集まるカタチ

2010-12-23 23:30:13 | 富士の二つの家

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「富士の二つの家」の工事が進んでいます。

棟上げから一週間、棟梁を頭にして数人の大工さんの手によって、一気に形になってきました。大きな壁面をもつ、片流れ屋根の群造形。そんなイメージを目の当たりにして、建築家C・ムーアが設計したシーランチ・コンドミニアムのことを連想しました。シーランチは崖地に建って海を臨んでいるけれど、こちらは富士山を臨んでいます!・・・と言っても決して張り合っているわけではありません(笑)

この日のメインの打ち合わせは、庭に面した木製窓や板壁の作り方について。風合い、質感、いろいろな意味で、僕は住宅設計のなかに、なるべく木製の建具を使いたいと思っています。師匠の村田さんから教わった木製建具の勘所を思い返しながら、図面を引き、現場に持ち込みます。ただ肝心なのは、実際に大工さんが造れるようになっているかどうか、ということ。

こんな風につくりたいんです、と、工事監督と棟梁の前に図面を広げ、説明をしました。しばらくの間、沈思黙考。これはちょっと緊張する時間です。でもそのうち、棟梁が静かに二度三度、ゆっくりとうなずいてくれました。この現場が、うまくいってくれることを何となく感じ取れる瞬間でもあります。ほっとしました。

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夕方になり薄暗くなってきて、照明を点けての作業。工事中なのに、明かりがともった家というのは、どこかほっと和みますね。

上棟の際には、お施主さんが、工事関係者の皆さんのために、家の模型写真がはいったオリジナル・クオカードをつくってプレゼントしてくださいました。施工担当・富士木材の川口さんのブログにもありましたが、僕もこれはもったいなくて使えません(笑)

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地鎮祭

2010-10-20 23:24:17 | 富士の二つの家

オノ・デザインで設計をしてきた「富士の二つの家」が、地鎮祭を迎えました。更地になった敷地に張られた地縄の位置を確認し、家の大きさや間合いをあらためて感じました。想像とズレはなかったけれど、いつもながら、設計の内容を反芻するちょっとした緊張感もあります。

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地鎮祭。

敷地に面する幹線道路の騒音。信号が変わるときにおとずれる一瞬の静寂。

風の音。

響く神主さんの声。

皆の視線が向かう方角は、富士。

山の神が降りてきて、守られるような、そんな心地になりました。無事に工事が進み、家が完成しますように。

富士の膝元にゆったりと広がる、野の家。二つの家は隣り合って並びながらも、中庭を囲むコートハウスのような佇まいになっています。中庭は雑木の庭になるようなイメージ。そこを縫うようにデッキで二つの家がつながれています。富士山につながっていく広がりのある光景とはいえ、幹線道路に面した敷地。そのなかに、親密な雰囲気の空間をつくりたいと思いました。

古くは地元新聞社の社屋があった由緒ある場所。そういった「時間の厚み」を受け継ぐよう、年月を経るごとに陰影を豊かにしていく光景を思い描いてきました。この敷地に面する交差点を行き交う人々の心に、「場所の記憶」としてしっかりのこっていくような。そんな住宅を、富士の地元の材料を使ってしっかりと造っていきたいと思います。

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時間をつなぐ窓

2010-05-17 19:55:54 | 富士の二つの家

打合せで富士市へ。これまで何度もこの街に来ましたが、いつも間が悪く、実際に綺麗に富士山を眺めることはできませんでした。
今日も靄に包まれ、いつも通り見えない・・・。そんな風に思いながら役所での所用を済ませ、ランチにはいったお店でのこと。

ちょっと不思議な光景に出会いました。少し離れた場所に、人のいない窓辺の席がありました。テーブルの上には、タテに細長い窓。そこに、富士山の白い頭が切り取られるようにして見えていたのでした。
靄が少しずつゆっくりと下降していって、徐々に富士山の雪がはっきりと見え始めます。でもその下は、靄がかかったまま。
窓の下の方には、大きな街路樹が切り取られるようにして見えていました。
遠くに白く浮かぶ、富士山。
手前に大きくふさがり、風に揺らぐ街路樹の緑。
細長い窓から見えるのは、そのふたつだけ。
ほの暗い店内。窓から、そっと光がテーブルに落ちていました。

遠い昔から変わらず鎮座し続けてきた富士と、僕よりはよっぽど長生きの大きな古い街路樹と、そしてそれを眺めている自分。細長い窓が、幾つもの異なる時間をそっとつなぎ合わせているような、そんな感覚になりました。

たまたま僕が座った席から偶然に見えた光景に過ぎないけれど、何か意味ありげな窓辺の雰囲気は、どこか思索的で、魅力的でした。

富士山を前に、大きく窓を開いて雄大な光景を楽しむのもいいけれど、小さな窓からのぞく世界も、きっと素適だろうな、ふと思いました。

そんなことを思いながら描いたスケッチです。

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