よほど奥様を愛しておられるのだろう、この画家は1965に結婚して以来ずっと奥さまの良江夫人を描き続けている。
さらに1972にヨーロッパでアンティークドレスを見てそれが決定的となり、夫人にいろいろなドレスを着せては描くようになる。
洋画家、中山忠彦、その回顧展を日本橋高島屋に観る。
彼の信条はこうだ。
「衣装は心身を隠すものではなく表すもの」
「衣装は着る人の人格さえも選ぶ」
フランスにおけるオートクチュールの創始者ウォルトや、オリエンタル趣味のドレスを作るパキャンなどのアンティークドレスを惜しげもなく購入して夫人に着せて描くのだ。
今「購入して」と書いたが、この人のコレクションは尋常ではない。
夫人に着せて描いたドレスはいづれも自身のコレクションなのだ!
その数三百点余り、中にはサラ・ベルナールが着用したというドレスもある。
この画家は夫人と出会う前は裸婦を描いていた、そして今また裸婦を描く。
それは画家の言葉を借りれば「衣服の内なる肉体の存在を確かめ、礎の再認識が目的」という。
素描では皇太子妃雅子様のスケッチなんかもあった。
優雅な絵画に囲まれて幸せなひと時を過ごしたーとはいえ実は今日は画家のギャラリートークと図録サイン会があったようだが、医者に行かざるを得ずあまりのんびり絵画を観られなかったのが残念だ。