以来の、実に15年ぶりの新譜が出た。
BBC録音集やライブ盤が何点かリリースされていたので、15年ぶりと
言われても「そんなに間空いたっけ?」と思ったりもしたが、
やっぱり15年待たされていた。(笑)
近年の来日公演のダレ具合や、たまに目にしたインタビューでのやる気の
無さ加減からして、もう新作を期待していなかったというのもあるのだが
はっきり言って今回の新譜「THE UNFAIRGROUND」は個人的に
全キャリアの中でも3指に入る傑作だと断言できる。
一番好きなのが「WHATEVERSHEBRINGSWESING」なのは固定なので
もしかすると2番目に好きなアルバムになるかもしれない。
購入以来20回近く聴いているが、聴く毎に好きになるアルバムというのは
1年に何枚も出会わないはずだ。
2007年の新譜とは思えない温かみのある録音にまず惹かれる。
使用スタジオや機材、プロデュースといった全てがうまく噛み合わないと
こうはいかない。ホーンやストリングス、アコーディオン等が効果的に
使われているのも一因で、全てがケヴィンの声とうまくマッチしている。
ゲスト陣も豪華でヒュー・ホッパーやロバート・ワイアットという
ソフト・マシーン人脈がその筋の人の琴線をくすぐるのは勿論だろうが
ブリジット・セント・ジョンの参加が目を引く。
ブリジットは2曲に参加しているが「BABY COME HOME」では、ソロ・ボーカルの
パートがあり、ケヴィンとのコーラスがふんだんに聴ける。
これは夢ではないのだ。
ロバート・ワイアットの参加の仕方も面白い。
自分の声をサンプリングしてメロトロンならぬ「ワイアトロン」として
使用。次は(次があれば)加工なしの声で二人のデュエットが聴きたいと
思う欲望が頭をもたげるが、今回の試みは素直に面白いと思う。
若手と言うにはもはや十分なキャリアがあるティーンエイジ・ファンクラブや
ゴーキーズ・ザイゴティック・マンキのメンバーの参加は、
参加した当人にも刺激的だったろうし、ケヴィンにも今までに無い
やる気を起こさせるものだったろう。
過去の曲の再録音もあるが、単なる焼き直しではなく例えば「DEJA...VU」
収録の「TAKE IT EASY」は今作ではタイトルを「RUN RUN RUN」と
変更されているが、オリジナルを尊重するファンを十分納得させる
アレンジである。
ジャケットがもうひとつピンとこない私であるが、それでも左下に小さく
「JOY OF A TOY」に描かれていたカエルを見つけた時は妙に嬉しかった。
私が中学生の時に当時の現役バンドの中で最も嫌いだった
バンドの主犯格のメンバーのアルバム・ジャケットを新聞広告で
見てしまうと、不思議なことにピンとこなかったジャケットが
素敵に思えてきた。(笑)
全く素敵なアルバムだ。