パリ、リスボンの旅~Ⅱ.黒の街、白の街~

2006-11-15 23:40:39 | 旅行記

パリのモンマルトルといえば、何を連想するでしょうか。僕の場合は、すこし前の映画で「アメリ」を思い浮かべました。それからはもっとさかのぼって、絵のなかの風景を思い浮かべます。ユトリロや、日本人であれば荻須高徳らの質感あふれる絵。

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聞くところによるともともとパリは、永年の汚れが蓄積して「真っ黒」だったといいます。30年ほどまえに、「大洗濯」をされたのこと。高圧洗浄で、すっかり白くなっちまった、という話を以前聞きました。少なくとも僕にとってはそんな真っ黒い、絵のなかの質感あふれるモンマルトルが憧れの的なのでした。僕が10年ほど前に初めて訪れたとき、パリそしてモンマルトル界隈の「きれいさ」に驚きました。あのおどろおどろしいほどの絵のなかの質感はいったいどこに!?今回は、さらに「きれいさ」に磨きがかかったようでした。はてして喜ばしいことなのか・・・。そんな印象を抱く人は僕だけではないと思います。

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しかし、モンマルトルにサクレクール寺院が建ったのは19世紀。それまでは風車のまわる寒村だったといいいます。寺院ができたときは、それこそ景観破壊として大問題となったそうですが、いつの世も、変化することには慎重なものですね。すっかり白く塗られて行儀よくなったモンマルトルの風景もまたどんどん変わり、今の風景がまたノスタルジックに美しく語られるときがくるのかもしれません。そう、映画「アメリ」では、もはや薄汚れたモンマルトルではなく、白く気高いサクレクール寺院を中心に展開したのです。

モンマルトルの丘から市中にずんずん降りていくと、パリのことはじめ、シテ島にたどり着きます。その中心に鎮座するのはノートルダム寺院。パリの都市計画は「方角」にはあまり関心がなかったようですが、ノートルダムは意識されてかどうか、西に顔をむけています。夕方5時半、西日をいっぱいに受けたノートルダムの鐘が鳴り響きます。この光景だけは数世紀このかた変わることはなかったのでしょう。簡素で美しい外観。宗教的含意が装飾としてその表面を覆っています。中ではミサが行われ、聖歌隊の歌声が堂内に響き渡ります。その空間のなかに居合わせるとき、この教会があらゆる教会の中心にあるものとして生まれてきたことが、体でわかるような気がしました。建築というのは、姿かたちのデザインそのものが目的なのではなくて、そこに内包される含意とは何か、それが見えるときに、生きられたものになるのではないか、そんな思いにかられました。

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コメント
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