南仏での生活ではカルフーにお世話になった。ソムリエである私は熱心に地元のワインを探すことになるのであるが、仲間がアルザスのドップのマグナム瓶を発見した。2010年産のリースリングで価格は9ユーロ程度である。リッターの価格かと皆が疑ったが、興味深い2010年であり購入した。
その夜のオードブルはアンティチョッペンだったので、時期遅れに持ち込まれた2009年産のヴァッヘンハイマー・レッヒベッヒャエルを先ずあけた。予想通り飲み頃を外しており、残糖感があって折角良い時期にプレゼントしたものをと悔しい思いであった。それほど悪くはないのだが、今回持ち込んだ2011年産オルツヴァイン・ヴァッヘンハイマーの新鮮さと繊細さとミネラルに及ぶはずがない。飲み頃を外せば、全く価格も何もかもひっくり返ってしまう好例である。しかしこれをマニア以外に会得して貰うのはとても難しい。
さて、メインディシュは蛙の足だったが、アルザスのそれを合わせた。食事は、トマト風味とクリーム大蒜風味の二種類であったので特に後者には良かった。なによりもあの価格でというのが満足度に繋がる。
そして必ずしも容易に減酸できなかった2010年の酸を上手に処理しているのである。リングの香味は感じてもそこにはとげとげしい酸もなく石灰での処理の痕跡も感じさせない。しかし、前記の2009年産と同じような残糖感があり、マグナム瓶に期待した新鮮さがない。
皆が見つけたようにこの有名な醸造所には二十年以上前に遠足序に立ち寄って試飲した記憶がある。その時の印象は、「なんてアルザスのワインは薫り高く、優しく、繊細なのだろう」と、フランスワインの文化に触れた思いがしたほどである。なるほど当時のドイツのワインの辛口はテロワーの出し方も中途半端で硬く、酸と甘みでバランスを取っている白物で、流行の培養酵母の香りは一面的でしかなかった。それに比べてのフランスのワイン文化であった。
そして今はどうだろう?なるほど、この価格でスパーで広く売るには、このリースリングの安定度はとてもドイツのそれとは違って世界の市場を狙うにも好都合である。しかし、テロワーの出し方や、揺れ動くリースリングの瓶熟成を楽しめないどころか、手練手管で出来上がってしまっている印象が強い。あの2010年の実りの証がとても感じ取りにくい。そしてなによりも若いのに老成してしまっている。これでは熟成も楽しめない。
ドイツのリースリングはグローセスゲヴェックスをフラッグシップとしてこの二十年間の大きな発展を遂げてきた。それは、この場合でも還元醗酵過程から酸化発酵過程へと、再び天然酵母と木樽の重視などとここ数年でも大きな変化を遂げていて、それは市場のトレンドではなく非常に実験科学的な視点での試行錯誤の結果なのである。そしてなによりもフランス人が始めたビデュナミの大規模な実践などとてもドイツ的なシステマティックな技術的進歩を遂げてきた結果なのである。
容易に、同じ味で売り買いが出来るワインは市場価値がそれなりについて商売の種としやすいわけなのだが、我々愛好家にはそのような要素はどちらでも良くて、一瞬の輝きのときのご相伴に与れればそれで満足なのである。
参照:
リースリング・リング試飲会雑感 (モーゼルだより)
破局に通じる原発銀座の道 2012-04-11 | 文化一般
地中海を臨んでの幸福感 2012-04-10 | アウトドーア・環境
それでも生きていたいのか? 2012-04-09 | 文化一般
地中海の海岸に遊ぶ 2012-04-09 | アウトドーア・環境
原発銀座の四つの水蒸気塔 2012-04-08 | アウトドーア・環境
その夜のオードブルはアンティチョッペンだったので、時期遅れに持ち込まれた2009年産のヴァッヘンハイマー・レッヒベッヒャエルを先ずあけた。予想通り飲み頃を外しており、残糖感があって折角良い時期にプレゼントしたものをと悔しい思いであった。それほど悪くはないのだが、今回持ち込んだ2011年産オルツヴァイン・ヴァッヘンハイマーの新鮮さと繊細さとミネラルに及ぶはずがない。飲み頃を外せば、全く価格も何もかもひっくり返ってしまう好例である。しかしこれをマニア以外に会得して貰うのはとても難しい。
さて、メインディシュは蛙の足だったが、アルザスのそれを合わせた。食事は、トマト風味とクリーム大蒜風味の二種類であったので特に後者には良かった。なによりもあの価格でというのが満足度に繋がる。
そして必ずしも容易に減酸できなかった2010年の酸を上手に処理しているのである。リングの香味は感じてもそこにはとげとげしい酸もなく石灰での処理の痕跡も感じさせない。しかし、前記の2009年産と同じような残糖感があり、マグナム瓶に期待した新鮮さがない。
皆が見つけたようにこの有名な醸造所には二十年以上前に遠足序に立ち寄って試飲した記憶がある。その時の印象は、「なんてアルザスのワインは薫り高く、優しく、繊細なのだろう」と、フランスワインの文化に触れた思いがしたほどである。なるほど当時のドイツのワインの辛口はテロワーの出し方も中途半端で硬く、酸と甘みでバランスを取っている白物で、流行の培養酵母の香りは一面的でしかなかった。それに比べてのフランスのワイン文化であった。
そして今はどうだろう?なるほど、この価格でスパーで広く売るには、このリースリングの安定度はとてもドイツのそれとは違って世界の市場を狙うにも好都合である。しかし、テロワーの出し方や、揺れ動くリースリングの瓶熟成を楽しめないどころか、手練手管で出来上がってしまっている印象が強い。あの2010年の実りの証がとても感じ取りにくい。そしてなによりも若いのに老成してしまっている。これでは熟成も楽しめない。
ドイツのリースリングはグローセスゲヴェックスをフラッグシップとしてこの二十年間の大きな発展を遂げてきた。それは、この場合でも還元醗酵過程から酸化発酵過程へと、再び天然酵母と木樽の重視などとここ数年でも大きな変化を遂げていて、それは市場のトレンドではなく非常に実験科学的な視点での試行錯誤の結果なのである。そしてなによりもフランス人が始めたビデュナミの大規模な実践などとてもドイツ的なシステマティックな技術的進歩を遂げてきた結果なのである。
容易に、同じ味で売り買いが出来るワインは市場価値がそれなりについて商売の種としやすいわけなのだが、我々愛好家にはそのような要素はどちらでも良くて、一瞬の輝きのときのご相伴に与れればそれで満足なのである。
参照:
リースリング・リング試飲会雑感 (モーゼルだより)
破局に通じる原発銀座の道 2012-04-11 | 文化一般
地中海を臨んでの幸福感 2012-04-10 | アウトドーア・環境
それでも生きていたいのか? 2012-04-09 | 文化一般
地中海の海岸に遊ぶ 2012-04-09 | アウトドーア・環境
原発銀座の四つの水蒸気塔 2012-04-08 | アウトドーア・環境