Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

マルティン・ルターのグロテスク

2005-03-03 | 文学・思想
このサイトの護り神でもあるマルティン・ルター博士は、1534年に記している。「其々に自らの悪魔と云うものを保持している。我々ドイツの悪魔は、都合の良いワインの革袋になっている。これを大酒飲みと云う。ワインやビールを大飲みしても灼熱の渇きは癒される事はない。そのような永遠の渇きがドイツの憂いであり今日まで続いている。」。1517年に始まった宗教改革の波は、食生活にも影響を与えたという。政治的には反宗教改革から三十年戦争へと進む中での発展途上国へと戻るような甚大な被害が拡がる。同時に天候不順でワインや果物の収穫が落ちて、ワインはそれ以前の中世後期に較べて高価な飲み物となった。しかしビールに対してワインは、必ず結婚式などの祝典には欠かせなかったようである。しかし多くの中世の食文化はこうして葬り去られた。ご多分に漏れずヨハネス・グーテンベルクの印刷技術の恩恵を受けた料理書の影響も大きいようである。そして啓蒙主義の時代へと連なっていく。

宗教改革後、魔女狩りや錬金術師が横行して、ゲーテの手本となるファウストの伝説などが取り扱われたのがこの時代であることも忘れてはならない。デューラーの弟子、当時から更に200年前のペトラルカの詩の挿絵で有名なハンス・ヴァイディッツには多くのグロテスクな木版画が存在しているようである。彼が描いた1521年の「人間ワイン革袋」の絵もルターが言う当時の状況を如実に表している。1530年のオットー・ブルンフェルツの植物の書物への絵も見事である。グロテスクといわれる意匠の流行は、1528年出版のルーカス・フォン・ライデンのマスター集が切っ掛けとなったようである。

1912年生まれのイタリアンルネッサンス学者アンドレ・シャステル氏の著書を読むと、グロテスクの特性を「空間の否定、種の混合、形式の無重力化や大胆な雑種の繁殖。図的遊びで得られる密や量の無い垂直の世界。厳格と夢のような気まぐれの混在。」と定義している。
コメント (2)
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