Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

三枝成彰:オペラ「KAMIKAZE-神風」2013.02.03 世界初演楽日公演批評(No.2210)

2013-02-03 20:59:46 | 批評

緩急自在に音楽の変幻を操る三枝成彰「神風」


 この公演を聴いて、実感したことを最初に記す。

現在生存している「日本人オペラ作曲家」で最も作品が充実しているのは、三枝成彰


 なんと言っても「テンポの緩急が自由自在」な点は、過去最高の日本人オペラ作曲家 = 團伊玖磨 をも上廻る、と感じる。私高本は「忠臣蔵」以降の主要三枝オペラは聴いているが、徐々に「言いたいこと」が音楽的にストレートに表出されるようになって来た。「作曲技法的に」と言い換えた方がより適切だろうか?


 だが、

声楽陣(ソリスト & 合唱)、衣裳、大道具 があまりにも後退してしまった >< ことが残念でならない


 「知子役 = 小川里美」だけは(高い声にクセはあったモノの)主役としての存在感があったが、後のソリスト陣は「?」と言う声。思いっきり「マイク&スピーカ」入れた脇役もいたし(涙
 合唱団は、「オペラの舞台に立たせて良い」水準に達していない。声の質やディクションまでは言わないから、音程だけはせめて合わせて欲しい。

三枝成彰オペラの共通した弱点 = 「悪役」が描き切れない台本を選択


 これが最大の弱点。

三枝成彰 は プッチーニを手本としたオペラを目指している


と考えられるが、台本選択が甘い。「トスカ」に於ける「カヴァラドッシ」のような悪役を必要と感じていない。「ピンカートン」でも「トゥーランドット」でも良いのだが。

 衣裳の貧弱さは目を覆うばかり。ストーリー展開を考えれば「主役2名が過去を振り返る瞬間」の『徴兵だか志願だかする前の恋愛時期の豪華な衣裳(&街並み)』は聴衆に見せることは充分可能。オペラ「忠臣蔵」などの艶やかな衣裳の面影も無い。

 大道具の貧弱さは、さらに貧乏くささを滲み出していた。「大道具が無い!」なのだ。これでは「演奏会形式上演」では無いか!!! 小道具なら「演奏会形式上演」でもあるぞ > 東京芸術劇場「井上道義のオペラシリーズ」などでも!!


 作曲技法自体は、進化しているのだが、トータルでは以前オペラよりも印象が薄い。『オペラは総合芸術』なので、作曲だけが進化しても、トータル印象は良くならない。終演後には「小川里美だけにブラヴォーが1発のみだった」が以前の熱気と違っていることを、三枝成彰 はしっかりと受け止めて次作(または旧作再演)に活かして欲しい。


 最後に 新日フィル の金管楽器に苦言。大友直人は「縦の線」がズレる棒では無かった。何であんなに縦の線がズレるの? > しかも本番3日目で(涙
「定期演奏会」と同じような技巧の冴えを聴かせて欲しかった次第である。
コメント (4)
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