ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/04/21 歌舞伎座昼の部①「當年祝春駒」「頼朝の死」

2007-04-24 23:58:08 | 観劇

もう明後日が千穐楽で夜の部を観るのに、昼の部の感想に未着手もなんだしなぁと歌舞伎座の感想を書くことにする。今月は二代目中村錦之助襲名披露公演だ。

1.「當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)」
襲名公演ということもあってか、「祝」という字の入った曽我物舞踊で幕開け。
これまで書いた曽我物の感想はこちら→昨年10月の「寿曽我対面」 昨年3月の「吉例寿曽我」
今回のバージョンの概要。曽我五郎と十郎兄弟が、春駒=馬の頭部を付けた跨り棒(若君がハイシハイシと遊んでいるおもちゃだと思う)の行商人に姿を変えて、小林朝比奈の妹・舞鶴の手引きで工藤の館に入り込んで対面を果たす。祐経は二人に狩場の切手を与え、またの対面を約して引っ張りの見得となって幕。
今回の配役は以下の通り。
曽我五郎=獅童  曽我十郎=勘太郎
工藤祐経=歌六  茶道珍斎=種太郎
舞鶴=七之助
要は、襲名する錦之助の一門萬屋の歌六と息子・種太郎の見せ場なんだと気づく。それを浅草歌舞伎の面々が寿いでいる。獅童の顔が荒事に似合ってなかなかよく頑張ってくれているので応援したくなってくる。勘太郎の十郎ともども外郎売のような衣装が明るくっていい。力持ちのはずの舞鶴なのに七之助はちょっと細すぎて舞鶴には見えないのがご愛嬌か。種太郎がなかなか凛々しくってこれからが期待できて嬉しい。歌六も渋かった。
         
2.「頼朝の死」
真山青果の傑作新歌舞伎。あらすじは以下の通り。
「源頼朝の三回忌供養の寺の門前。群集が現将軍の頼家が姿を見せないのは親不孝者だと騒いでいるのを隠密の中野五郎(東蔵)がやっと鎮める。女の二人連れが墓前に卒塔婆奉納にやってくるが、五郎は女人禁制だと追い払おうとする。それをとりなした覆面の武士は、畠山重保(歌昇)。頼朝の御台所政子の侍女小周防(福助)が政子の命令でやって来たのだ。重保は頼朝の最期に居合わせた人物だが、その後の様子がおかしく法要にも姿を見せなかったために他の大名たちに怪しがられている。
悩み苦しむ重保は、幕府の重鎮大江広元(歌六)に心中を吐露。落馬が原因とされている頼朝を斬ったのは自分で主殺しの罪の重さに耐えかねているのだ。その死の真相はこの二人と政子以外に知る者はいない。小周防は重保を慕い、お付きの女(芝のぶ)にも応援されて思いを伝える。重保はその思いに応えられないと言い、その原因は小周防にあると話す。頼朝は小周防への思いを募らせて屋敷に忍び込もうとし、正体を知らずに重保が斬り殺してしまったというのだ。小周防は、その宿業に泣きくずれる。
そして父の死を不審に思い、真相を知りたいと願いながらつきとめられないことに悩む続けてきた頼家。頼家の政への取組みはいかにも気儘。社寺の領地争いの訴えにもあきれるようなやり方で裁断してしまう。その頼家に出家を願い出る重保。父の死後おかしくなっている重保に真相を問い詰めても何も話さない。諌めるために尼御台政子(芝翫)が出てきて、広元と3人が揃うが誰も口を閉ざすばかり。ついには小周防をよびだして真相を聞きだそうとし、話せば重保と添わせてやるとまで言う。その言葉に小周防が心を動かされたのを見た重保は小周防に自分の思いを語った上で一刀両断にしてしまう。小周防は重保の思いを知って満足そうに死んでいく。
自分が苦しむ様をみて母は平気なのかと問い詰める頼家に「人は一世、家は末代」と答える政子。頼家が自分の存在の小ささを狂ったように嘆くところで幕切れ。

暗い。なぜ襲名公演でこの演目なのか。4月だから六世歌右衛門の追善なのではという話もきいた。しかしここでもハタと思いつく。これは萬屋の歌昇の見せ場をつくるための演目なのだ。それに歌六も重い役だ。梅玉や芝翫が持ち役でつきあっているのだろう。

重保の歌昇は抑えに抑えた役柄だが、思いがあふれて最初から涙がとめどなく流れている。昨年5月の演舞場の「ひと夜」の幕切れの表情を思い出してしまう。こういう役柄は歌昇が活きるのだと納得した。
愛する人に斬られながら満足そうに死んでいく小周防の福助の表情がまたすごかった。これは女方でないとできない気がする。女優では無理だろう。だから新歌舞伎なのかも。なかなか難しい役だなと思ってしまった。
政子の薙刀をもって決まりながら「家は末代、人は一世」と答えるところ、さすがに芝翫だと思った。

そうそう、「修善寺物語」で政子に廃嫡されて幽閉された頼家が出てきたことを思い出す。結局は北条一族に攻められて死ぬんだった。やっぱりこの息子では幕府を任せられないというような器量の将軍だったということになっているんだと納得。
しかし、ホントに話がクライ。照明も暗い。居眠り者、周囲に続出。私も目を開けているのが必死。

ここで気を変えて一気に明るくしてくれるのが次の「男女道成寺」というわけだ。
写真は、公式サイトより今月公演のチラシ画像。
追記
筋書読んでいて、「頼朝の死」は芝翫丈が初代錦之助の頼家で共演してよかったからだと初めて知った。なぁるほど、ちゃんと錦之助襲名ゆかりの演目だった!ちょっと暗い話だけど納得。
今月の他の演目の感想は以下の通り。
4/21昼の部②「男女道成寺」「菊畑」
4/26千穐楽夜の部①「実盛物語」
4/26千穐楽夜の部②「口上」「角力場」


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2 コメント

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頼朝の死 (かしまし娘)
2007-04-26 11:46:13
ぴかちゅう様、まいど!
「頼朝の死」は、待って待って待ってた作品なので、私はドップリ!
福ちゃんと歌昇コンビは今回も、私の心に大ビンゴ!
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★かしまし娘さま (ぴかちゅう)
2007-04-27 01:22:11
錦之助襲名公演になぜにこんなに暗い演目を???と思ったのですが、歌昇の熱演にハタと気づきました。今月は萬屋一門にいいお役をふっているのだ!!!と。広元の歌六もよかったし。
歌昇は演舞場の「ひと夜」の主役もよかったです。こういう台詞劇はいいのかもしれませんね。またまた見直しました!
(注)かしまし娘さんの記事はお名前の欄をクリックすると読むことができます(^O^)/
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