Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

高度な音楽の最期の晩餐

2023-07-31 | 
承前)鳥の演奏会で啓示はなされた。そして「スティグマ」となる。フランシスコが聖人となるキリストの十字架上での五つの傷を負うことになる。ここでの舞台は、丁度最初の景でウサギの死体が横たわっていたところへと、跪いたフランソワがうつ伏せになりそして後ろからの黄色いブロブに追われて横たわることになる。

この地球最古の生物こそがアルファーからオメガの創世主となり、合唱として聖フランシスコに語りかけ、ブロブが大きな太陽のように輝き広がっていく。この光景を初日に観た時には感動したが、その音楽がこれしかないとした神の呈示だったに違いない。そこで、第二の晩餐として高度な音楽と歌われる。カトリック者の作曲家にとってはこれ以上のテクストにつける音楽はないであろう。

この視覚的な啓示も素晴らしかったのだが、その音楽特に合唱は高度な表現をものにしており、初演以来これ以上の演奏も無かったろうであり今後も難しいと思う ― 参考に再び初演の録音を聴くと最早この辺りで主役のファンダムも力尽きており今回のマイヤーズとは到底比較に為らない歌唱で合唱も歌えておらず小澤の魔法の指揮も効力を失っている。

バイロイト音楽祭第八回目演出の「パルジファル」におけるシュリンゲンジーフの演出についての回想をしているとまさしく上のブロブが太陽のような環を描いて広がっていくような意匠に記憶がある。ボイスのウサギもその発展としてここで使われていたが、これも影響が感じられる。尤も演出家マーラー自身は2004年から仕事を始めていて、マルターラーの元のみならずシュリンゲンジーフが病気になってからその演出をアシスタントとして行っていた。

メシアンが参照した舞台神聖劇「パルジファル」演出のアイデアがここで発展形として使われることには全く違和感がない。個人的にも、興味が向かう先であったから当然なのかもしれないが、1998年モルティエ博士企画のザルツブルクでの「アシジの聖フランシスコ」、2001年指揮者エンゲルとの対話、2004年バイロイトの「パルジファル」と経験したからには、今回も全く無関係ではおれない制作であった。

残念乍らこの三部七景は合わせて三回しか体験できなかったが、こうして回顧すればその舞台歌唱、演出、奈落全てが万全の出来であった。願わくばもう一度体験したいと思うが、少なくともカメラが入っていたりして、何らかの記録が残っているのが幸いである。ドキュメンタリーの形でも記録に残ることでその芸術的成果は証明されることになるに違いない。(続く



参照:
森の中に木を隠す 2023-07-29 | 文化一般
次はエディプスコムプレクス 2023-05-07 | 文化一般

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アルペン交響曲の心理 | トップ | 索引 2023年07月 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿