ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/04/21 歌舞伎座昼の部②「男女道成寺」「菊畑」

2007-04-25 23:58:48 | 観劇

3.「男女道成寺(めおとどうじょうじ)」
道成寺物の二人で踊るバージョンのひとつ。道成寺の鐘の供養に現れた二人の白拍子が奉納舞いを舞ううちに、実は桜子が男だとわかってしまい、そのまま狂言師左近としての姿のまま男女で踊るというもの。ひとりが女方で踊り、ひとりが立役で踊るのが面白い。
獅童が「聞いたか聞いたか」と言いながら先導してきた所化には「當年祝春駒」で並んだ勘太郎、七之助、種太郎が。台詞回し抜群の猿弥や若手の宗之助も加わって楽しい所化のやりとり。

道行はなし。いつもより鐘が舞台中央に吊られている。紅白の幕が落ちると白拍子桜子の仁左衛門と花子の勘三郎が金の烏帽子姿で鐘をはさんで静止している。ふたりとも美しい~。それだけで溜息もの。仁左衛門は「先代萩」の八汐もコワイけど綺麗だったが今回はもっと綺麗~。鐘を睨むところは八汐さながら凄みがあるけど、まぁ一応は白拍子ですからねぇ。勘三郎の花子は頬が「鏡獅子」の時よりほっそりしていてびっくり。ダイエット継続成功のようだ。襲名披露の道成寺の花子よりも綺麗になっていて嬉しい。

烏帽子をとるあたりで股をひらいた裾捌きになってしまい(というかわざとそうして笑いをとり)、所化たちに見破られて囲まれる。それに隠れて鬘を狂言師のものに取り替えてという算段(筋書きにあるようになるわけないと思った!)。
赤い桜子の着物姿で野郎頭になってニコニコ登場するともうすっかり場をさらってしまっている。こういう愛嬌いっぱいのところが仁左衛門の魅力だ。

愛嬌の部分を仁左衛門に任せて、勘三郎の花子はひたすら神妙に踊る踊る。これがまた観ていて気持ちがよい。仁左衛門は男姿になった後は黒い袴を履いているが、上には花子と同じ柄の着物が出ている。ふたり並んで踊る場面はけっこう少なく、分担して踊ることが多い。
左近が踊る鞠歌のところ、鞠をつきながらしゃがんで回るところも長身を小さくしているのが可愛いと変に反応してしまう(^^ゞ二人が持つ小物にそれぞれの紋が入っているだけでなく、鈴太鼓など仁左衛門の方が一回り大きいのではなどとしっかり比べて楽しんでもいた。
最後に鐘の上に登るのは勘三郎だけ。白と銀の鱗模様ではなく赤と金の鱗模様にぶっかえって下を見る見得。そして仁左衛門は鐘の下で黒と金の鱗模様で立役のぶっかえり姿で黒衣さんが裾を大きく広げる。そこから鐘の上の花子を見上げる見得。これはかなり派手に美しい。
「当代人気役者ふたりの「男女道成寺」で目が覚めた。「頼朝の死」でドーンと暗くなっていた気分がパアーッと華やかになって、いよいよ錦之助襲名の演目「菊畑」につながる気持ちの準備もできたというもの。
舞台写真は最初の女方姿で並んだところと狂言師姿になってから並んだところを各一枚購入。これははずせないでしょう。

4.「鬼一法眼三略巻 菊畑」劇中にて襲名口上申し上げ候
「菊畑」は昨年の秀山祭千穐楽夜の部で初見(感想はこちら)。
今回の配役は以下の通り。
虎蔵実は牛若丸=信二郎改め錦之助
智恵内実は鬼三太=吉右衛門
笠原湛海=歌昇 腰元白菊=隼人
皆鶴姫=時蔵 吉岡鬼一法眼=富十郎
うーん、今回の舞台を観てしまうと前回の「菊畑」がかすんでしまった。吉右衛門の智恵内と富十郎の鬼一のやりとりは台詞回しも耳に心地よく、お互いを見合って決まるところも息が合っていてさすがだった。
錦之助の虎蔵は花道の登場から客席がどよめく。正統な二枚目がよく似合う。台詞回しも安心して聞いていられる。染五郎は歌舞伎ではいつも声が裏返らないかハラハラしながら聞いている。このへんがやはり錦之助がそれよりも若い世代と違うところだ。虎蔵が皆鶴姫を出先に残して先に帰ってきたのを鬼一に咎められているところに時蔵の皆鶴姫がやってきて、隼人の腰元白菊が歌昇の湛海の来訪を告げて、一門が揃う。そこで「狂言なかばではございますが」と劇中にて襲名口上申し上げ候となった。ちょうど眠くなる頃なのもちょうどいい。
錦之助の師匠の富十郎が仕切っての口上。富十郎は膝を痛めたとかで高合引にかけたままでの口上を詫びていた。これまでの口上の冒頭に「松竹永山会長のご賛同をいただき」という言葉があったのが無くなったことに寂しさも覚えた(永山氏にはもちろん会ったことはないわけだが)。
後半の義太夫は葵太夫。そのいいお声に乗って義太夫狂言のクライマックス。錦之助の虎蔵と吉右衛門の智恵内とのやりとりもいい。しかし、本当に心地よいやりとりに眠気が襲ってきた~。気持ちよすぎてもダメなのかしら。「男女道成寺」でテンション上げすぎたかも(^^ゞちょうどいい頃に最後の絵面の見得で幕切れとなった。でも虎蔵、ホントによかった~。
若衆姿の虎蔵役の錦之助の舞台写真、花道の出のところを買った。「十二夜」でも同様の花道の出の写真を持っている。というかそれしか持ってなかった。同じように後ろが暗い中で浮かび上がるお姿、文句なしに二枚目!

錦之助襲名前に芸談を聴く会に参加した記事はこちら
写真は二代目中村錦之助襲名の祝幕を3階から撮影。
追記
勘三郎の花子の出来がいい日とよくない日があるという話もきいていたが、先日のお弟子さんの四郎五郎さんの訃報を知って合点した。ずっと心配していたのではないだろうか。お声に特徴があって助五郎、四郎五郎と同じ時期に覚えた脇役の名優さんだ。お二人続けて先代のところへ逝ってしまわれた。小山三さんは長生きして欲しい。
今月の他の演目の感想は以下の通り。
4/21昼の部①「當年祝春駒」「頼朝の死」
4/26千穐楽夜の部①「実盛物語」
4/26千穐楽夜の部②「口上」「角力場」