関志雄 ( かん しゆう ) 氏著『中国ビジネスと商社』( 平成15年刊 東洋経済新報社 )を、これから読もうとしています。
いつもなら読後に感想を述べていますが、今回は思うところがあり、読む前にブログにしています。
頑固な保守の意見を聞いておりますと、中国も韓国も北朝鮮も、明日にでも崩壊しそうな、危うい国と思えてきます。経済統計も嘘だらけで、政府の高官たちは私利私欲に走り、碌でもない政治が行われているという印象になります。
果たしてそういう希望的崩壊論だけでいいのかと、懐疑の念が生じてまいりました。ですから今年のモットーは、左翼でも保守でも、同じことですが、「過激な論調から距離を置く」と決めました。
反日・左翼の主張は、常に実行できそうもない過激な意見ばかりで、「原発の即時廃止」というのも、その一つです。政治的スローガンだから、こうしないとバカな国民を取り込めないのだと分かりますが、無計画な「即時廃止」などしたら、たちまち日本社会は大混乱になります。
「中国と即時断交せよ」
「企業は即刻、反日の中国から撤退すべし。」
「韓国と断交しても、日本には何の影響もない。」
「韓国など、見捨ててしまえ。」
威勢の良い意見にも、同様に懐疑の念が生じて参りました。先日邱永漢氏の著作を読んだ時にも感じましたが、同じ日本の中にいても、自分と違った世界観を持ち、違った世界を眺めている人間がいるという事実があります。
当然の話と疑問も抱かずにきましたが、これからの日本を考える時、頭から彼らを無視して、正しい判断ができるのかとそんな気がしてまいりました。
私の不得意な分野は、経済です。
邱永漢氏の著作で考えさせられたのは、「日本と中国の経済的つながりは、自分が思っている以上に強い。」ということでした。世界的分業体制とでもいうのでしょうか、善悪を別にして、日本と中国、あるいは韓国も同じことですが、経済的に協業的仕組みが出来上がっているのなら、過激な保守の意見にも疑問符がつきます。
この不愉快な隣国と、いかにしてつき合って行くべきかを冷静に考えなくては、日本の明日が見えないのでないかと、そんな気がしてきました。『中国ビジネスと商社』の本は、図書館の廃棄本を貰ってきたものですから、邱永漢氏とのつながりを考えて手にしたわけではありません。
しかし両書は偶然にも、日本と中国の経済的関係の深さを教えてくれています。
北京空港に降り立った田中首相を、出迎えた周恩来首相が固い握手を交わし、千切れんばかりにその手を振っていた姿を、私は動画で懐かしみました。改革開放政策を進めた鄧小平氏が日本に来て、「熱烈歓迎」の日中関係となり、雪崩を打つように日本の企業が進出したことなど、昨日のことのように思いだされます。
多くの資金とノウハウと、人材とを投資し、日中が蜜月の時期を持っていながら、どうして今日のような険悪な状況になったのか。分かっているようで、分からないことの多い両国関係です。
本書が出版されたのは、小泉内閣の時ですから、靖国参拝問題でもめていました。政治は冷たく冷えているが、経済関係は熱く燃えているという意味で、「政冷経熱」という言葉がマスコミで使われていたのも、この時期ではなかったかと思います。
本の著者は日本人と思っていましたが、香港生まれの中国人で、カン・シユウと読むそうです。JETRO ( 独立行政法人 日本貿易振興機構 ) と、JFTC ( 一般社団法人 日本貿易会 ) の区別も知らない私ですから、これでは日中問題を語れないと知らされました。
先ず前書きにある、「日本貿易会会長」の宮原賢次 ( 住友商事社長 ) 氏の言葉を紹介します。
・本書は、日本貿易会に設置された、「 中国ビジネスと商社」 特別研究会が、主査としてご参加いただいた関志雄氏の指導のもとで、10社の商社代表からなる、研究会委員が一年間にわたって、研究討議した内容をまとめたものです。
・中国ビジネスを日々広範囲に展開している、商社の視点に立った現実的な中国経済の手引書と言えます。
・本書が、今後の中国ビジネスのあり方を展望する一助となれば幸甚です。
10の商社名を紹介すると、下記のようになります。研究委員は各社とも部長クラスが名前を連ねています。
丸 紅 伊藤忠商事 住友商事 兼 松 トーメン
豊田通商 ニチメン 日商岩井 三井物産 三菱商事
関志雄 ( カン・シユウ ) 氏が、中国でどのような位置にいる人物なのか知りませんが、宮原会長の卑屈なまでにへりくだった紹介の仕方が、気になってなりません。
まるで中国政府の高官でもあるような物言いを読むと、何年か前、テレビで経済界の役員クラスの人物が、日中貿易の将来について語っていたのを思い出しました。
その時も窓口の中国政府高官に向かい、バカ丁寧な敬語で喋るので、軽蔑せずにおれなかった記憶があります。
彼らのやっていることは、一昨日読んだ『中国がクシャミをしたら』の著者、邱永漢氏と同じです。
「金儲けのためなら、どこへでも出かける。」
「儲けさせてくれるところが、自分の居場所であり、国である。」
台湾出身の邱氏なら聞き流せても、日本を代表する企業に勤務する彼らが同じでは、違和感を覚えます。
中国の巨大市場を前にしたら、金儲けに目が眩み、日本人の魂を失うのかと情けなくなります。かって民主党政権の時代に、中国大使に、伊藤忠商事の元会長だった丹羽氏が任命されたことがありました。
平成24年12月に、氏が日本記者クラブで行った講演の動画を見たことがあります。尖核問題がキッカケで反日の暴動が起こった時の大使が、どんな思いで任に当たっていたのか興味を抱いたからでした。
2年半の在任中に習近平、李克強など、中国の指導者たちと頻繁に会い、親しくさせてもらったと楽しそうに喋る彼を見て幻滅しました。
・国益とは、国民を幸せにすること
と氏は定義し、日中が仲良くすることが両国最大の利益であり、国民の幸せにつながると語りました。
・中国の指導者たちは全員がそう思っており、争いを避けようとしている。
と続けました。彼の話を聞いていると、争いたくない中国を刺激し怒らせているのは、日本の政治家や国民の方だと、そういう風になって来るのでした。
愛国無罪の暴動で日本を罵り、尖閣への領海侵犯を繰り返している最中の中国に、それはないだろうと怒りを覚えたものでした。
・日本は「同朋社会」であり「閉鎖社会」である
と氏は言い、
・これがかって米国での排日・反日へとつながり、今の中国でもそのように見られている
と、次第に話がエスカレートしました。
あの時は丹羽氏が特別なのだろうと思っていましたが、こうして関氏がまとめた商社員の『研究書』を手にしますと、日本を蔑視し中国大事とする愚か者が、経済人の多数を占めているのだと分かってきました。
確かに彼らのおかげで、国民は安い品物を入手し、便利になっているのかもしれませんが、このままで良いのかと、誰も疑問を抱かないのでしょうか。
ということで本日は、読書に入る前準備の知識を整理します。
1. 一般社団法人 日本貿易会( Japan Foreign Trade Council,Inc.、略称:JFTC )
・日本の貿易商社を中心に組織された業界団体。経済産業省所管
・会 員 法人正会員 43社 団体正会員 20団体 法人賛助会員 58社 団体賛助会員 25団体 計179
・会 長 小林栄三( 伊藤忠商事取締役会長 )
・副会長会社 下記7大商社により構成
三菱商事 三井物産 住友商事 伊藤忠商事 丸紅 豊田通商 双日
・活動内容 政策提言、政府当局との意見交換、日本国外との経済交流の促進、
調査研究・広報・情報収集活動。
2. 独立行政法人日本貿易振興機構 ( Japan External Trade Organization;
略称JETRO )
・経済産業省所管の中期目標管理法人・独立行政法人
・設置法は「独立行政法人日本貿易振興機構法」( 平成14年法律第172号 )
・職員数は日本国内約900名、日本国外約700名。
・日本の貿易の振興に関する事業、
開発途上国・地域に関する研究を幅広く実施。
2日前、邱永漢氏の活動に驚きましたが、あくまでそれは個人の動きであり、ささやかな経済活動でした。
しかし「日本貿易会」や「日本貿易振興機構」は、政府が関係する大規模な開発と投資活動です。中国に対しては、この他にも外務省が管轄する「政府開発援助」( ODA ) があります。
親中、媚中の政治家を中心として、巨大な中国開発ネットワークがこうして構築されています。表向きはマスコミが、中国の尖閣領海侵入を時々報道し、南京事件への日本攻撃など、申し訳程度に知らせますが、政治家も、経済人も、マスコミも、中国第一の姿勢でいるのですから、ふざけた話です。
国民だけが、ツンボ桟敷に置かれています。
ということで、今年のモットーは、左翼でも保守でも、「過激な論調から距離を置く」と決めました。
今年も前置きが冗長になりましたが、これが74才の元旦に考えた「一年の計」です。自分自身が苦笑していますので、笑いたい方は遠慮なくお笑いください。