回想モードのハリー、その1
10年以上前の話だが、大学卒業後しばらく会っていなかった
後輩となぜか新宿のレコ屋で遭遇。聞けば留年してまだ学生だという。
わざわざ、京都からレコード・ハントとは相変わらず優雅なものだと
思ったが(金に困ったとかいう話は聞いたことがなかった)、
とりあえず、飯を奢ることにして、そいつの話に付き合う。
「この間、コンサートのタダ券もらったんですけど、面白そうにないんで
捨てました。ハリーさん、この人の名前知ってます?」
聞いて絶句。お前はヘヴィ・メタとプログレ命を豪語していて
その名前に反応しなかったのか・・・。
もちろん、私はそのミュージシャンの名前を「プログレ」なんてケチくさい
ジャンルで縛って考えたことなんて一度も無いのだけど、後輩の余りに
狭量な判断に何故か落胆。別に私がそのコンサートに行くのでもないのに。
「ケヴィン・エアーズって知ってます?券あげれば行きました?」
「それ以上言うな・・・。」
回想モードのハリー、その2
これは更に数年遡る。後輩(先の話とは別人)の部屋に久しぶりに
遊びに行くと、彼が1枚のアルバムを取り出した。
「ハリーさん、好きでしょ。このLPあげましょうか?。直筆サイン入り
ですよ。あっ、ダメだ。俺の名前まで入っている。名前がなければ
高く売れるんですけど・・・。」
確かに好きだ。いや大好きだ。でもなんでわざわざ自分の名前まで
入れてもらったサイン入りLPを人にあげようとするのだ?。
サイン入りのLPを眺めながら、ぼんやりと二人でエリオット・マーフィーの
「アクアショウ」を聴いたことを思い出してしまった。
もちろん、LPは貰ってませんよ。(笑)
回想その2のきっかけとなったのが掲載写真のエリオット・マーフィーの
ベスト盤「NEVER SAY NEVER」である。(回想その1はついでに
思い出しただけなのだが)
1995年から2005年までのアルバムの中から10曲と未発表4曲から構成される。
最近のアルバムは国内盤が出なかったり、でても特に宣伝も無く
気付かれてないものもあると思うが、どれもなかなかの出来である。
このベスト盤にはDISC2としてDVDが付いている。
あれ、「PAL」って書いてあるけど我が家のDVDデッキで普通に再生できる
じゃないか、もしかして家のデッキはリージョン・フリーなの?
なんて阿呆なことに気付いたり。(笑)
このDVDが素晴らしい。エレアコ2台にベース、ドラムスの4人での
近年のライブが5曲収められている。CDがここ10年の括りの中のベスト盤
なので、DVDは過去の名曲をライブ演奏したものを収録してある。
簡素なステージだが、演奏と歌の熱気は数多のスタジアム・ロックが
間抜けなバカ者の音にすら思えるほどだ。
オープニングは重要曲「YOU NEVER KNOW WHAT YOU'RE IN FOR」。
マーフィーのライブ盤は数種あるが、ほとんど1曲目に演奏される。
名盤「NIGHT LIGHTS」でも一際、印象に残るナンバーだ。
決定的なのが73年の1STアルバム収録の「THE LAST OF THE ROCK STARS」。
”THE LAST OF THE ROCK STARS,ME AND YOU
ROCK AND ROLL IS HERE TO STAY,WHO'LL BE LEFT TO PLAY"
この一節は今でも私を身震いさせる。
今年、ブルーズ・カバーという思いがけない新譜をリリースした
マーフィーだが、早くも次のアルバムが待ち遠しい私がいる。