パリ、リスボンの旅~Ⅰ.薔薇と幾何学~

2006-11-12 20:48:52 | 旅行記

パリ。華の都とよばれる街の代名詞・シャンゼリゼ通りは、ルーブル宮にむかってまっすぐにのびます。その終点、ルーブル宮の中庭に無機質なガラスのピラミッドが登場したことは当然賛否両論の対象となりました。

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シャンゼリゼ側ではなく、パレ・ロワイヤル側からルーブル宮の中央門を通して中庭を望むとき、そこには息をのむような瞬間が待ち受けます。暗いアーチのトンネルの向こうにはきらめくガラスのピラミッドが真正面に潜みます。そしてそのトンネルを抜けた瞬間に包まれる高揚感!古き思想のもとにつくられたものと、新しき思想のもとにつくられたものとがその場所でぶつかり合います。懐古主義に陥ることなく、先達の業に敬意を表して新しいものを切り開いていく力強さのなかにこそ、パリが第一線の街であり続ける理由があるのかもしれません。

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もともとパリは、数世紀もの長きにわたって少しずつ都市形成がなされていったのでした。日本のように「方位」が重視されることはあまりなく、セーヌ川のもつ基軸をもとに幾何学的に「線」が構想され、それが道となり、その終点や結節点には「オブジェ」としての建物や彫像が据えられたのでした。

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都市の空白のような静けさが漂うアンバリッドの中庭も、車が轟音をたてて走り去るマドレーヌ寺院やオペラ座に至る軸線も、すべて時代を隔てて、その時代ごとの政治的思想を反映させながらかたちづくられ、現代にまで都市風景として受け継がれてきました。そしてその焦点となる「オブジェ」は美学的なことだけでなく、富や権力の象徴として扱われてさえいるのです。今回の旅では、そんな街が全体として持つ光と影を、歩きながら体感してみたいと思っていました。夜、それらの「オブジェ」がライトアップされ、彫刻的な表情が薔薇のように華やかに、そして陰影ふかくもえるとき、この街を生み出してきた何ものかが、言葉にならないまま感ぜられるような気がしたのです。

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