渋谷は松濤に戸栗美術館という磁器専門の美術館がある。
磁器に興味がないのでここ何年か全く行っていないがふと訪れたくなった、そんな思いにさせてくれる展覧会だ。
出光美術館で開催中の「柿右衛門と鍋島」、「ぐるっとパス」で無料入場だが17-8Cの肥前磁器にスポットをあてたいい展覧会だ。
17C中ほどの中国景徳鎮窯の技術を導入した技術革新が柿右衛門と鍋島という世界に誇る肥前磁器を誕生させたという。
話は赤絵の創成に心砕いた初代柿右衛門からはじまる。
僕は知らなかったが1650年ごろには海外輸出に対応するため、有田地域の赤絵付け職人が一か所に集められ「赤絵町」なるものが存在したそうだ。プレ柿右衛門様式の誕生だ。
その中には野々村仁清の装飾スタイルに影響を受けた磁器や、上半分が柿右衛門様式、下半分が古来の古九谷様式という、いかにも過渡的な磁器が展示される。
そして17C半ば磁器は和様になる。
柿右衛門様式を特徴づけるのは余白の美だ。
西欧の王侯貴族はこれらに取りつかれた。
ドイツはマイセンで、イギリスはチェルシーで、フランスはシャンティで、柿右衛門をモデルにした磁器が生産された。
僕たちのよく知るところはザクセンはアウグスト強王であろう。
はるかかなたの日本を夢見たヨーロッパたちを思う。
一方、鍋島は徳川将軍家などへの献上品として存在した。
鍋島様式は17C半ば伊万里市大川内山に確立したスタイルを言い、その明快で刺激的な構図は寛文スタイルにも似るという。
そのほか赤と金の二彩を使用した新たなる時代の古伊万里や、柿右衛門の人形などいろいろ展示され見あきることはない。
重要文化財は鍋島三点、柿右衛門一点出ている。
では鍋島と柿右衛門の関係はというとカタログ巻末の論文に詳しいのでご参照ください。