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パンダ イン・マイ・ライフ

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軍師官兵衛を読む。 司馬の「播磨灘物語」

2014-07-21 | book
今年の大河ドラマ,軍師官兵衛。そのテレビと呼応して,司馬遼太郎の名作,「播磨灘物語」,文庫で全4冊を読んだ。
黒田官兵衛の一生を,その時代を生きた様々な人々の生きざまを通して,まさに戦国群像絵巻として読める。1973年司馬が50歳の時,昭和48年5月に新聞小説として掲載開始。50年2月に完結。単行本3巻は昭和50年に出された。

中世の室町時代が終わろうとしていた時に,東海の地に現れた織田信長。まさに混沌とした時代に現れたヒーロー。能力のあるものはどんどん登用し,持ち駒として,北には上杉,東には武田,西には毛利に対峙させる。そんな中で,中小の有力者が微妙なバランスで生きてきた播磨は,東の織田,西の宇喜多,毛利の間に挟まれ,まさに風見鶏のように右へ左への大騒ぎに巻き込まれることになる。

祖父の時代に,播磨の国に根付いた黒田家。土豪の小寺家の家老となり,その騒ぎをどう乗り越えていくのか。サラリーマンの悲哀を感じさせる。

中小企業がひしめく地域の会社「小寺」の専務,官兵衛。しかし,今の会社の社長にこの混乱を乗り越える才覚は無い。大手企業が虎視眈々とこれらの企業を吸収合併にかかる。どの会社の傘下に入るのか。その企業体質はどうなのか。堅実で守りの「毛利」。非常な論理でのし上がった「宇喜多」。多くの専務を抱え,登用し,どんどん吸収合併を繰り返し大きな影響力をもつようになった「織田」。ワンマン社長の基で勢力を拡大した「武田」
信長の非常な采配に「織田」の専務の荒木村重や明智光秀は,反乱を起こす。その際,「織田」の他の専務たちの動向は。また,その「織田」を取り巻く中小の企業たちはどう動くのか。

20代で「小寺」の家老「専務」となった官兵衛。信長の新しい感覚に惚れ,「織田」へと小寺を導く官兵衛。そこに「織田」の新参専務の秀吉との出会いがあり,また,同じ企業人として親しみを持つ,秀吉の配下,竹中半兵衛との出会いがあった。

「毛利」との戦いを任された秀吉。上月城の尼子氏を切り捨てる非情な織田社長。その非情な采配に,荒木専務は織田社長を裏切る。荒木と毛利に挟まれた播磨は,どんどん「織田」から律儀な会社「毛利」になびく中,小寺の社長は,専務官兵衛を荒木の基に送り,官兵衛を切り捨てる。織田社長に息子松寿丸を人質に出していた黒田家は,官兵衛よりも息子を選ぶが,織田社長は許さない。官兵衛の息子を救ったのが竹中半兵衛だった。

1年にもわたる荒木での幽閉生活を異議なくされる官兵衛。しかし,荒木に官兵衛を討つ考えはない。その荒木が待つ毛利は来ない。そして疲れ果て逃げ出す荒木。いよいよ毛利との戦いが始まる。宇喜多を味方に引き入れた官兵衛は,備中高松城の水攻めを行い,毛利の半分領国割譲の条件を導き出す。しかし,そのとき,「織田」の専務明智の裏切りが。

「中国大返し」を敢行し,明智を討つ秀吉。いよいよ秀吉の時代が訪れる。しかし,新社長の秀吉にも旧勢力と新興の事務勢力の軋轢が生まれ,秀吉に嫌気がさす官兵衛。その中で,官兵衛の息子,長政は,新興勢力の「徳川」に組し,荒波を乗り越えていく。

大河ドラマもそんな風に見るとおもしろい。如水と称した官兵衛。水は,上流から下流へとさまざまな景色,環境の中で揉まれ,一所に立ち止まらない。

官兵衛は,隠居となり関ヶ原の戦いを迎えた時に54歳。九州大分に本拠を構え,その鎮撫に当たり,九州福岡へ。波乱の人生を58歳で終える。

司馬の人生観,人間ウオッチング,そして文献を丹念に整理し,丁寧に人を蘇えさせる手腕はすばらしい。戦国の人の生き様は今に通じる。

読み応えありの一冊。


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