあげの罪状まで
つくられたという。悪たれにもならず、されどチャーリー・フロイド
のようにかっこよく殺されもせず、田中研二は漂々と
今もオーストラリアで生活し、残された数少ない録音を
こうして楽しみながら漂々とはいかないまでも、のらくらと
生きている私もいる・・・・・。

ああ、「日本沈没」。
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FRANKIE MILLER / DOUBLE TROUBLE

2005-02-20 12:25:31 | ROCK
78年発表の5枚目。
ミラー自身は3作目のその名も
「THE ROCK」がフェイバリットだそうだが
もうちょっと派手目のこの盤を
ここでは紹介する。

パブ・ロック風、ニュー・オリンズ・サウンドと
過去のアルバムで趣味の良さを丸出しにして
ロック者を魅了したミラーが、このアルバムでは
プロデューサーにジャック・ダグラスを迎える。
ジャック・ダグラスといえば即座に70年代の
第一期全盛期のエアロスミスのプロデューサーであった
ことが思い起こされる。
エアロの曲には意外とホーンが効果的に使われているのだが
今作もここぞというところで使われ、都会的な雰囲気を
出している。全体の音作りも過去のアルバムに比べて
ハードになっている。ダグラス人脈でスティーブン・タイラー
が参加しているのも特筆すべきだろう。曲作りを
共に行ったエースのポール・キャラックは全面参加、
昔からの友人、フリーのアンディ・フレイザーは参加こそ
していないが、彼の曲も2曲取り上げている。

また面白いのがマービン・ゲイの「STUBBORN KIND OF FELLOW」
のカバーである。モータウン・ナンバーがスタックスの解釈で
演奏されることがなんとも痛快である。少し前にトータス松本が
自身の出演するCMでこの歌を歌っていたが、間違いなく
フランキー・ミラー・バージョンを手本にしていると思う。
さすが、トータス松本の面目躍如たるところである。

残念ながらミラーさんは94年に脳溢血で倒れて下半身付随となり
闘病中である。回復を心から願う・・・。



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THE WINKIES / SAME

2005-02-20 11:56:24 | ROCK
75年発表のウインキーズ唯一の
アルバム。ロキシー・ミュージックを
脱退したブライアン・イーノの
74年のライブのバック・バンドに
なったことから広く名を知られるようになる。

ブートレグでウィンキーズをバックに従えて
録音した「BABY'S ON FIRE」が流通しているらしいが
私は未聴。一方、ウインキーズ自信はガイ・スティーブンス
をプロデューサーに迎え、本作を録音する。
パブ・ロック特集の末席に紹介されることが多い
このアルバムだが、サウンドの泥臭さがなんとも
いい味を出している。

ストーンズ、フェイセス直系の冒頭の「TRUST IN ROCK」、
でアルバムは快調にスタート。このよれたボブ・ディラン
風の歌い方に私は弱い。よってジョージア・サテライツや、
グリーン・オン・レッド、トム・ペティなどは無条件に
OKなのであった。ディランのカバー「悲しみは果てしなく」
はカントリー風の演奏。もちろん英国風味。

ボーカリストであるフィリップ・ランボウは
カナダ生まれで、NYでの活動を経てロンドンで、ウインキーズを
結成する。パブ・ロックの土壌にニューヨークでの
活動で吸収した音が混ざるところが、たまらなく魅力的だ。
ボブ・シーガーの「LONG SONG COMIN'」のカバーも渋い。
粘っこいT.REXというのは当たらずとも遠からじ。
アルバムの流れはA面はイギリス的な側面が強く、B面はアメリカ的
な要素が強い。パブ・ロックの範疇を飛び越えた活動が
期待できる出来にもかかわらず、この1作でバンドは解散する。
リズム・セクションはまた、これもパブ・ロックを語る上で
外せないタイラ・ギャングに参加する。

それにしてもこのジャケットはなんだ。
ヒプノシスにはこういったジャケットがいくつかあるが、
同趣向なら、モントローズのほうがいいな。
理由は一つ・・・・私は男の子である。
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LEON RUSSEL / LEON RUSSEL AND THE SHELTER PEOPLE

2005-02-19 19:08:32 | ROCK
71年発表の2枚目。
「ソング・フォー・ユー」「デルタ・レディ」が
収録された1STも名盤。

セッション・マンとしてキャリアをスタートさせた
レオンは数々の名曲の録音に参加している。
フィル・スペクターの下での「ふられた気持ち」や
「ヒーズ・ア・レベル」、又バーズの「MR.タンブリンマン」の
レコーディングに参加しているのも有名だろう。

デラニー&ボニーのアルバムをプロデュースしたことから
急速に人脈が広がり、遂には40名になろうかという大人数の
マッド・ドッグス&イングリッシュメンというプロジェクトで
ジョー・コッカーをサポートするにいたる。
そんな人脈からのサポートを得てレオンは幾つもの名作を
モノにした。

アルバムは3つのプロジェクト・メンバーで録音される。
「THE TULSA TOPS」「FRIENDS IN ENGLAND」「THE
SHELTER PEOPLE」あと、アルバムに明記されてないが、
他の組み合わせもある。いずれもねばっこいスワンプ・ロック。
アメリカ南部の音楽を目指すイギリスのミュージシャンの
ある種お手本となったアルバムだと思う。

デラニー&ボニーのツアーに端を発した繋がりが、
ジョージ・ハリスンの「オール・シングス・マスト・パス」、
今作、そしてデレク&ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」まで連綿と繋がる。
それらを支えたベースのカール・レイドルとドラムスの
ジム・ゴードンの素晴らしい仕事振りは忘れることができない物だ。
ジョージ、レオン、ECの三役揃い踏みはあの「バングラデシュ救済
コンサート」で見ることが出来る。
ジョージの「BEWARE OF DARKNESS」のカバーがこのアルバムに
収録されているので、ジョージ・バージョンと聞き比べると面白い。
曲の後半で劇的な盛り上がりを一瞬見せそうになるが、
おとなしめに終わる。
個人的には盛り上がったまま終わって欲しかったが、
録音した面子が違えばどうだったろう?

現行CDには当時未発表だったボブ・ディランのカバーが3曲
収録されている。未発だったのが不思議なくらいのいい出来の
トラックである。
1STにもボブ・ディランのカバー「戦争の親玉」がボーナスで
収録されているが聴いてみれば・・・それはアメリカ国家だった!
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ANDY NEWMAN / RAINBOW

2005-02-17 23:50:14 | ROCK
72年発表のアンディ・ニューマンの
おそらく唯一のアルバム。
ランディ・ニューマンではない。(笑)

先に紹介した「サンダー・クラップ・ニューマン」
のメンバーで主にピアノや各種管楽器を演奏
していた人である。このアルバムの主役は歌でも
ピアノでもなく、なんとカズーである。
私はなんとなく「トーキング・モジュレイター」と
同じくらい間抜けなイメージをカズーに持っていたが
ここまで主役を張られると考え方を変えざるをえない。

古くさいジャズ風の曲、まあそれはピアノ(決して
キーボードではない)のメロディーと音色、
オーボエや各種サックスがそういった雰囲気を
つくるのだが、それに輪をかけてカズーが
懐かしさを演出したり、ときには暴走して雰囲気をぶちこわしたり、
とにかく楽しい。おまけに和める。ハードなギターやドラムスは
全く聞くことは出来ないが、リード・カズーが
それを補ってあまりある。(笑)


それにしても最高のジャケットである。
白のスーツをこれほど着こなせる男はそうはいない。(笑)
おまけに彼の手が軌道を描いたかのように虹まで出ている。
おお、虹を翔ける覇者。(笑)
(笑)ばっかりになってしまった。
和みの昼下がりに、日の高いうちに酒を飲み始める後ろめたさを
感じながら聴いていただきたいアルバムである。

ただし。おそらくは一般のCD屋での入手は難しい。
このアルバムのエグゼクティブ・プロデューサーを務めた
ピート・タウンゼンドの「eelpie」のHPで購入が可能。
おためしあれ。
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THE ROLLING STONES / LIVE RICKS

2005-02-16 23:04:42 | ROCK
私がストーンズを知ってから初めて
発売日に購入しなかった
記念すべきアルバム。

CCCDでの発売というのが気に入らなかった。
日本盤は1曲多く、それが私の大好きな「IF YOU
CAN'T ROCK ME」であるが、CCCDなのでスルー。
オランダ盤がCCCDでなかったのでそれを
購入となった次第。

CD時代に入ってストーンズのアルバムのジャケットは
どれもデザインが最悪である。このアルバムも初回プレス
以降はバストが隠れるというが、だから何だというんだ。

特に今回はDVDでシアター、アリーナ、スタジアムという
3パターンのライブとドキュメントを収録した秀逸な4枚組が
既にリリースされた後での発売である。そんな後で
音だけの2枚組にどういう価値を見出すべきか?
いちいち選曲にも文句をつけたくなる。
適当に選んだ音源をあれこれいじって音を差し替えて
ご苦労様と皮肉のひとつもいいたくなるのだ。

ストーンズのとるべき策は一つ。
ザ・フーやパール・ジャム、ピーター・ゲイブリエルのように
全公演を録音してリリースするのだ。それでいいじゃないか。
昔のように「ライブ盤」にスペシャルな意味合いを持たせるのは
困難な時代である。実際のコンサートではそれほど
いい音で聴けず、遠くに見えるアーティストを必死で追うのが
現実である。映像作品にこそ特別な意味合いをもたす価値は
今の時代にも失われていない。
今や、ビッグ・アーティストのライブはほとんど録音されて
アンダーグラウンドで流通する。
いっそ、全てのライブを発売すればこれほどすっきりすることはない。
資金不足で全て購入できなくても、それはそれで仕方が無い。
適当な選曲の編集盤を買うくらいなら、自分が見た日や、
気に入ったセット・リストの日の完全収録盤を購入して聞くほうが
精神衛生上良いとさえ思える。全公演、画付きで発売してもらっても
一向にかまわないけどさ。

もし、本当にそんな事態になったら・・・。
いや、本当にそうなったら困るといいつつも、アレやコレを
売り払ってでも全てを購入することを宣言する。
このCDの内容についてほとんど触れないのも何だが、
そこいらのバンドが束になって10年掛かりでも、かなわない
アルバムといっておこう。
私はストーンズには甘い・・・・・。

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JOHN CALE / PARIS 1919

2005-02-16 00:27:13 | ROCK
60年代、ヒッピー熱に浮かれた世の中に
冷徹な眼差しを注ぎ、ニュー・ヨークの
闇を描いたジョン・ケイルが
73年に発表した傑作。

クラシックを音楽背景に持ち、現代音楽や実験音楽にも
挑んだこの男の出身地は、イングランドは南ウェールズ
である。そんなケイルが英国的なルーツを垣間見せる
作品である。全編おだやかな曲調、歌いぶり、アレンジで
通すのは異例というか、ケイル的には野心作であると
同時に、それを年月という残酷な批評に耐えうるアルバム
に仕上げたことを評価すべきであろう。

更に驚くべきことにギターはローウェル・ジョージ、ドラムスは
リチャード・ヘイワードのリトル・フィート組が担当し、
プロデューサーはクリス・トーマスである。
似つかわしくない組み合わせだが、これが実にはまっているのだ。
このブログで、何組かのアルバムを紹介するときに
「ブリティッシュ風味にアメリカのテイストが加わっていい感じ」
というようなことを書いたことがあるが、これも
そんな1枚。ケイルの楽曲を邪魔することなく、曲の骨格つくりと
色付けをこなしたフィートの二人はセッション・マンとして
最高の仕事をしたといえる。

全体に歌詞は難解だが、ほとんどの曲は人との出会いと
別れを歌ったものだ。どれほどの深い意味があるかまでは
理解できないが、ケイルの自伝とはいかないまでも
過去を振り返り、新たなスタートへの準備をする
作品と捉えることは出来る。

ニュー・ヨークの闇を描いたもう一人、ルー・リードの懐古的
作品「コニー・アイランド・ベイビー」とともに聴けば
二人の出自の違いがわかると共に、よりこの作品が
楽しめると思う。
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NICK DRAKE / BRYTER LATER

2005-02-15 22:26:03 | ROCK
70年に発表された
ニック・ドレイクの2枚目。
このアルバムを軽視する人は
多い。この拙文を読んで考え方を
変える人がいたら嬉しい。

初めてニック・ドレイクを聴いたのは友人が500円で
売ってくれた編集盤「HEAVEN IN A WILD FLOWER」だった。
とてもベスト盤で片付けられないと思い、3枚の
オリジナル・アルバム、未発集「TIME OF NO REPLY」、
ブートレグであろう音源もいくつか聴いた。


昨年、バック・トラックを作り変えた曲を含む
レア音源集がリリースされた。マーク・ボランや
ジミ・ヘンドリックスの同様の作品の多くはファンには
歓迎される物ではなかった。「ブライター・レイター」の
過度のアレンジを毛嫌いする連中、つまりは
ニック・ピュアリストを自称する方たちから、その
アルバム「MADE TO LOVE MAGIC」に対する批判めいた言葉は
ほとんど聴かれなかった。むしろ音楽誌は絶賛の言葉で
レビューが埋められていた。そんなものか・・・。

このアルバムはジョン・ケイル、ドリス・トロイ、
リチャード・トンプスン、デイヴ・ペッグ、デイヴ・マタックス、
P.P.アーノルドら錚々たるメンバーが録音に協力している。
このメンバーの演奏になんの不足、いや過剰な部分が
あろうか?

1STは売れなかった。そしてこのアルバムは売れる必要があった
のだ。純粋で無防備なニックは「歌が人との会話の中で交わされる
言葉なら、いい具合になるんだけど」と歌う。
ニックは多くの人に自分の作品を受け入れてもらいたかった。
日常においてうまく人と接することができなかったニックは
歌で多くの人とコミュニケーションがとれたらと考えたのだ。
プロデューサーのジョー・ボイドもそのことは理解していた。
そのため、このアルバムは多くの人に聞いてもらえるように、
耳あたりのいいアレンジが施されたのではなかろうか。
多くの人に聞いてもらう事で、アーティストが心の充足を得て、
幾ばくかの商業的成功の恩恵に預かることに何の問題がある
というのか?

ニックはこのアルバムにインスト曲を3曲収録し、その3曲に
自信を持っていた。プロデューサーにはインストの代りに
ボーカル曲を望まれると思ったニックはこのアルバムの
セッションで録音曲以外を提示しなかったという。
楽曲はニックの自信作が選りすぐられ、傑作となった。
ただこのアルバムの音がニックの弾き語りのステージとの
落差を生み、それについてニックが悩んだのも想像に
難しくない。ドノバンのように立ち回れたらと思わずに
いられない。

アルバムは売れず、ジョー・ボイドは
ニックの元を離れ、ロスへ行く。失意のニックのその後は
よく知られるところでここでは書かない。
単体のアルバムとして取り出してもさほど出来は悪くない上に
ニックの残したアルバム中での位置付けを考えれば、
軽視できる物でないことがわかってもらえたら幸いだ。

拙文中、引用した歌詞は私のフェイバリット・ナンバーである
「HAZY JANE Ⅱ」の最後の一節である。


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THE WHO / WHO ARE YOU

2005-02-14 20:43:37 | ROCK
35年前の今日、「ライブ・アット
リーズ」が録音されたのを記念して?
今回はザ・フーの登場。

78年発表。フーの作品群にあっては
キース・ムーンが在籍した最後のアルバムということで
語られるのみで、割と軽い扱いのアルバムである。
押し寄せるパンクの荒波にピートのスランプ、
キースのドラッグとアルコールによる体調悪化と、
バンドにプラス要因は何一つない中で録音された。
ジョンが異例の3曲提供という事態が、ただ事ではないことを
容易に物語る。だが、幾つかの忘れられない曲を収録している
のも事実である。

冒頭の「NEW SONG」ではこう歌われる。
”あんたは新しい歌が必要だって言うが、俺達は昔馴染みの
歌を歌い続ける”。この曲はフーのこれからの活動を宣言した
ものではなかろうか。
一過性のブームで終わることなく、いい曲を歌い続けることが
ピートにとっての「ロック哲学」である。
世の中のくだらない曲への怒りを持ち続けることで、
ピートはモチベーションを高く保ち続け、
昨年も目の前でそれを証明してくれたものだ。
しかし、このアルバムでは「MUSIC MUST CHANGE」とも歌われる。
パンクという時代の流れに抗いつつも、それを拒むことの
愚かさに気が付いていたピートの苦悩がこのアルバムには
にじみ出ている。「MUSIC MUST CHANGE」ではキースはうまく
ドラムを叩けなかったため、おそらくミックスでシンバル以外は
消されたのだろう、それがこの曲の重さに輪をかける。
もっともキースは「オレは世界で一番のキース・ムーン・スタイルの
ドラマーだ」と毒づいているが。

私のフェイバリットは「GUITAR AND PEN」。ギターとペンで
曲を書き、戦い続けるというピートの決意表明。サウンド面も
ロッド・アージェントのキーボードがいいサポートをしているし、
全体的に不調なキースのドラミングもこの曲ではハードでありつつも
まとまりのいい展開を見せる。ただし現行CDではエンディングが
アナログに比べて1フレーズ短くなっているのが難点。
ボーナスで追加された同曲の78年ミックスは短くなっていないが
今度は最後の1フレーズに、オリジナルにはなかったドラムの
音が入っている。

昔の話だが、忌野清志郎と仲井戸麗市がラジオに出たとき、こんな
話が聞けた。清志郎が禁煙するというが、チャボは無理だという。
約束の期間、禁煙できたら好きなレコードをやるよとチャボ。
無事、約束の期間を乗り切った清志郎がチャボのレコード棚から
抜いていったのが、このアルバムである。RCサクセションも
清志郎の体調不良とマネージメントとの対立で、ごたごたしていた
時期の話である。

このアルバムを発表した1ヵ月後、キース・ムーンは死亡する。
アルバム・ジャケットに写るキースが座る椅子には、こう
書かれてある。
「持っていかないで・・・・」
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THINGS GO BETTER WITH COKE

2005-02-13 11:16:52 | THIS SONG
我が国でもなんと、コカ・コーラのCM
ソングを集めたCDが発売される。
どうでもよさそうなものから、気になる物まで
いろいろ収録されている。買うかどうか
迷っているが3月までゆっくり考えよう。

写真のアルバムはあちらのアーティストが歌ったコカ・コーラの
CMソングを65曲収録した物である。何故にジャケがペプシなのか
は問うまい。(笑)曲名がすべて「THINGS GO BETTER WITH COKE」
というのが潔い。アーティストの皆さんの中には「そりゃ、コークを
キめればバッチリさ」と思った人がいたかどうかは解らないが
65曲を聞き終える頃には、コーラが飲みたくなること間違いなし?。

高校1年の夏、毎日のようにコーラ(銘柄はあえて書きません)を
飲んでいた。1リットルの日もあれば500ミリの日もあったが、
飯の前に飲むので、食欲が減退するのだ。にもかかわらず、
体重が5キロ増えた。う~む。私のコーラ好きは傍目にも異常に
映ったようで、大学生になっても友人は私の部屋に
遊びに来るときはコーラを持ってきたほどであった。
ほどなくそれはビールに変わったが。

さて、収録アーティストである。
LEE DORSEY,ROY ORBISON,RAY CHARLES,MOODEY BLUES,
MARVIN GAYE、BOYCE&HEART,ARETHA FRANKLIN,などなど・・・。
ムーディ・ブルースは67年と69年に録音を残しているのだが
音が全く違うのが笑える。
で、ロック者最大の関心はバニラ・ファッジのテイクが2つ収録されて
いることである。ジェフ・ベックがギタリストとして参加している
ことが理由なのであるが、まんまBBAである。
ワウ踏みまくりのベック、バタバタ叩きまくるカーマイン・アピス、
そしてティムの声、もう最高である。

これには収録されてないがザ・フーが録音したその名も「COKE」
という曲もおもしろい。
”COKE AFTER ,COKE AFTER ,COKE AFTER COCA-COLA"
と歌う1分少々の中でピートのギターとキース・ムーンのドラムスが
炸裂するのだが、うるさすぎてCMとしてはちょっと・・・(笑)

久しぶりにコーラでも買いに行こうかな。
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モップス / 御意見無用

2005-02-11 09:40:43 | 日本のロック・ポップス
71年発表のモップス3枚目の
アルバム。何をかいわんやの、
日本ロック史に残る大名盤。

語るべきところは多い。ソウルフルな
鈴木ヒロミツとハイ・トーンの歌唱が冴える星勝の
2タイプのボーカリストがまず素晴らしい。
テンプターズやスパイダースのような
メジャーGSもボーカルをとるメンバーが複数いたが、当時の
洋楽勢に引けをとらないという意味においては、モップスの
比ではなかった。ギタリストでアレンジャーでもある星の存在が
他のGSと一線を隔したのはいうまでもない。

そもそも取り上げる洋楽のカバーからセンスが違った。
ドアーズ、ジェファースン・エアプレイン、エリック・バードン&
ジ・アニマルズといったところを1STでカバーしているのは
他のGSには見られないセンスだ。

冒頭の「御意見無用」、続く「TOWN WHERE I WAS BORN」の
ヘヴィ・ロックにカウンター・パンチをくらい、「GOOD MORNING
GOOD AFTERNOON,GOOD NIGHT」の西海岸のダークネスな
部分がアコースティックな音にまぶされていることに驚く。
破れかぶれの企画モノ「月光仮面」のブルースも当時は斬新な試み
であったはずだ。だが、この余りにもわかりやすいコミックソングが
受けてしまい、こういった側面がパブリック・イメージとして
流布したことがモップスの評価を曇らせることがあってはならない。
「TO MY SONS」はエリック・バードンにも聴いてもらいたい。

映画「野良猫ロック暴走集団’71」で軽トラックの荷台に
和太鼓や機材を積み込んで、「御意見無用」を演奏する
モップスを見ることが出来る。このシーンが実に格好いい。
ストーンズが「TOUR OF AMERICA 」のプロモーションで
トラックの荷台でブラウン・シュガーを演奏しながら走った
のはその4年後。いや、規模は全然違うんですけど。(笑)

モップスの曲にはオリジナル・アルバム未収録曲がかなりある。
カップスのように大箱を期待するのだが、オリジナル未収録を
是非ともまとめて欲しいものである。
「永久運動」が簡単に聞けないのは大問題だ。

このアルバムを発表して2ヵ月後、モップスは後楽園球場で
グランド・ファンク・レイルロードを迎え撃つのだった・・・・。
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楽しい週末

2005-02-09 22:43:55 | DAY BY DAY
2月5日はPANTAの誕生日であったのだが、その日は
土曜日には珍しく、飲みに出かけた。昔、某HPで知り合った
広島在住の方が、転勤してたまたま私の隣町に引っ越してきて
私のことを思い出して、連絡をくれたのが半年前。
彼とのロックンロール・ミーティング、題して「日本の
ロックを語る会」(きわめて後ろ向きに)の第2回であったのだ。

その席で彼が1本のテープをくれた。おそらくトレーダー間に
あまり出回ってないものだと思う。音はそれほどよくないのだが、
私の嗜好にばっちりな2組のバンドのライブが短い時間ながらも
収録されていた。「71年7月17日、後楽園球場かあ、古いなあ」
とか思いながら聴いていたのだが、「まてよ!」私はその
日付けにピンときたのだ。その日は後楽園でグランド・ファンク・
レイルロードのライブが開催されたんじゃないか!。
伝説の雨の後楽園のグランドファンクのライブがあったあの日である。
外国のロックに手を出していない彼はGFRの音源を持ってる
はずも無いのだが、その前座の音を聴けるということは、
なんとなく、伝説の入り口に来たような気分がして、気分が
高揚してきた。しばらく大事に聴くことにしよう・・・。

とか思っていたら、THE WHOの隠密録画DVDが十数枚、一挙に
送られてきた。見る時間がなくて嬉しい悲鳴をあげている。
幸い、3連休があるじゃないか、酒と煙草を買い込んで
WHO三昧の週末を過ごすのだ。顔がニヤけて阿呆のようだ・・・。
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GOLDENROD / SAME

2005-02-08 19:01:07 | ROCK
CS放送で数年前に「ぞくぞく家族」の
演奏を見たときに真っ先に浮かんだのが
このバンド。ゴールデンロッドが68年に
発表したヘヴィ・サイケがこれである。

長尺のインストでメンバーがインプロを
展開しつつも、だらだらというよりは、むしろ
ズシズシと腹の底に何かが溜まっていくような
重い感じが、なんとなく近しいように思えたのである。

このアルバムはスタジオ・ミュージシャンがおそらくは
パーマネントな活動を目的とせず、なんとなく趣味で録音
したのではないかと思う。メンバー3人はカート・ベッチャー
お抱えのスタジオ・ミュージシャンである。一般的に
いわれる「ソフト・ロック」に欠かせない人たちなのだ。
その3人が、クリームよりもさらに重い、トリオ演奏を
聞かせるのだ。ソフト・ロックといわれる楽曲は軽快な
ホーンやストリングスとコーラスが全面に出て、耳当たりの
いいメロディを奏でるイメージがあるが、よく聴くと
ギターは思い切りファズを踏み込んでいたりする。ただ、
ミックスが小さいだけで、スタジオではかなり凶暴な
音でなっていたのではないだろうか?。
かつて、XTCのアンディ・パートリッジは「ブラック・サバス
も小さい音で流せば環境音楽みたいなものさ」と冗談交じりで
言っていたが、ソフト・ロックもマキシマムな音量で聴くと
破壊力はそれ相応のものがあるだろう。ヘヴィな音をうまく
ミックスさせてソフト・ロックに組み込まれ続けた男達が
ただ一度だけ、本当に爆発してしまったアルバムである。

一聴して、印象に残る曲はないかもしれない。が、先に
書いた事を踏まえてこのアルバムに収録されている「KARMIC
DREAM SEQUENCE」を聴いてみればまた見方もかわるかもしれない。
件の曲は過去にメンバーが「ミレニアム」の名前でアルバムに
収録したナンバーで、そのアルバムはソフト・ロックの名盤として
真っ先に名前があがるものである。

どっちが好きかなんて悩む必要はない。
どちらも素敵なのであるから・・・。
現行CDはステレオとモノの両方を収録してある。
コメント (4)
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O.G.W.T

2005-02-03 21:57:18 | DAY BY DAY
新日本プロレスが新しく認定した、タイトルの名前ではない。

ブート・ビデオ屋のカタログを見るとアーティスト名、
画質、収録時間のほかに当たり前だが「タイトル」が
書かれてあった。それは、日時とコンサート会場を
指す場合がほとんどであるが、なかには
OGWTとかDKRCとか、SNLとかTOTPとか書かれてあって、
それが何の意味かわからない時期がしばらく続いた。

そのうちそれがテレビ番組を略した物だとわかる。
THE OLD GREY WHISTLE TEST・・・・。様々なアーティストの
裏映像を集めると必ずこのテレビ番組に出演した時のものを
目にすることになる。20年近く前、某店がおそらく独自に編集した
多種多様なアーティストを集めた2本組約3時間のビデオを購入した。
そこで、初めて動くジュリー・ドリスコール&ブライアン・オーガーや
ムーブ、アーサー・ブラウン、アラン・プライス・セット、
テン・イヤーズ・アフター、ブルー・チアーなどを
見たのだが、アリス・クーパーやウェイラーズの格好よさが印象に
残った。画像は当時としては画期的によかったが、それでも他の
ブート・ビデオに比べての話であり、かなり滲んではいた。

そして月日は流れ、遂に日本語字幕入りの高画質のDVDで
アリス・クーパーとウェイラーズに再会したのだ。
それが「THE OLD GREY WHISTLE TEST 」と題されたDVDである。
ジャケットにはVOL1とあるが、もう続編を期待してしまうくらい
素晴らしい内容であった。71年から84年までに当番組に出演した
アーティストの中から28組が収録されている。

曲を演奏し終わった後のポーズが格好いい?フェリーさんに
おもわず笑う73年のロキシー・ミュージック。かわいらしいエミルー・
ハリスは76年の映像。若々しいトム・ペティはデビュー直後の78年、
テリー・ホールのチンピラぶりがにじみでるスペシャルズ、自分が
目立ちたいだけ(笑)の曲構成が可笑しいエドガー・ウインター。
渋いところでは72年のカーティス・メイフィールドや75年の
リトル・フィートも収録されている。見所は多い。
そうそう、司会のボブ・ハリスも「いい男」(笑)である。

インタビューだけではあるが、「メインストリート・・」発表直後の
ミック・ジャガーや、隠居生活やフィル・スペクターとの
ロックンロール・セッションなどを語るジョン・レノンといったところは
今、振り返ると実に貴重ではないかと思う。

この190分たっぷり収録したDVDがたったの2590円。
VOL10くらいまでお願いしたいところである・・・・。
MUST BUY !
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