HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

THE RESIDENTS / MEET THE RESIDENTS

2004-12-29 21:52:28 | ROCK
74年発表のレジデンツの1ST。
レジデンツを始めて聴いたのは
「エスキモー」というアルバムである。
渋谷陽一氏のFM番組「サウンドストリート」
で、取り上げられたのだ。ツェッペリンと
ビートルズだけではなく、今思えばこう言う
処にも目配りしていたことは、流石と思わせられる。
現に私のような、その後の購買層を育てていたのだから。

デビューから今にいたるまで謎が多いグループ。
ライブも数多くこなしているが、メンバーは皆、目玉の
被り物をしている。ファウストは情報を開示しない事で
グループの神秘性を保った時期があったが、情報が多いにも
関わらず、未だにこのグループのことをどこまで知っているかと
問われれば、情けない返答しか出来ない私である。

ほとんど全ての音楽の要素が詰まっているのではないだろうか?
テクニックをひけらかすシーンは皆無だが、様々な音楽の
断片の編集能力、アイディアは抜群だ。ビーフハートのファンから
マヘル・シャラル・ハシュ・バズのファンまで、飲み込める
許容量さえ感じる。私のフェイバリットは「INFANT TANGO」だ。
各人がバラバラに演奏しているように見え、小節数さえ
無視しているように見えて実にしっかり構成されている。
たった5分28秒でこの世の音楽の全てを表現しているかのようだ。
ちょっと時期はずれだが「SEASONED GREETINGS
(気の利いた挨拶)」という曲もある。
「メリー・クリスマス、大騒ぎする人は誰もいない。私以外は・・」

それにしてもこのジャケットである。初回プレスが
1000枚だったというから大事にはならなかったのだろうが、悪意のあるジャケットである。
巷にあふれ、ビートル・マニアを狂喜させている
「ザ・ビートルズ’64BOX」にそっと忍ばせたくなるアルバム。
洒落は大事である。

そういえば、97年に出たレジテンツ25周年記念の4枚組BOXの
各CDにはそれぞれこんなタイトルがついていた。
WASINGTON、JEFFERSON、LINCOLN、ROOSEVELT・・・・・。
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THE KINKS / PRESERVATION ACT1

2004-12-29 21:03:00 | ROCK
73年発売のキンクス13枚目のアルバム。
キンクスに関しては、全アルバムを
とりあげたいくらいだが、個人的に
思い入れがあるので、今回はこの
アルバムを選んだ。

今は無きSMSレコードがキンクスのPYE時代を
再発して、ホッとしたのもつかの間、RCA時代が
なかなか手に入らなくて悶々とした日々をすごした20歳のころ、
意を決してこの「ACT1」の原盤を7800円で買った。
UKオリジナルでもコーティングでないことに、ちょっとがっかり。
「マスウェル・ヒルビリーズ」の時はなんとも思わなかったのに。
チャック・ベリーの項で書いたが、貧乏時代にこの買物は
なかなかチャレンジングだったと思う。
で、一度入手すると今度はやたらと見かけるようになる。
今までにLPだけで4回は買った。1枚はプレゼント、後の2枚は
好き者の同志に売るためだったが、何れも私が
最初に買った値段の半分以下であったところが泣ける。

さて。このアルバムは68年に発表された大傑作
「ヴィレッジ・グリーン」の続編ともいえるもので、
件のアルバムを更にミュージカル展開させたものだ。
このアルバム発売後のライブを裏モノで見たが、女性コーラスを
大フューチャーするは、ホーン・セクションが活躍するは、
まさにミュージカル、ロック・オペラであった。
このアルバムと次の「ACT2」では様々なキャラクターが登場する。
地上げ屋、悪徳資本家、政治家・・。
まずは地上げ屋フラッシュの登場。美しい村の風景が歌われ、
日々の流れに無関心な労働者や、第三者を決め込む流れ者、
司祭の戒めや、村を良くしようとする政治家の演説と続くが
村の取り壊しが始まる。ここで第一幕が終わり、半年後に
2枚組LPの第二幕がリリースされる。

さすがにやり過ぎである。(笑)メンバーはやる気を失うし、ファンも
どんどん振り落とされ、売上は落ちる。だがキンキー・マニアは
この時代の諸作品が大好きなのである。75年3月の
「石鹸歌劇」を挟んで同年11月「不良少年のメロディー」が発表される。
RCA最後のアルバムでキンクス最後のロック・オペラ。
この不良少年こそ後の「地上げ屋フラッシュ」だというのだから
レイ・デイヴィスのこだわりは並大抵のものではなかったのだ・・・。

キンクス2度目の来日公演の1曲目、レイが一人で
このアルバム収録曲である「美しきジェネヴィーヴ」を歌い始めたとき、
多くのファンは感動の余り打ち震えたのである。
以前ライノから出た「ACT1」「ACT2」をセットにして発売されたCDは
「富と墜落」のブリッジ部分が完全別バージョンなので
マニアは入手しておくとよい。

趣味と言うほどではないが、日なたぼっこは大好きだ。
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限りなく透明に近いブルー O.S.T.

2004-12-27 22:36:15 | 日本のロック・ポップス
79年に発売された映画のサントラだが
映画を見ていなければ、小説すら
読んでいない。が、ロック者には
なかなか興味深いアルバムなので
紹介する。

カルメン・マキの映画のテーマともいえる日本語歌詞の
歌を除けば、そのほとんどが洋楽のカバーで占められる。
まずは山下達郎の「GROOVIN'」。ラスカルズのBOXを
監修したこともあるほどの、ラスカルズ・ファンである達郎の
面目躍如たるカバーだが、後にもう一度カバーし直し、
ソロ・アルバムに収録される。私はこちらのほうが好きである。

井上陽水は2曲カバーしているが2曲とも、ポール・サイモンの
カバーである。S&Gの一般的なパブリック・イメージとは
別の、ポール・サイモンのどうしようもなく影のある世界に
陽水は惹かれていたのではなかろうか?

ラヴィン・スプーンフルのカバーが2曲あるのもポイントが高い
ところ。「DAYDREAM」をスライドを駆使し、歌を重ねる
箇所をつくるなど、簡素なように見えて凝った作品に仕上げた
有山淳司、「YOU DIDN'T HAVE TO BE SO NICE」を優しく歌う
瀬川洋、どちらも甲乙つけがたい出来である。
このアルバム、キティから発売されたこともあってか上田正樹は
もちろん、サウス時代の盟友である中西康晴も参加している。
そうそう、キャストにある正木五郎はサウスのドラマーの人なんだろうか?

それにしてもカルメン・マキは、70年代の日本の映画には
欠かせない「歌」「声」だったかもしれない。
映画「太陽を盗んだ男」で私はカルメン・マキとボブ・マーリーを
知ったのだから。

映画には使われながらサントラに収録されなかった曲がある。
めんたんぴんの佐々木恭平が歌う「YOU REALLY GOT ME」と
「HONKY TONK WOMAN」である。再度CD化する際には
是非とも収録していただきたいと切に願う・・・。
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FRED NEIL / SESSIONS

2004-12-27 22:04:59 | ROCK
フレッド・ニールが68年に発表した
4作目、ソロとしては3作目にあたる作品。
アメリカのフォーク・シーンを語る上で
避けて通れない男で、ニルソンで有名な
「うわさの男」の作者といえば、ああ、
あの曲かと思い浮かべる人もいるだろう。

ソロとしての第一弾「BLEECKER&MACDOUGAL」は
アコースティック・ギターでフォークというよりも
よりブルージーな曲を演奏し、ドラムレスにもかかわらず
聴く者に不思議なビート感を残した傑作であった。
この「SESSIONS」は文字通り、スタジオ・ジャムを
録音した物である。が、適当にだらだら演奏する様子は
全く無く、ニール以外に4人のギタリストと1人のベーシスト
による緊迫した瞬間が切り取られている。

またもやドラムレスであるが、ビートがしっかり音に
刻まれている。ニールの太く低い声が澄んだギターの
音によくあう。醒めきったジム・モリスンというのは
あたらずとも遠からじだろう。驚くべきは、曲の構成が
しっかりし、歌メロもしっかりしたジャム・セッションで
全7曲中5曲がワン・テイクであることだ。参加者のセンスと
技量が抜きん出ているが故に可能なレコーディングである。
広いスタジオで録られたのだろう、ナチュラルなエコーが
このアルバムに適度なサイケデリックな要素を与えているのも
特筆すべきだ。

ディノ・バレンテやティム・バックリーのファンは必携であり、
より深く進みたい向きには、先にあげた1STもお勧めである。
ディランの才能をいち早く見抜き、カーレン・ドルトンに
多大な影響を与えた男のクールな1枚である。
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ブランキー・ジェット・シティ / BANG!

2004-12-26 12:22:55 | 日本のロック・ポップス
相方が台所で料理をつくりながら
何やら口ずさんでいる。
「恐ろしい国が出来た人口わずか15人
それも全員元気の無い単車乗りばかりがそろっている。」
おいおい、ウルトラQでも始まるって言うのかい?(笑)
四六時中、好きでもないバンドの歌が流れていて
覚えてしまったのだろうが愛情が無いと言うのは
恐ろしい物である。

イカ天を見ることができなかったのと、当事邦楽に対して
興味を失っていた時期だったのが重なって、BJCをデビューから
追いかけていたわけではなかった。偶然テレビで見た「青い空」の
プロモとライブで頭を撃ち抜かれてしまった。
「なんでもっと早くこのバンドに気づかなかったんだろう?」
照井の趣味であろう、ロカビリーを軸にした作品から、ベンジーの
音響系にまで目配りした音作りをする後期に至るまでバンドの
姿勢は全く変わらなかった。
自分達の描く世界こそが最高であるという、アグレッシブな音の
快楽主義者の姿がそこにあった。身の周りの安っぽい
飲み物の名前から車に至るまで、選ばれた言葉が曲にのっかると
宝石のように輝く。
ベンジーのグレッチやレス・ポールは、覚えやすい簡単なフレーズを
幾重にも重ねることで、1つの曲中に様々な印象を聴く者に残す。
ベンジーのギターにサイケデリックを感じられない人は、一体
今まで何を聴いていたんだい?
そんなバンドを支えたのは中村達也の素晴らしいドラムスである。
ハードな曲でもバラッドでも手数の多いドラムを叩くのだが、それが
歌やギターを邪魔することが無い。こういうドラマーは稀有である。
彼のタイム感というかリズムの取り方は独特な物があって、
8で刻むところを4で刻んでみたり、小節に関係なく
リズム・キープがハイハットとトップ・シンバルを行き来したりする。
ポリスのスチュワート・コープランドにも似た、まさに生き物の
シンバル・ワークである。

このバンドには解散は無いと思っていた。
クルマ好きがいつまでも車をいじっているのと同じように、
例え売れなくなっても3人で音を出し続けると思っていたのだが
現実は違った。バンドの維持と言うのはかくも
難しく厳しい物である。

BJCのアルバムは1ST以外なら何を選んでも良かったのだが
今の気分でこの2枚目にした。夜の富士急ハイランドで家族連れの
BJC御一行様に出くわしたことがある。
あれから随分と時間が経ってしまったものだ・・・。
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KEITH CROSS & PETER ROSS / BORED CIVILIANS

2004-12-25 22:32:47 | ROCK
ハードな音作りのプログレ・グループ
として知られるT2のギタリスト、
キース・クロスとブラック・キャット・ボーンズに
在籍したこともあるピーター・ロスが
72年に発表した唯一のアルバム。
「時の旅人」という邦題が付けられていた。

T2の大仰な作風が苦手なのだが、ここでの
キース・クロスのギターは抑制が効いている。
このアルバムを手にする人の多くはキース・クロスの
ギター目当てであるかもしれないが、ここにはアメリカ
のフォークやSSWの影響を、消化した紛れも無い
ブリティッシュ・フォークが展開され、肩透かしかもしれない。
が、そこがいいのである。

面白いことにというか、当然なのだが二人の作風の違いが
如実に表れる。光と影を曲中に再現する長尺ナンバーを
書くキースと、一聴すると地味だが印象に残る切ないメロディーを
書くピーター。私の好みはピーターの作風なのだが、二人の
曲がバランスよく一曲ずつ交互に配置され、最後の共作曲で
幕を閉じる頃には、このデュオがこの1作しか残さなかったことが
残念に思えてくる。

アメリカのSSWのファンにも聴いてもらいたいし、
プログレッシブ・ロックのファンにも聴いて欲しい。
一般的に両者のリンクはほとんど考えられない(笑)のだが、
その両者を満足させる稀有なアルバムである。
ジャケットはどうしようもなくブリティッシュ・ロックの
それであるが・・・。

このアルバムにはニック・ロウのクレジットがある。
残念ながら私にはどこらあたりに参加しているのかは
何度聴いてもわからない。残念!!でも斬られはしない。
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TYRANNOSAURUSU REX / A BEARD OF STARS

2004-12-24 20:58:16 | ROCK
70年3月に発売された
ティラノ・ザウルス・レックスの
4枚目にして最後のアルバムであり、
新しい相棒としてミッキー・フィンが
参加した最初のアルバムである。
地味なジャケットで損をしているが
ティラノ時代で一番出来のよいアルバムではなかろうか?

スティーブ・ペレグリン・トゥックとのコンビで
アコースティッツクを基調にした摩訶不思議なサウンドを
アルバムに刻んできたが、マークはそろそろエレクトリックの
重要性に気づいていたし、ドラッグ癖の酷いスティーブを
解雇する時期にも来ていた。マークが電化を図ったことで
曲の単純化がすすみ、よりリフやメロディのはっきりした
曲が多く収録されることになった。もちろん、チープな
オルガンや、テープの逆回転といった小技も活かされている。

「WOODLAND BOP」「FIST HEART MIGHTY DAWN DART」
「BY THE LIGHT OF THE MAGICAL MOON」といった
T.REXとなってからも演奏された重要曲を多く含むこともさること
ながら、一番の聞き物はアルバム最後を飾る「ELEMENTAL
CHILD」である。この長尺のナンバーはマークがエレキ・ギターで
はじめて意識的に曲中でインプロを展開した曲である。
手癖だらけで大したソロは残さなかったマークではあるが、
この曲のひらめきは素晴らしく、今年リリースされたBOXで
見ることが出来た映像(71年)でもそれは確認できる。
このアルバムで電化に自信を持ったマークは、更にそれを
推し進め9ヵ月後の同年12月に、その名も「T.REX」という
タイトルのアルバムを発表する。

ティラノ時代のフェイバリット・ナンバーのひとつに
「DO YOU REMEMBER」がある。69年7月発売の4枚目の
シングルのB面に収録された曲で日本では、90年に
CDリリースされた「アンオブティナブル T.レックスVOL.2」
が初出だと思う。ティラノザウルス・レックスからT.レックスへ
変貌を遂げる丁度中間での興味深い音源である。
今回の紙ジャケCDはボーナス・トラックが充実していて
「ユニコーン」にこの曲のデモが収録されている。
そこで聴ける歌声はマークではなく、なんとスティーブによるもので
あった。ミッキーと比して、より音楽的であろうとした
スティーブの姿に驚かされるのも一興。

今すぐ今回の紙ジャケCDを全て購入することをお勧めする。
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GONG / CAMENBERT ELECTRIQUE

2004-12-23 22:43:12 | ROCK
ソフト・マシーンのオリジナル・メンバーである
デヴィッド・アレンが中心になって結成された
ゴング。フランスのレーベルBYGの下、
71年末に発表された2枚目のアルバム。

1STでのアンダーグラウンド・フォーク臭いっぱいの
とっちらかり具合に比べ、この2枚目ではジャズ的要素
(もしくはプログレ的)を持つミュージシャンを
加えたことで、演奏の質と曲の出来が格段にあがった。
この質の上がり具合が肝であり、微妙なところである。
スティーブ・ヒレッジが参加して「ラジオ・ノーム」3部作
くらいまでが、バンドの持つ微熱がわかりやすく
伝わってくる。その後に参加するミュージシャンは
テクニシャン揃いで、「ゴング」が持っていた自由度を
減退させてしまったような気がする。

このアルバムは今聴いても、古臭さを感じない。
それは、自由さと実験の混ざり具合がうまく反映されているからでは
なかろうか?フェイバリット・ナンバーは勿論
「YOU CAN'T KILL ME」。今でも演奏される代表曲である。
続く「I’VE BIN STONE BEFORE」のめくるめく曲調の
変化も実に楽しい。アレンの脳内宇宙は果てしなく、
よくゴングを語るときに使われる、SF、ファンタジー、
そういった要素(漠然とした物であるが)を是非感じ取って
いただきたい。

掲載写真の上がこのアルバム、下は似たようなタイトルの
「CAMEMBERT ECLECTIQUE」。未発表曲やテイク違いが
収録された96年に出されたCDである。アレンのソロに
収録された曲も含む15分に渡るデモ集が楽しい。あわせて
聴いていただきたいのでここで紹介する。

それにしても。
中ジャケのピプ・パイルのガーター姿には参った。(笑)
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THE J.GEILS BAND / THE MORNING AFTER

2004-12-23 14:11:51 | ROCK
69年に結成され、「スーツが泥まみれになるのは
イかさない」という理由でウッドストック
出演依頼を断ったクールなバンドである。
これは71年発表の2枚目。別に1枚目でもいいし、
ライブ盤でもいいのだが、男の子なら「2枚目」というわけで
選んだ。ピーター・ウルフもそのほうが喜ぶだろう?(笑)

不思議なバンドである。ギタリストのJ.ガイルズの名前を
冠しているが、目立つのはマジック・ディックの要所で鳴り響く
ハープである。勿論J.ガイルズもバッキングにリードに
活躍するが、マジック・ディックのハープが、数多あるR&Bや
ソウルに基本を置く白人グループとの差を明確にしているといえる。

バンドはアトランティックと契約していたが、78年にEMIに移籍する。
この頃からキーボーディストのセス・ジャストマン中心に
バンドの音作りがされるようになり、ヒット曲を生むものの、
対立するピーター・ウルフは脱退を余儀なくされ、失望させられたものだ。

バンドの音作りはかわってもピーター・ウルフの歌声は
変わらなかった。このアルバムはまだ、バンドが成功を目指して
一丸となっている。ジャケットを見て欲しい。
貧乏バンド、しかも大所帯バンドのツアーはこんなものじゃないだろうか。
1曲目のジャンプナンバー「お前はいらない」が
最高である。ウルフ-ジャストマン・コンビの最高傑作。アメリカで
シングル・カットされたかどうか知らないのだが、バンド存命中の
ベスト盤にも、ライノが編んだ2枚組CDベストにも収録されなかった。
私はドイツ盤の7インチを持っているが、ジャケットも格好よく、
今でもこの7インチをよく聴く。
この1曲目当てでアルバムを買う価値があると言ってもいいくらいだ。
このアルバム収録曲で1番有名なのは
バレンティノスのカバー、「愛をさがそう」だ。ボビー・ウォマックに
一歩も引けをとらないピーター・ウルフこそ、このバンドの
真の顔であり、最高のボーカリストだと改めて思った次第。

サングラスに髭面がトレード・マークであったピーター・ウルフは
フェイ・ダナウェイと結婚していたことがある。
実にイカした男だ。
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ELVIS PRESLEY / ELVIS PRESLEY

2004-12-21 23:43:19 | ROCK
PANTAのアイドルの一人が初期の
プレスリーであったのは有名な話である。
ブログでPANTAを取り上げたついでではないが
キング・エルビスを取り上げてみた。

これがエルビスのデビュー・アルバムで56年の発表。
RCAからの発売であるが、それ以前はサン・レーベル
からシングルを発売していた。サン時代の「THAT'S ALL RIGHT」
「MYSTERY TRAIN」でのスコッティ・ムーアのギターは
素晴らしく、エルビスの歌唱もさることながら
強烈な印象を残した。それはこのアルバムでも同じだ。
違うのは、幾分カントリーくささを残した55年当事と違い
エルビスの歌唱が一段とワイルドで、エモーショナルで
あることだ。ストーンズはキースに全てのリズムを預けるというが、
歌い手に全てのリズムを預けているのでは・・・とさえ
思える表現力が初期のエルビスにはある。
バラッドははっきり言って退屈な場面もあるが、
ジャンプ・ナンバーでの破壊力はちょっと類を見ない。

エルビスの歌い方に影響を受けた歌手は多い。90年代以降の
アーティストで一番私が熱心に聴いたのが、ジョン・スペンサー・
ブルース・エクスプロージョンである。勿論ジョン・スペンサーの
歌唱にもプレスリーの影響は顕著で、
それが爆音の90年型サウンドに乗るのだから
気持ちいいったらなかった。

このアルバム・ジャケは後にクラッシュのロンドン・コーリングの
モチーフになるし、59年の「ELVIS' GOLD RECORDS VOLUME2」
のジャケットはロッド・スチュワートやボン・ジョビに
真似されることになる。
70年代のプレスリーのイメージが、物真似コンテストに
おける一番真似しやすいプレスリーなのだが、50年代の格好よさは
ちょっと真似できないだろう。

サン時代も含めた50年代の集大成BOXがあるが
(全く退屈しません)それじゃあちょっと、という人は
この1STと、サン時代だけを集めたアルバム、
あとオリジナル盤では69年の「ELVIS IN MEMPHIS」をお勧めする。
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PANTA / PANTAX'S WORLD

2004-12-21 23:07:17 | 日本のロック・ポップス
PANTAのソロ・アルバム、それも初期の物は
なかなか手に入らない時期があった。
「どこ探してたんだよ」と言わないで欲しい。
安価な中古でしか買えない貧乏人だったので。
最初にCD化された時、一番の懸念は
「走れ熱いなら」の金ピカ・ジャケが
どこまで再現できるかであったが、私好みではなかったので
これのアナログは今でも保管してある。近年の紙ジャケは
幾分ましな印刷になったようである。

「マラッカ」をPANTAの最高傑作に挙げることにどうも
合点がいかない。「つれなのふりや」や、「極楽鳥」は
最高なのだが、それまでなのだ。その点、76年のこの1STは
捨て曲なしの全7曲があっという間に、駆け抜けてしまう。
オープニングの一撃「屋根の上の猫」とエンディングの
大作「マーラーズ・パーラー」に挟まれた5曲の捉え方によって
聴く人の評価が別れる。本当にバイクに乗って夜道(余り
道は良くない)を疾走する気分になる「三文役者」、隠れた
名ロッカ・バラッド「明日天気になれ」が、大好きだ。
明日なんかどうでもいいのだが、それでも雨よりは
晴れたほうがいいという、投げやりな中にも漠然とした
小さな希望ってのは誰の心の中にもあると思う。
悪態をつきながらも、誰かに声をかけて欲しい(できれば
綺麗な女性が望ましい)もどかしさ。そんなこんなを
見事に集約した「明日天気になれ」はPANTA作品中、最も
過小評価されている作品ではなかろうか。

軽い音のようにも思える、PNTAX'S HORNも実に良い。
サックスよりも、トランペットがメインの構成がクールだ。
妹尾隆一郎のハープとの相性もトランペット・メインだからこそ
で、サックス・メインだと困ったことになったかもしれない。
チャーのギターはそれほど目立ってない。「反逆の軌跡」にも
参加しているがそちらのほうがギターの音は目立っている。
メインの2曲「屋根の上の猫」と「マーラーズ・パーラー」に
TOSHIがパーカッションで参加しているのは、なるほど、
重要曲での彼のサポートは欠かせなかったと言うことか。

私の好きな3枚はこの1ST、「1980X」「クリスタルナハト」だが
ファンはレア曲の存在を知っている。いつか「朝を呼ぶ男」と
「ギアード」のスタジオ・バージョン、もちろんPANTA&HAL時代の
発掘録音で聴きたいものである。


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今年の収穫 その2

2004-12-20 21:36:04 | DAY BY DAY
その2は復刻・発掘音盤編。単に紙ジャケ化されたものではなく、
何らかの初出音源や映像が含まれた物、初CD化されたものから
選ぶことにする。

01 ザ・ルースターズ/ VIRUS SECURITY
 CD27枚、DVD5+1枚の大箱。オリジナル発売以外に
 灰色リリース物も多いバンドだったが、こうして集められると
 圧巻である。今年の再結成ドキュメントのDVDが素晴らしく
 この箱の中では今のところ、一番リピート回数が多かった。
 「LEATHER BOOTS」1曲が抜けているくらいでガタガタ言うな、
 どうせ、CDで持ってるでしょ。

02 GEORGE HARRISON / THE DARK HORSE YEARS 1976-1992
 もちろん、CCCDの国内盤は無視しました。アップル時代だけでは
 なく、ダーク・ホース時代も素晴らしかったことを再認識。今ごろ
 になってDVDが単体で発売されたのが憎らしいが、大好きな
 「THIS SONG」のプロモが高画質で見れて嬉しかった。日本公演の
 映像が数曲収録されているのも驚きであった。

03 はっぴいえんど / はっぴいえんどBOX
 はっぴいえんどのお宝ライブ音源がCD2枚分
 収録されているだけでありがたい箱である。
 付属の冊子が力作で、活字が多くこれだけの
 ものを作るのに要した労力を考えると、眩暈がする。

04 HERON / HERON + SINGLE
 韓国ではCDになっていたが、幻のシングルを含めてCD化されて
 意義は大きい。エンボス紙を使った丁寧なジャケットも素晴らしいが
 シングルを当時のジャケトを再現して、本体とは別に8cmCDで
 封入するアイデアがいい!。値段は高くなったけど・・。

05 NEIL INNES / TAKING OFF
 1500枚限定で世界に先駆けて日本で初CD化、しかも紙ジャケ。
 マスター紛失のためアナログ起こしであるが、ニール承認である。
 後に輸入盤で2IN1仕様で発売もされたが、
 「BOOK OF RECORDS」と共に単体で持っている事実が嬉しいのだ。

他には、ROGER MORRIS/FIRST ALBUM、頭脳警察/MUSIC FOR 不連続線、柳田ヒロ/HIROCOSMOS、
CHRIS BRITTON / AS,I AM、は何度も聴いたし
MC5、T.REX、FACESの箱も充分楽しんだ。
MEDICINE HEADの一挙3枚のCD化や、
ボーナス満載のTYRANNOSAURUS REX(いずれ本編でとりあげる
予定)、THE CLASHのLONDON CALLINGレガシー・エディションと
なかなかの1年ではなかったろうか。
FRANK ZAPPAの新たな発掘路線は長く続いて欲しいし、2005年も楽しみだ。
GRATEFUL DEADの箱を未入手なのだけが悔やまれる。ああ・・・・。
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PUFFY / JET CD

2004-12-20 20:09:22 | 日本のロック・ポップス
冗談ではない、大マジである。(笑)
古今東西を問わず、プロデューサーや
コンポーザーは自らの曲を女性グループを
使って世に出すケースが多い。
パフィもそういう括りだと話は簡単だ。

もちろん最初はそうだったかも知れないが、
彼女たちの「キャラ立ち」は目覚しく、それなりの
自己主張と、周囲のスタッフに恵まれたことで
この名盤を残すに至った。

パフィのライブを実は2度見たことがある。
「チケットは手配します。往復の運転はしなくていい、後ろで
ずっとビール飲んでていいです。金だけ払ってくれれば。」
という誘いに乗って出かけたわけだが、そのライブが
なかなか良かった。テレビ中継が入っていて後で放送されたものを
見ると、我々のバカ面が何度も映って恥ずかしかったものだ。
このアルバムが出た後のライブということもあって
オープニングS.E.はウィングスの「JET」であった。
そこからアルバム1曲目の「ジェット警察」に
繋がるのが実に格好良くて痺れたものだ。
ザ・フーの「無法の世界」を想起させる曲で、何しろジェット警察と
言う位で破壊力は抜群だ。


さすがにアルバムを通して聴くと、シングルになった曲と
そうでない曲の出来の落差はある。
が、女性アイドルらしくない、とんでもない
曲も含まれているところがパフィなのだ。「小美人」という曲が
ある。曲の前半がブラック・サバス、後半がキング・クリムゾンという
とんでもない展開におもわずにんまりである。

私のフェイバリットは「サーキットの娘」である。
作者の奥田民生バージョンは後から発表されたが、
見事にドライブするもののパフィ・バージョンの
完成度には及ばなかった。
エキゾーストノートをカウント代りに曲が始まるというアイデアや
マイナー6、マイナー7、メジャー7、ディミニッシュに
オーギュメントと実に凝ったコード進行でスピード感溢れる
曲を演奏するということにただならぬ「凝り方」を感じる。
間奏以降のギロのリズムの刻みは3パターンも変化するのだ。

それやこれをパフィは見事に歌いこなした。
今やアメリカのアニメ・チャンネルでは大人気だという二人。
未だになんとなく気になるのだった。
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箱庭的快感

2004-12-19 22:02:01 | DAY BY DAY
フラワー・トラベリン・バンドと
スピード・グルー&シンキの紙ジャケCDが
届いた。実に丁寧に作られている。

FTBの「メイド・イン・ジャパン」の
ダンボール・ジャケが素晴らしい。
当時のジャケットのようにダンボールに
新聞紙が貼り付けてあるし、中には折田育造(当時の
ワーナー・パイオニア洋楽担当、今は多分まだポリドール
社長)宛にこのアルバムに対する意見を送れるように
封入してあったポストカードまで再現されてある。

「メイク・アップ」のアウター・カバー入りのLPを
見たのは一度きりだった。私の1年後輩で2歳年上(笑)の
ヤツが卒業前に東京にレコードの買いだしに行った際の
戦利品であった。出合った時はそれほどロックに精通している
ように見えなかった彼がこのブツを入手したことに
我々は軽い嫉妬を覚えたものだった。(笑)
今回のCD特典のアウター・カバーも実によく出来ている。
買い直しは必至なのだ。

雑誌「ストレンジデイズ」を読んでいて嬉しい記事があった。
大田区にある印刷会社、金羊社のことだ。私は最初の仕事を
やめて半年弱フラフラした後、この会社の総務関係の仕事に
就きかけたことがあった。面接していただいた方々は実に
いい人たちであったが、私の身勝手で結局この会社には
就職しなかった。今から10年以上前の話である。
会社を案内してもらった時に、アルバム・ジャケットと
思しきものの校正刷りが幾つかあったのを見て「ああ、
こういうのも造ってるのか」と思った。
「ストレンジデイズ」によると、オーディオ&ビジュアル関連の
国内印刷シェアの40%を占めると言う。

担当者のインタビューが面白く、制作の苦労話と共に
今まで制作した思い出のジャケットとしてストーンズと
ジェスロ・タルを挙げていた。ジェスロ・タルは特殊ジャケットが多く
大変だったことは容易に想像がつく。私もジェスロ・タルの
紙ジャケCDは相当数購入したが、どれも素晴らしい
出来映えだった。

あまり規模の大きくない印刷会社だったと記憶するが
印刷会社というのはそういうものかもしれない。
これからも私達を楽しませるブツの作製を期待すると共に
ますますの発展を願わずにはいられない。

(掲載写真はFTBのシングル盤「SATORI」)
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SEEMON & MARIJKE / SON OF AMERICA

2004-12-19 14:46:10 | ROCK
ザ・フールのアルバムが全く売れなかった後に
シーモン&マーレイケの二人は世界各地を
放浪する。アメリカに戻った二人が再び
グラハム・ナッシュのプロデュースで72年に
発表したのがこのアルバムである。

音楽の質は格段に進歩している。
どの曲もポップスとしての完成度は高いし、その上
シーモンのマルチ・プレーヤーぶりに驚かされる。
バス・クラリネット、バラライカ、ブズーキ、バクパイプ・・・。
60年代半ばのブライアン・ジョーンズがストーンズの
曲に対して行った味付けにも似た、素晴らしい貢献である。

ザ・フールにくらべてグラハム・ナッシュが本腰を入れて
プロデュースしたというのは参加したミュージシャンを
みてもわかる。リタ・クーリッジ、ジョニ・ミッチェル、
ニック・デカロ、ブッカー・T・ジョーンズ。
アレンジからコーラスにいたるまでよく練られていることは一目瞭然だ。
曲調もカントリーあり、タンゴあり、中近東風ありとバラエティに
富んでいる。ブッカーT.が参加したトラックはソウル風インストで
ウォーに近い感じだ。どこを旅してきたのかは知らないのだけど
世界の音楽を吸収した、さながら見本市のようでもある。

音楽に対する意欲と成熟において、ザ・フールの頃から
格段の進歩を遂げた二人であったが、このアルバムも
全く売れなかった。二人は75年に別れ、その後は音楽活動を
行っていない。もしこれが売れて次回作があったならばと
想像すればするほどで残念でならない・・・。
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