ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/03/26 歌舞伎座「義経千本桜」千穐楽「川連法眼館/奥庭」

2007-04-03 23:11:13 | 観劇
「義経千本桜」通し上演の大詰。何度も観ている「川連法眼館」に今回は大団円の「奥庭」がついているのが通し上演らしさということか。
海老蔵の澤潟屋型「四の切」の感想はこちら
勘三郎の音羽屋型「四の切」の感想はこちら
6.大詰 川連法眼館/奥庭
主な配役は以下の通り。
佐藤忠信/佐藤忠信実は源九郎狐=菊五郎
源義経=梅玉  静御前=福助
亀井六郎=團蔵  駿河次郎=秀調
伊勢三郎=亀蔵  片岡八郎=友右衛門
川連法眼=彦三郎  飛鳥=田之助
横川禅司覚範実は能登守教経=幸四郎

【川連法眼館】
川連法眼とはまず何者か。義経の鞍馬寺時代の兄弟子だったということにまず納得。それにしてはちょっと年が離れているような気がするが。吉野中の僧兵の主だった者が集まって鎌倉に従うのかどうかの評定から法眼が屋敷に戻ったところから始まるが、妻の飛鳥とのやりとりにまず見ごたえがある。田之助の飛鳥は足の具合が悪いせいで打掛の中に片方の足をつねに伸ばしているのが心配になった。それでも彦三郎との芝居が立派。重厚感あふれる幕開け。

義経のもとに一年ぶりにかけつけた菊五郎の忠信の生締め姿がいい。静御前を預かったことを知らないという忠信を詮議させようと呼びつけた團蔵の亀井六郎と秀調の駿河次郎が並んで決まるところも圧倒される。ここはベテランの布陣の芝居だ。梅玉の義経と福助の静御前はここでもとてもいい感じだし、「鳥居前」から一貫しているのが効果的。通し上演に一本芯が通る感じがする。

菊五郎の忠信が引っ込んでいくところで斜め下方向に目線をきっと決めるところにやられる。私はこの角度の目表情に弱いようだ。二月の勘平もこの場面もこの表情で舞台写真お買い上げだ(笑)

初音の鼓にひかれて狐忠信登場。狐言葉がこんなにいいと思ったことは初めて!さすがに台詞回しのいい菊五郎だ。親を慕う子狐の情とそれを義経・静に受けとめられて鼓を授けられた時の喜びの表現もほわ~っとしたあたたかさに満ちていた。確かに身体の動きはそんなにたいしたことはない。片膝をたててくるくる回るのだって回数も少ない。勘三郎や体育会系狐の海老蔵に比べようもない。しかし、それを補って余りあるものが今回の菊五郎にはあった。大体「鳥居前」の荒事忠信から出ずっぱりなんだから、夜の最後の場面まで菊五郎が忠信を通したということが今回の通し上演の一番中心の太い芯となっている。二月・三月の通し上演の最大の功労者だと思う。
とにかく今まで観た中でベテラン芝居の奥行きの深さを感じた「川連法眼館」だった。

【奥庭】
網代幕が切って落とされる。いつもの浅黄幕に比べると吊る金具もたくさんついているらしく最後の片付けも大人数だったのに感心(変なところですみません)。
舞台中央から横川禅司覚範の幸四郎がせり上がってくる。僧兵の親玉のひとりだから変な形の頭巾を被っている。義経を討つ方に扇動していたのもなるほど、実は平教経だったのだ。忠信に見破られると頭巾をとって黒々とした髪を逆立てた頭でぶっかえって戦闘モードへ。

今回の通し上演の「鳥居前」の前の「堀川御所」で鎌倉方の川越太郎が頼朝の義経への不審のひとつに、義経が鎌倉に送った平家の三大武将=知盛・維盛・教経の首が偽首だったというのが確かにあった(文楽の通し上演にあった!)。この3人が「義経千本桜」には全員登場するのだとあらためて気づく。なるほど~。
特に教経は佐藤忠信の兄継信が身体を盾にして義経を守った矢を放った人物で「道行初音旅」の戦記物語の中で名前が出てくるが、舞台に登場することは滅多にない。「奥庭」まで上演することでようやく登場するお役。ちょっとしか出番はないが役としては大きい。夜はこの役のみで登場の幸四郎。昼は知盛だから平家の武闘派2役をやられたわけだ。
しかしながら立ち廻りはあまりなく、教経を真ん中に義経、静、忠信と並んでさらにベテランの四天王。再び戦場での再会を約して絵面引っ張りの見得で決まる。花四天も舞台を彩っての豪華な幕切れとなる。「通し上演」の締めくくり~。
忠臣蔵と違って本懐をとげるとかいう達成感もないし、平家の3武将は復讐を遂げられず、義経は逃避行を末が見えている。源九郎狐のハッピーエンドだけが救いというお話の最後としては錦絵として締めくくるのがふさわしいのかもしれない。

写真は、歌舞伎座正面入り口前の義経千本桜通し上演の立看板。
以下、この公演の別の段の感想
「序幕 鳥居前」
「二幕目 渡海屋・大物浦」
「三幕目 道行初音旅」
千穐楽!仁左衛門の権太!!

さてここまでくると欲が出てくる。残る三大名作狂言「菅原伝授手習鑑」の通し上演を歌舞伎座建替え前に是非やっていただけないものだろうか。期待しつつこれからの演目発表を楽しみにすることにしよう。