Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

作曲家論 : シューマン第20回(No.1440)

2006-12-13 20:56:05 | 作曲家・シューマン(1810-1856)
 フロレスタンとオイゼビウスを降臨させたのは、金銭的にイタかった。我が家にある酒の内、最も高額な「スペイン産エンブレム入り発泡ワイン」だけを全部呑んで、トンヅラされた。う~ん、シューマン伝記では「ドイツワイン好き」と書いてあったので、「ワインならばドイツワイン好き、質が判らず何でも呑むタイプ」かと、誤解した私高本の頭が悪かったようだ。 いろいろと教わったことも多かったので、(フトコロは痛いが)ヨシとしよう(泣
 本日号にて「シューマン : 作品14」のシリーズは終結する。


『序奏と、クララ・ヴィークの主題による大変奏曲』が実現しかけて実現しなかった ヘ短調ピアノソナタ 作品14


  • 変奏曲緩徐楽章 + 終楽章 → クララ・ヴィークの主題による大変奏曲(交響的練習曲に準じた構成)
  • その前に「序奏」(ショパン「お手をどうぞ」による変奏曲の序奏を目指している) → 1楽章~3楽章 分であり、まとまらなかった

 

 シューマンの脳内に、この「最終稿 = ピアノソナタ第3番ヘ短調 作品14」とされた作品が存在したか? は誰にもわからない。シューマン自身だけはわかっていただろうが、クララもブラームスもわからない。ブライトコプフもわからない。ヘンレもわからない。ショットも(今のところ)わからない。私高本もわからない。

  • フローリアン・ヘンシェル は、「初稿の第1楽章 → 遺稿のスケルツォ → 1853年版出版の スケルツォ → クララ・ヴィークの主題による変奏曲(主題 + 6変奏曲) → プレスティッシモの終楽章」 の 5楽章編成

とはっきり主張している。 これを聴け。

フローリアン・ヘンシェル(p) シューマン:ピアノソナタ第3番 初稿



ヘンシェル ピアノソナタ第3番 初稿(Ars Musici AM14072) 2006年11月28日発売





1,420円(税込)



  • 演奏   :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 音質   :☆☆☆☆☆


2001年8月28,29日録音。

 この演奏は素晴らしい! 上記の「シューマン設定のストーリー」をはっきりと『ストーリーテラー』として伝えてくれる演奏である。
 ここに明言しよう。

  • 変奏曲(変奏数が通常よりも2変奏曲多い!) → 終楽章 の自然な流れは これまでの録音中最高!
  • ホロヴィッツ盤(BMG)でも聴けなかった構成感
  • ポリーニ盤(DG)でも聴けなかった構成感が
  • フローリアン・ヘンシェル盤には実在し
  • その根源は「大英博物館の自筆譜を丹念に調べた成果!」

である。
 このCDレーベルは今回初めて購入した。相当、金銭的にはキビしいレーベルらしく(私高本と同じ!)、いろいろと「削れる予算は削る」で作られており、ヘンシェル自身の署名記事は(自己紹介を含め)皆無。(あっ、私高本の作った「川上敦子のCD」も同じか、、、)
 ・・・で、演奏は「構成感」については ホロヴィッツやポリーニは足下にも及ばない高い水準である。う~ん、CD選択の根源が揺らぐほど大きなショックがあったCDである。


 このヘ短調ピアノソナタは「3稿」あり、

  1. 第1稿 : 5楽章構成、上記ヘンシェル主張の構成

  2. 第2稿 : 3楽章構成、『=初版』1836年版

  3. 第3稿 : 4楽章構成、『=第2版』1853年版


となる。途中で、変奏曲の数が「6 → 4」に減数、とか、『分散和音 → 重ねる和音』とか、『拍子記号が完全に差し替え』とか、(一流作曲家で無ければ、消える運命にある水準の)「迷惑降りまくり改訂」を繰り返した。 しかも、クララに献呈しておけば「ロベルト死後」も尊重されたのに、モシェレスに献呈し、モシェレス自身からもクレームが付いた(泣
 さらに、追い打ちをかければ『日本を代表するシューマンガクシャ = 前田昭雄』が『音楽之友社 の 権威を賭けた 新編 世界大音楽全集 シューマン ピアノ曲集II 器楽編16』のP195にて
シューマンはヘ短調ソナタを作曲した当初,フィナーレの前にこのスケルツォを置く,5楽章の全体を構想していた

なんて言う
無根拠な暴言 を 日本を代表する媒介に掲載!

していた。 前田昭雄もヒドいが、音楽之友社もヒドいね。
 前田説の順序で、デムスのCDを聴いたが「ハッ? こんな構想をシューマンはしていたの?」と思った記憶がある。「デムスCD発売当初」なので、今の値段の3倍くらいした時に、高掴みしてしまったCDである(泣


 ヘンシェル盤を聴くと、明瞭に浮かび上がることが3点ある。

  1. 全曲構成として、『クララの主題』自体の登場が(手本にしたシューベルト「さすらい人幻想曲」に比べても)遅過ぎである。

  2. 『ヘ短調の支配』が強過ぎて、『ピアノソナタ』または『ピアノ協奏曲』としては色彩感に乏しい

  3. 『初版 = 第2稿 = 1836年版』は、短縮したにも関わらず、『全楽章 = ヘ短調』にしたので、第1稿よりもさらに 単色化した

  4. である。う~ん、うなる。


     ヘンシェル盤は、素晴らしい。ただ、岡原慎也 や 佐伯周子 が『出版されていない この稿を弾いたら もっといいかも!』とは(強欲な私高本は)思う。


    この ヘンシェル盤 が「シューマン没後150年最大の収穫」


    と感じる。 もし、読者の【あなた】がシューマンに興味あるならば、是非是非聴いてほしい!
コメント
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