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住宅のスタディ

2009-05-03 17:50:55 | 住宅の仕事

設計の案を練ることを、よく「スタディ」とか「エスキース」というふうによびます。決して計算から割り出すのではなく、敷地の様子や光・風、住まい手の生活をイメージしながら、ああでもないこうでもないと、迷い悩みながら案を探していきます。

僕の場合は、よく模型を作ります。スタディ・モデルとよぶもので、設計案を考えては、さっと作るのがコツ。自分がイメージしたものが良いものになるかどうか、模型にするとよくわかります。ですから、時間をかけて念入りにつくるよりも、ダメ案になるのを覚悟でどんどん作っては、やり直しをしていきます。

下の写真は、最近はじまったばかりの、ある住宅のスタディ・モデルです。

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秘めやかさ。

陰影豊かな内部。

木漏れ日のある静かな窓辺。

そんなイメージをたぐり寄せていきました。

同じコンセプトであっても、住まい手のライフスタイルや使い勝手、敷地の条件などにより、いろいろな案が考えられます。ひとつの計画に対しても、いくつもスタディ・モデルをつくらないと良い案には帰着しないというのが、僕の考えです。

同じようにスケッチ・ドローイングもよく描きます。これも案が完全にできあがってから描くのは遅いようで、案を練っているときに描いてこそ意味があるようです。090503_3

そんなふうにして、住まい手と打合せを重ねながら、行ったり来たりして最終的にできていくひとつの案。どんな風にまとまっていくのだろう。スタディはずっと続いていきます。

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なつかしい家

2008-12-20 15:38:00 | 住宅の仕事

先日、僕が故・村田靖夫さんの事務所ではじめて設計担当をした住まいにお伺いしました。終の棲家として設計されたその住宅は、村田さんが得意としたコートハウス(中庭)型のすまいとしてデザインされました。数多くのコートハウス型の住宅を設計してきた村田さんですが、住まい手や敷地にあわせて、すべての住まいが独自の形と雰囲気をもつことになります。

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お伺いしたこの住まいも、設計の打合せを重ねるなかで、いろいろな個性が散りばめられていきました。たとえば、既にお持ちだったアンティークの家具や、古びた金具のついた木の玄関ドア、洗練されたガラス照明器具などが、しっくりと空間におさまるようにデザイン検討を重ねていったのでした。

最初の担当作品というのは、ひたすらボスとスタッフの個性のぶつかり合いになります。僕なりの意見や提案を一生懸命にボスにするのですが、もちろんそれはボスの設計手法に必ずしも相容れるものではありません。数限りないダメ出しを受けながら設計は進み、最後にはやはり村田靖夫としての作風になっていきます。そうでありながら、担当するスタッフによって、少しずつ建物のもつニュアンスが変わっていくのも事実で、きっと村田さんはそのあたりを楽しんでいたのだろうと思います。

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道路からコンクリートのアーチ越しに見る中庭。中庭に面した、絶妙の寸法体系で築き上げられたリビング。そこには南に面した大きな開口部があるのですが、中庭の緑を通して入ってくる光はしっとりとした湿度を帯び、室内に紗のかかったようなやわらかな雰囲気をつくりだしてくれています。その光のなかに浮かび上がるアンティークの家具やドアや照明。村田さんが得意としてきたモダンな雰囲気の空間のなかに、どこかノスタルジーを誘う雰囲気ができていました。

この住宅は、特に雑誌などに発表されることもありませんでした。新しい建築のデザイン表現を示すものとしては、控えめだったかもしれません。でも、時代の流行とは関係なく、居心地が良く美しい場所としてあり続けるのだろうと予感できるような住まいでした。もちろんそれは、住まい手が大切に住んでいてくれているからに他なりませんね。そしてこの住宅は、僕の原点としての作品でもあるのです。

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コンペの受賞2~福岡のある暑い日のこと~

2008-07-27 16:56:44 | 住宅の仕事

コンペ受賞式で福岡へ行った話の第二弾。あついあつ~い日だった福岡の話。

福岡に来たのは、中学のときの修学旅行以来でした。もう20年近くも前のこと・・・なんでそんなに来なかったんだろう??そこでまずは修学旅行で訪れた太宰府天満宮にお参りに。集合写真のときのことはなんとなく覚えているけど、その他の風景はまるで覚えがありませんでした。旅館の夜の想い出は残ってるんですけどねぇ。

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でも、当時は訪れなかった天満宮の脇にある小寺に心が留まりました。光明禅寺という名で、苔庭が美しい寺でした。苔庭が有名な寺として、京都に西芳寺というお寺がありますが、西国にその写しのように美しい庭に出会えたことに感激しました。九州の寺や屋敷は、豪奢で力強いものが多いイメージがあったのですが、京都の意匠を積極的に取り入れ、楽しんでいたかのようです。

苔庭に浮かぶお茶室。雅で、自由です。そして緑を通して室内に入ってくる光は緑色を帯びます。姿カタチではなく、そこにある光によって、室内と庭とは融け合っていきます。

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コンペ授賞式会場は大川市産業会館でした。そこからほど近くに柳川市はあります。柳川といえば・・・そう!鰻ですよね~!!そこで向かったのが老舗の鰻屋さん。注文したのは名物「せいろむし」。いやー絶品です。川べりの緑の雰囲気に包まれた、自然光だけの空間。この店の雰囲気が、また食事を美味しく見せてくれます。

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柳川には文化遺産が点在しています。そのひとつ、旧戸島家住宅に訪れました。高い建物のない街並みのなかで、藁葺きの屋根が愛らしく頭をのぞかせています。江戸時代の住宅の遺構で、当時流行した「数寄屋風」とよばれる、形式を崩した自由な作風です。こんな暑い日に、ごろんと畳に寝っ転がりながら、(ちょっと寝そうになりながら・・・いや寝てた?)楽しく暑い日の午後を過ごす。そんな自由な雰囲気に溢れています。それでも素朴なだけではないのは、京都の洗練された数寄屋の造形意匠をどん欲に取り入れ、気候・風土に合わせながら独自の自由な意匠と空間をつくりあげているからでしょう。

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家の中を歩き回ると、内部と外部が楽しく交錯し、庭の風景と室内の風景が現れては消えていきます。ぴんと背筋を伸ばしたくなるような格式の高い表現がある一方で、愛嬌のあるデザインも散りばめられています。

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写真は、寝っ転がりながら撮った一枚。深い軒。通り抜ける風。吟味された柱の位置や意匠。西国の住宅文化の質の高さに浸りながら、もう少しつっこんで勉強したい気にもなりました。

柳川は運河が発達した街です。今でも屋形船に観光客を乗せて、船頭さんの歌声とともに風流な光景が広がっています。目抜き通りだけでなく、それは分流として日々の暮らしの裏側を通り、なんでもないような場所に、風雅な気分が広がっています。

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この「広がっている」ことは、現在ではとても貴重なことです。以前、京都・上賀茂の円通寺の住職に聞いた話で、「物事を点として遺すのはやりやすい。しかし、共生ということを考えるのなら、点ではなく、面として広がりをもって遺したいところなのですが、なかなかそうもいかないのが現在という時代です・・・」という言葉を思い出しました。柳川は運河が網の目のように広がっているおかげで、事物が途切れることなく関係しあっているような感覚を保持しています。日常の生活も、戸島家のような文化遺産も、昔から続く鰻屋も。その関係を意識的に大切にしているからこそ、どれひとつ犠牲にすることなく生き続けることができたのかもしれません。自分が住む街も、そんな「面的な関係」が築かれる街になっていきたいものですね。

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コンペの受賞

2008-07-13 17:01:29 | 住宅の仕事

コンペで優秀賞を受賞しました!

「九州温泉旅館客室コンペティション2008 in 大川」と称するコンペで、内容は、福岡県大川市の地場産業である木工家具の良さを活かしながら、九州にある温泉旅館内に、庭園と小川に面したロケーションに客室デザインを提案するもの。コンペのテーマが「究極のプライベート」を求めるものとあるだけに、楽しんで案を練ることができました。

コンペの紹介サイトはこちら。 http://www.okawa.or.jp/onsen2008/

残念ながら最優秀賞ではないので、実現することができませんが、今回のコンペを通して、日頃住宅デザインで考えていることの延長に、楽しく美しい旅館や客室のイメージを思い描くことができました。これが何よりもの収穫なのかもしれません。いずれ、ぜひ自分の手で旅館や客室のデザインも手がけてみたいものです。

さて、先週に大川市で表彰式があったので行ってきました。「2008大川夏の彩展」という家具の大展覧会の一環として表彰式が行われ、コンペ入賞案のパネル展示も行われました。

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2枚目の写真で、左にあるパネルが僕たちオノ・デザインの案です。僕たちの案はオノ・デザインのHPで紹介しています。 http://www15.ocn.ne.jp/~onode/tsuitate.html

表彰式はこんな感じ。ちょっと堅い??

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福岡ではあまり滞在時間はとれませんでしたが、外は真夏日ということもあり、1泊2日の「食の旅」に目的を切り替え(?)楽しんできました。その様子も含め、次回に続きを・・・。でも、ちょっとだけその片鱗をお見せしましょう。

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・・・かと言って、別に高級グルメ旅行ではございません(笑)

先鋒はラーメンで。「だるまや」さんという地元でも有名なラーメン店です。もちろんとんこつラーメン。店の姿を見つける前に、においで「あ、着いた!」とわかっちゃったぐらいの強烈な換気扇からの炊き込み臭。こってりに見えますが、なんとすごくあっさりしてるんですよ。細麺に、しょうがをのせて。あーウマか。

コメント (2)
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印西爽居の引き渡し

2008-05-19 16:55:26 | 住宅の仕事

昨日は大安。印西爽居の引き渡しでした。

家具類も次々に搬入され、あるべきモノがきちんと備わっていくと、生活の場として楽しい雰囲気に満たされていきます。

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家の中心に鎮座するのはケヤキのテーブル。山梨の家具職人に特別につくってもらったもので、昨日、山梨からはるばる千葉まで運んでもらったのでした。このテーブルにまつわる物語も含め、この住宅は、たんに生活空間として使いやすく心地よくする工夫だけでなく、あるストーリーが込められています。

そんなストーリーを交えながら、今後このブログでも印西爽居についてご紹介していきたいと思います。

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