記憶が薄れないうちに、レープホルツ醸造所での試飲について語っておこう。先ず驚いたのがオェコノミラートが売り切れていたことで、一本だけ残しておいてよかった。特に欲しかった訳ではないが、2013年の特殊性はそれほど否定的に働かなかったのが、このグランクリュ「イム・ゾンネンシャイン」はその一角にあるガンツホルンの葡萄からのワインである。その最高峰にあるグローセスゲヴェックスの「ガンツホルン」は特殊な年で、6Gを超える残糖が突出している。とは言っても酸が9G台とスケールの大きなバランスを取っているので、巧く行くと記念碑的となるかもしれない。
味筋はいつもの傾向にあるのだが、貴腐が混ざっていたことから若干の蜂蜜臭がある。これは味の濃くとなっていて、一般には好まれる傾向となっている。そもそも2013年は対岸のグランクリュ「カスターニアンブッシュ」のそれは甘口のアウスレーゼまでの造りとなっていて、流石のこの辛口醸造所も他に手が無かったのだろう。
その中では、「ガンツホルン」もその下の「フォム・ブントザントシュタイン」も立派な辛口である。残糖があるといっても残糖感は一切無いが、貴腐に抵抗がある向きには難しいかもしれない。それでも娘さんが言う様に「長く楽しめる」のは、「ここのワインは保存が難しいから、その分期待できる」と言い換え、「十分に承知している」ことだと切り返せたのは良かった。
パプリカ水になることの無いガンツホルンはそれだけで価値があると考える。三本予約していたが「決して間違っていなかったね」と自負した。製造者にととて見れば当然のことなのだが、素人のワイン評論家はその辺りを突っ込めないから専門家に馬鹿にされるだけなのだ。
ビュルクリン・ヴォルフ醸造所で一緒になった元裁判長が指摘するように、「レープホルツは割高」なのは事実で15%ほどはその質よりも高価で、メディアでの賞金がそこに加算されているとしてよいだろう。勿論そうした特産に付加価値が付くことは悪いことではなく、重要なのは市場がそれを認めるかどうかということだけなのである。
何年かに一度はこの孤高な路線のリースリンクが俗受けするように仕上がっていても決して悪くはないであろう。その他のブルグンダーもどちらかと言えば俗受け路線で、辛口リースリングの盟主としては低調な年度であったろうが、グローセスゲヴェックス収集家にとって、このガンツホルンは将来を期待させる年度となった。醸造所のあり方を定める上でも重要な醸造年となったのではないだろうか。
前日のラインガウからのゲスト「ブロイヤー」のリースリングに関しても甘みを残した俗受けする路線を意識していることがよく分った。特にシュロースベルクなどはもはや半辛口で、我々からすると食事には向かない。今頃2011年を出してくるのはよいのだが、あえて言えばそれが最大の売りで、リースリングの質自体は過熟成の2011年ではあるからそれほどのものではなかった。
しかし2012年産の「テラ・モントーザ」は今まで試したここのリースリングでピカイチだった。それはそのテロワールの出方と酸や糖のバランスなどが素晴らしく、そこに如何にもゴツゴツした土壌感を感じさせてくれて、決して繊細なリースリンクではないがこれはこれでよいだろう。2013年のリューデスハイム産のグーツリースリンクの価格は、分らないが、新鮮なものでこの程度なら、それはそれで良いのではなかろうか。
総合的に、この醸造所も恐らく亡くなった先代の遺志を引き継ぐ形で特異な蔵出しの方法をコンセプトにしているようだが、それで幾ら取れますか?という問いかけになる。なるほど長期の醸造と樽熟成は最近のドイツのリースリングのトレンドになってきているが、それにはそれだけの費用が掛かるので、価格に転換できる質のものであるかどうかが分かれ目となる。
話は戻るが、なるほどワイン評論家は市場価値とその糊代を同じくしていると知れば、リースリンクの本質などとは関係無しに俗受けして売れることを主題にして発言すれば良い訳である。それが、グラスを燻らしたときの香りでプルースト気取りでものを言っても、観光案内のプロモーションまがいの行いであっても結構なのだ。商業ジャーナリズムというのは所詮そうしたものなのである。
参照:
通にしか分らない質と価格 2014-09-16 | 試飲百景
雨のナーヘの谷を回遊 2014-09-14 | 試飲百景
味筋はいつもの傾向にあるのだが、貴腐が混ざっていたことから若干の蜂蜜臭がある。これは味の濃くとなっていて、一般には好まれる傾向となっている。そもそも2013年は対岸のグランクリュ「カスターニアンブッシュ」のそれは甘口のアウスレーゼまでの造りとなっていて、流石のこの辛口醸造所も他に手が無かったのだろう。
その中では、「ガンツホルン」もその下の「フォム・ブントザントシュタイン」も立派な辛口である。残糖があるといっても残糖感は一切無いが、貴腐に抵抗がある向きには難しいかもしれない。それでも娘さんが言う様に「長く楽しめる」のは、「ここのワインは保存が難しいから、その分期待できる」と言い換え、「十分に承知している」ことだと切り返せたのは良かった。
パプリカ水になることの無いガンツホルンはそれだけで価値があると考える。三本予約していたが「決して間違っていなかったね」と自負した。製造者にととて見れば当然のことなのだが、素人のワイン評論家はその辺りを突っ込めないから専門家に馬鹿にされるだけなのだ。
ビュルクリン・ヴォルフ醸造所で一緒になった元裁判長が指摘するように、「レープホルツは割高」なのは事実で15%ほどはその質よりも高価で、メディアでの賞金がそこに加算されているとしてよいだろう。勿論そうした特産に付加価値が付くことは悪いことではなく、重要なのは市場がそれを認めるかどうかということだけなのである。
何年かに一度はこの孤高な路線のリースリンクが俗受けするように仕上がっていても決して悪くはないであろう。その他のブルグンダーもどちらかと言えば俗受け路線で、辛口リースリングの盟主としては低調な年度であったろうが、グローセスゲヴェックス収集家にとって、このガンツホルンは将来を期待させる年度となった。醸造所のあり方を定める上でも重要な醸造年となったのではないだろうか。
前日のラインガウからのゲスト「ブロイヤー」のリースリングに関しても甘みを残した俗受けする路線を意識していることがよく分った。特にシュロースベルクなどはもはや半辛口で、我々からすると食事には向かない。今頃2011年を出してくるのはよいのだが、あえて言えばそれが最大の売りで、リースリングの質自体は過熟成の2011年ではあるからそれほどのものではなかった。
しかし2012年産の「テラ・モントーザ」は今まで試したここのリースリングでピカイチだった。それはそのテロワールの出方と酸や糖のバランスなどが素晴らしく、そこに如何にもゴツゴツした土壌感を感じさせてくれて、決して繊細なリースリンクではないがこれはこれでよいだろう。2013年のリューデスハイム産のグーツリースリンクの価格は、分らないが、新鮮なものでこの程度なら、それはそれで良いのではなかろうか。
総合的に、この醸造所も恐らく亡くなった先代の遺志を引き継ぐ形で特異な蔵出しの方法をコンセプトにしているようだが、それで幾ら取れますか?という問いかけになる。なるほど長期の醸造と樽熟成は最近のドイツのリースリングのトレンドになってきているが、それにはそれだけの費用が掛かるので、価格に転換できる質のものであるかどうかが分かれ目となる。
話は戻るが、なるほどワイン評論家は市場価値とその糊代を同じくしていると知れば、リースリンクの本質などとは関係無しに俗受けして売れることを主題にして発言すれば良い訳である。それが、グラスを燻らしたときの香りでプルースト気取りでものを言っても、観光案内のプロモーションまがいの行いであっても結構なのだ。商業ジャーナリズムというのは所詮そうしたものなのである。
参照:
通にしか分らない質と価格 2014-09-16 | 試飲百景
雨のナーヘの谷を回遊 2014-09-14 | 試飲百景